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賢者の起動③ 革新について

作成者: 中村 慎市郎|2024.06.11

大和鋼管の中村です。前回の安全ブログでは、「如何に“0災害の追求”を“真っ当、前向き”に進めていくか」という観点で、“精神的な健全さの向上”、つまり“メンタルフィットネス”の具体的な一例として、“探索”を以て「”賢者”を起動する」というアプローチについて説明させて貰いました。
参考ブログ: 賢者の起動② 探索について

今回は、共感・探索・革新・先導・発動の五つの方法のうちの三つ目として、“革新”を以て「“賢者”を起動する」というアプローチついて詳しく説明できればと思います。

先ず“革新”について大辞林でしらべてみると、記載されている内容は以下の通りでした。

かくしん 【革新】
(名)スル 〔「革」はあらためる意〕
古くからの習慣・制度・状態・考え方などを新しく変えようとすること。特に,政治の分野で社会体制・政治組織を新しく変えること。また,変えようとする勢力。 ↔保守。「技術―」「保守と―の衝突」

ここにある通り、何かを変える時に我々が陥り易い行動パターンは、今迄を否定し、“正しい”何かを新たに持ち込もうとする取組です。

しかし我々の思考は、基本的に新しい事には“ネガティブ”に反応する様にできており、今、足元で物事が上手く行っているなら尚更、現状を変えたくないと思うのがごく自然な反応です。

この反応は、人類の進化の歴史と深く関係しています。我々がホモサピエンスとして誕生したのは約40万年〜25万年前で、約7万前にアフリカに世界中に広がり始め、6万年前には全ての大陸に到達していた様ですが、農耕を始めたのは約1万2,000年前だと言われています。

つまり、我々は旅をしつづけて世界の果てまで到達した後も、5分の4の期間は狩猟をしており、農業を行って定住する様になったのは5分1の期間程度で、常にその日暮らしの、先の見えない計画性のない生活を送っていたと考えられています。

その様な環境を生き抜く為に、我々は常に次に何が起こるかには疑い深く、“ネガティブ”に考えリスクを回避する一方で、過酷な環境下で稀に得られた感覚や感動に対しては、とても深く“ポジティブ”に実感するという脳の構造を身に付けてきた訳です。このネガティブな発想を司るのが、以前にもご紹介したのPositive Intelligence社の言う所の“妨害者”で、ポジティブな発想を司るのが、“賢者”です。
参考リンク: Positive Intelligence

その長い人類の歴史を踏まえると、我々は基本的に“ネガティブ”な“妨害者”で、たまに“ポジティブ”な“賢者”になる状態が極めて普通であり、そもそも新しい事を受入れる事は不得意で、特に現状に大きな問題がなければ尚更なのです。

では、我々はどうすれば、“賢者を起動”して変われるのでしょうか? 現代の経営学の権威の一人で、“ビジョナリー・カンパニー”の著者であるコリンズも提唱している“ANDの精神”と呼ばれるアプローチを私は参考にしています。
参考リンク: 仕事と私生活のバランスは「OR」でなく「AND」の精神で取っていこう

やり方は極めてシンプルで、兎も角にも、先ずは現状を批判・否定するのではなく、現状や相手の意見をそのまま受け入れた上で、新しい何かを加えるというアプローチです。

例えば製造現場に於て“0災害の追求”に取組んでいる際に、意見の相違が発生したとします。一方の意見は、現場に“柵”を設けることで、仲間を危険から遠ざけるべきだとの立場です。もう一方は、“柵”の設置によって“作業性”が損なわれると仲間の焦りに繋がり、寧ろ不安全行動を助長するといった考え方で、双方が対立するケースです。

この様な場合に陥りがちなのは、“柵”と“作業性”は二者択一の“OR”で扱ってしまい発想や議論が止まってしまう状況です。そこで、“柵”と“作業性”を“AND”で両方とも実現する術を考える姿勢が“ANDの精神”です。

つまり、“如何に柵を設置して仲間の安全を確保しつつ、'作業性'を損なわない環境を作り出せるか?”という発想に至って議論を進め、今迄踏み込めていなかった解決策を見出す、これが“革新”による“賢者の起動”という訳です。

勿論、結果として到達する解決策は、この例の場合では“柵”の設置と“作業性”の確保をそれぞれに追求した場合とは異なる効果を生む事になります。しかし、結果として得たい結果/成果を念頭に置きながら、よりリスクを抑えてパフォーマンスを上げる“革新的”な効果を作りだせる筈です。

さはされど、実際に様々なプレッシャーがあり、多忙な製造現場での“0災害”の追求に於ては、“革新”による“賢者の起動”を“ANDの精神”で実現して行く事は、決して容易ではありません。

特に意見の相違が生じた相手が、自身より知識や経験が少なかったり、立場や職責が低かったりすると尚更、相手の意見や発想を受入れる事が難しくなります。

この様に、“ハートパフォーマンス”がなかなか動きづらい状況で効果を発揮するのが、Positive Intelligence社の提供するメソッドにでてくる、少なくとも“10%は正しい”のアプローチです。

我々は他者と議論や協議をする際には常に、“自分が正しい”か、“相手が間違っている”と、“妨害者”が自ずと起動され、出てくる意見を裁きたくなります。しかし、そんな時には“相手が正しい”OR“間違っている”ではなく、最低でも“相手は10%は正しい”かもしれないと考え、“ANDの精神”で相手の話を聞いてみてください。

すると、“相手の間違い”を探すのではなく、“相手の正しい”を探すのに注力することになるので、相手の話を傾聴しやすくなります。つまり“ANDの精神”を起点に、前回のブログで説明した「“探索”による“賢者の起動”」が自ずと可能になってくる訳です。

“0災害の追求”とは、“不完全”な我々一人ひとりが互いに協力しながら“0災害”という“完全”に挑み続ける取組なので、意識せずにいると“妨害者”が起動されて自分や仲間の粗探しが横行し、雰囲気がギスギスして悪くなりがちです。

そんな環境下でも自身と仲間とパートナーの有能さを引き出すべく、頭と心と体の健全さを維持・向上する為に、“10%は正しい”の発想で「“探索”による“賢者の起動”」を充実させ、“ANDの精神”に基づいた「“革新”による“賢者の起動”」のアプローチを実現できれば、より“真っ当、前向き”に“0災害の追求”を追求して行けると思います。

このブログでは、可能な限り私自身の経験と知見を皆さんに共有しながら、率直なご質問/ご提案/リクエストを頂き、一緒に“0災害の追求"の更新に挑み、行動していきたいと考えています。

今回の“安全ブログ"の内容や我々の“0災害の追求”の取り組みについて、ご質問/ご提案/リクエストがございましたら、下記のリンクよりご連絡ください。

最後までお読み頂き感謝申し上げます。これからも“0災害の追求”に関わる、“為になり、役に立つ”情報を皆さんに共有して参りたいと思いますので、引続き宜しくお願い致します。ありがとうございました。ご安全に。

大和鋼管工業株式会社
代表取締役社長
中村 慎市郎