"圧縮"が最後のワンピース?!"引張り"と"曲げ"だけではわからない単管パイプ強度と"許容圧縮力"について。

"単管パイプ"は、専用の金具が充実しており、専門性の高い"単管足場"からご家庭でDIYで製作する工作物まで様々な用途で活躍しています。

しかし、"単管パイプ"の"強度"について知識がない方にとっては、工作物が「安全に利用できる強度になってるの?」や、「人が乗っても大丈夫なの?」と不安に思われる方も多くいらっしゃると思います。

過去に本ブログでは、”単管パイプ”の"引張り"と"曲げ"については、設計の目安となる具体例をご紹介させていただきましたが、"圧縮"に関してはご紹介できていませんでした。

[JP]単管パイプ強度目安キービジュ 
そこで今回は、”単管パイプ”の”圧縮”の強度に関しての解説と、設計の目安となる具体例をご紹介させていただきます。今後の”単管パイプ”の活用の一助にしていただければ幸いです。

単管パイプの性能について

"単管パイプ"には、"ポストジンク"や"ドブメッキ"、"先メッキ"等の様々な種類の呼び名がありますが、これらの呼び名はメッキ製法によるもので、"強度"に関する性能は基本的に"700N級の軽量単管パイプ (スーパーライト700)"若しくは"STK500の単管パイプ"の2種類になります。

種類

規格等

寸法
外径(mm) x 厚み(mm)

標準重量(kg/m)

断面積A
(cm2)

断面二次半径i
(cm)

引張強さ
(N/mm2)

降伏点または耐力

(N/mm2

軽量単管パイプ

700N級

48.6 x 1.8

2.08

2.65

1.66

700以上  570以上

従来の単管パイプ

STK500

48.6 x 2.4

2.73

3.48

1.64

500以上  355以上

※"軽量単管パイプ"の許容応力度は、"スーパーライト700"の値を引用

"軽量単管パイプ"は高張力鋼を使用する事で、"STK500の単管パイプ"よりも"引張強さ"が高く、厚みを薄くする事で標準重量をおよそ25%軽量化した製品仕様となっています。

単管パイプの許容圧縮力とは?

"単管パイプ"で作った工作物が、"安全に利用できる強度になっている"ことを確かめる基本的な考え方としては、①"単管パイプ"に加わる”圧縮力”と②"単管パイプ"が耐えられる”圧縮力”、いわゆる”許容圧縮力”を計算し、①が②を超えない事を確認する必要があります。

また、下図の様に単管パイプの”許容圧縮力”を計算する為には、部材に”圧縮荷重”を加えた際に、ある荷重で急に大きなたわみを生ずる現象である"座屈 (ざくつ)"を考慮しなければなりません。

 

[JP][Blog]圧縮

長い単管パイプが圧縮される場合、破壊される形状は以下の赤く示した部分のようにしなり折れてしまうことが想像されると思います。この現象が"座屈"です。

[JP][Blog]座屈
そして”座屈強度”は、”単管パイプ”の幾何学的な形状により決まり、"オイラー座屈荷重の式" により求めることができます。"オイラー座屈荷重の式"については、以下のサイトで詳しい解説がありますので、参考にしてください。
リンク:建築学生が学ぶ構造力学_構造力学の基礎_座屈とは?座屈荷重の基礎知識と、座屈の種類

”許容圧縮力”の計算方法

実際に”許容圧縮力”を計算する計算式は、各基準によって異なります。

今回は、労働安全衛生規則第二百四十一条に記載されている計算式を参考に、”許容圧縮力”の計算方法をご紹介します。
参考:中央労働災害防止協会_労働安全衛生規則_第二百四十条

”許容圧縮力”の計算に出てくる記号の説明

P:単管パイプの許容圧縮力(Kg)

σc(シグマ):単管パイプの許容座屈応力(N/㎠)

λ(ラムダ):単管パイプの細長比 ( = 単管パイプの長さLk / 単管パイプの断面二次半径i )
※両端ピン支持 (座屈長さは単管パイプの長さに等しい)と想定。

Λ(大文字のラムダ):限界細長比

F: 単管パイプの当該鋼材の降状強さの値又は引張強さの値の四分の三の値のうちいずれか小さい値(N/㎠)

E: 鋼材のヤング係数 (2.05×105 N/㎟)

ν(ニュー):安全率

π(パイ):円周率

A:単管パイプの断面積(㎠ ) 

①限界細長比( Λ )の計算

Λ  = √{ ( π2 x E ) / ( 0.6 x F ) }

②細長比(λ)に応じた"許容座屈応力度"( σc )の計算

λ ≦ Λ (部材が太く短い場合)

σc = { 1 - 0.4 x ( λ / Λ )2 } x F / ν

λ > Λ (部材が細長い場合)

σc = 0.29 x F / ( λ / Λ )2

③安全率( ν )の計算

ν = 1.5 + 0.57 x ( λ / Λ )2

④許容圧縮力( P )の計算

最後に、”許容座屈応力度”に面積を乗じた後、単位を変換し"許容圧縮力" ( P )を計算します。

P = σc x A x単位換算(N→kg)

単管パイプ1本あたりの"許容圧縮力"の目安

上記の計算式から、単管パイプの長さ毎に計算した"許容圧縮力"は以下です。

長さ
(cm)

軽量単管パイプの許容圧縮力
(kg)

許容圧縮力の比較

単管パイプ許容圧縮力
(kg)

50

8,397

7,733
100 5,858 6,039
150 3,232 3,916
200 1,818 2,330
250 1,164 1,491
300 808 1,036
350 594 761
400 454 583

スーパーライト700が単管足場として使用できる理由

上記の計算結果を比較すると許容圧縮力の理論値は、長さが50cm〜100cmの間で”軽量単管パイプと従来の単管パイプの許容圧縮力が逆転していることが分かります。

これは、単管パイプの長さが長ければ長いほど材料強度の影響が小さくなり、断面積や断面二次モーメントなどの断面力による影響が大きくなるためです。

当社の軽量単管パイプ”スーパーライト700”は、6層3スパンの実大実験を実施し、実用的な座屈長さ0.7m〜5.0mの範囲では、従来の単管パイプの方が座屈強度が勝ります。

しかし”スーパーライト700”は、”単管パイプ”の高さ31m分の自重を考慮しても、”1スパン当りの最大積載荷重400kg以下で且つ同スパン内の同時積載層数2層以下”の条件を充分満たしており、”単管足場”として安心してご採用/ご活用いただける事が明らかになっております。

仮設工業会で行なった6層3スパンの実大実験とその考察をご紹介したブログもありますので、さらに詳しく知りたいという方がいらっしゃいましたら、以下のリンク先の内容を参考にして下さい。
リンク:大和鋼管ブログ_スーパーライト700の座屈強度は大丈夫?!単管足場として実大実験の結果と考察について。

まとめ

今回は、”単管パイプ”の”圧縮”の強度に関しての解説と、設計の目安となる具体例をご紹介させていただきました。

”単管パイプ”の"引張り"と"曲げ"に加えて”圧縮”の強度を理解することで、我々より包括的に”安全”を確保し、”安心”して工作物を設計したり活用することが可能になります。

私たちの"スーパーライト700"に関しては、"ヤング係数"や"剪断弾性係数”を含む鋼材の材料定数及び、引張/圧縮/曲げと剪断の値を含む鋼材の許容応力度などをまとめた資料もございますので、こちらもご参照ください。

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最後まで読んでいただき感謝申し上げます。引続き皆さまの"為になるお役立ち"に繋がる情報発信を続けて参りたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

執筆者紹介

田中 辰弥
田中 辰弥
大和鋼管工業(株)企画部企画 課長。理工学部で得た知見を応用し、メッキパイプの構造解析に情熱を注ぐエキスパート。NETIS登録申請やハウスの構造診断といった高度な技術分野を担いながら、西日本での豊富な営業経験を活かした現場/顧客視点で、信頼性の高い技術情報を発信。

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