2026.02.04

"GHGプロトコル Scope2"を大きく減らす方法とは?!鍵となる"排出係数"について詳しく解説。

近年、国際的な環境問題への関心の高まりにより、企業には"温室効果ガス(GHG)"の排出量削減に向けた具体的な取り組みが強く求められています。

特に、自社で使用する電気や熱に由来する"Scope2 (スコープツー)"の対象となる"温室効果ガス"の削減は、多くの企業にとって"脱炭素経営"への重要な第一歩となります。

本ブログでは、「"Scope2"について知りたい」という方に向けて、全体像を全3回にわたり解説しており、2回目となる今回は、"Scope2"算出の鍵を握る"排出係数 (排出原単位)"について深掘りします。

「"排出係数 (排出原単位)"ってナニ?」という基礎的な部分から、2種類ある算出ルールの違い、環境に優しいエネルギーを選ぶ為のアクション等、幅広く解説していますので、本記事が皆さまの"脱炭素化"に取り組む上での一助になれば幸いです。

なお、第1回の記事につきましては以下のリンクからご覧ください。
 【第1回】"GHGプロトコル Scope2"の基礎知識: 電力由来のCO₂の把握は、"温室効果ガスの排出量削減"の第一歩?!

"排出係数"とは?

[JP]二酸化炭素CO2

"Scope2"は、他社から供給される電気・熱・蒸気の使用に伴って間接的に排出される"温室効果ガス"で、前回のブログでも触れた通りその算出式は非常にシンプルで、以下の式で求められます。

"Scope2"排出量 =  "活動量" × "排出係数 (排出原単位)"

今回深掘りする"排出係数"は、"排出原単位"とも呼ばれますが、電気等のエネルギーを1単位(例:1kWh)使用するごとにCO₂を主とする"温室効果ガス"がどれだけ排出されるかを示す数値の事です。

電気なら"kg-CO₂/kWh"、熱なら"t-CO₂/GJ"等の単位で数値が示され、この数値が小さければ小さい程、同じ量の電気や熱を使っても環境への負荷が少ないことを意味します。

"排出係数"は、その電気や熱がどのように作られたかによって大きく変動します。企業は電気由来の"Scope2"が多いと考えられますので、電気で考えてみましょう。

石炭火力発電による電気は発電時の燃焼で多くのCO₂を排出する為、"排出係数"は高くなります。

一方で、太陽光や風力といった再生可能エネルギー由来の電気は発電過程でCO₂を排出しない為、"排出係数"は極めて低くなるか、ゼロとして扱われる場合もあります。

省エネが大切なのは勿論の事、"Scope2"を効率的かつ抜本的に削減するには、"排出係数"の低いエネルギーを選択する事が重要です。

"ロケーション基準"と"マーケット基準"とは?

電気由来の"Scope2"では、"ロケーション基準"および"マーケット基準"という2つの算定方法があります。企業による環境への影響を多角的に判断するには各基準で算出する事が望ましく、"GHGプロトコル"では両方の算出を求めています。

"ロケーション基準"と"マーケット基準"は適用する"排出係数"が異なり、用途も異なります。詳しく見てみましょう。

"ロケーション基準"とは

"ロケーション基準"は、特定の地域における平均的な"排出係数"を用いて、"Scope2"を算出する方法です。日本では環境省/経済産業省が共同で"全国平均係数"を公表しており、この公的な数値を用いて計算します。

 参考:温対法に基づく事業者別排出係数の算出及び公表について -電気事業者別排出係数-(令和7年5月26日)|経済産業省 資源エネルギー庁

"ロケーション基準"では、電気の使用量そのものを減らす省エネの努力が"Scope2"の数値に直接反映されます。その為、排出量の経年比較や、国内外の事業所間での比較を行うのに適しています。

"排出係数"は地域全体の平均値なので、やや大まかな計算にはなりますが、公的機関による客観的な係数を使用するので比較的算出の手間や複雑さが少なくなり、公平性と透明性が高くなります。

なお、環境に優しい電力プランを契約していても、"ロケーション基準"の数値には、その削減効果が反映されない点に注意が必要です。

"マーケット基準"とは

"マーケット基準"は、自社が契約している個別の電力プランに設定された"排出係数"を用いて、"Scope2"を算出する方法です。以下のページから、事業者別の最新の"排出係数"が確認できます。

 参考:算定方法・排出係数一覧(環境省)

繰り返しになりますが、再エネ由来の電力プランを契約すれば、"排出係数"は極めて低くなります。

つまり、企業の電気事業者選びや再エネ導入といった調達の努力が、直接"Scope2"の数値に反映される訳なので、再エネ活用を対外的にアピールするには、"マーケット基準"での計算が適しています。

"マーケット基準"における"排出係数"の調べ方は?

"マーケット基準"における"排出係数"の主な確認方法は、以下の2つです。

  • 省庁の公表データを確認する
  • 契約している会社の公式サイトや通知を確認する

前述した通り、環境省のページから業者別の最新の"排出係数"が閲覧できます。"排出係数"は毎年度更新される為、必ず自分が知りたい年度の数値を確認しましょう。

 参考:算定方法・排出係数一覧(環境省)

電気事業者等の公式サイトや通知に、その年度の"排出係数"が掲載されている場合がありますので、自社で契約している事業者の公式サイトを調べてみる事をオススメします。

"基礎排出係数"と"調整後排出係数"

上記の環境省・経済産業省が公表している事業者別排出係数の一覧表をご覧いただくと、"基礎排出係数"と"調整後排出係数"の2種類がある事がお分かりかと思います。

"基礎排出係数"は、"温室効果ガス算定排出量(基礎排出量)"を算出する為に使う係数です。

"調整後排出係数"は、事業で排出した排出量から、クレジットの購入等の削減努力分を差し引いた"調整後温室効果ガス排出量"を算出する為に使う係数です。(参考:温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル(Ver6.0) (令和7年3月)(環境省) )

"温室効果ガス算定排出量"や"調整後温室効果ガス排出量"と書くと少しややこしいですが、買い物で例えれば、"定価"と"クーポンを利用した最終的な支払い金額"に近いでしょう。

"排出係数"を下げて"Scope2"を削減するには?

[JP]再生可能エネルギー-1

多くの企業において、排出量の大きな割合を占めるエネルギーは電気なので、"Scope2"を削減する上で最も簡単かつ効果的なのは、再エネ由来の電力を活用することです。

中でも導入ハードルが低いのは、電気事業者が提供する"再エネプラン"等へ契約を切り替える方法で、特別な設備投資が不要で、事務手続きのみで排出係数をゼロ、あるいは極めて低い値にできるため、最も着手しやすい削減策といえます。

なお、"マーケット基準"での報告においては、"非化石証書"や"グリーン電力証書"の活用や、"コーポレートPPA(電力購入契約)"も選択肢に挙げられます。

証書の活用では、電気そのものではなく"CO₂を排出しない"という"環境価値"のみを証書の形で購入し、自社の使用電力に紐付けます。これにより、既存の電力契約はそのままで実質的に"排出係数"を引き下げます。

"コーポレートPPA(電力購入契約)"は、再エネ発電事業者と長期の電力購入契約を結ぶ方法で、再エネが証明された電気を直接調達でき、新たな再エネ設備導入の促進、すなわち"追加性"が高い手法として、近年注目されています。

大和鋼管工業の"電力"に関する考え方

ここで、"排出係数"に関連して、私たち大和鋼管の考え方をお伝えします。

鋼管メーカーの私たちは、製造プロセスにおいて多くの電力を消費していますので、"Scope2"の削減は、当社にとっては避けて通れない課題です。

従って当社は、まだまだ勉強中ですが環境への自社の責任を認識しつつ、製造現場を"安全/安心"に回す為の電力の安定供給、健全な経営を維持・継続する為の"経済合理性"を総合的に勘案し、契約する電気事業者の検討/選定を行っています。

今、各電気事業者からは企業の脱炭素経営を支援する様々なメニューが提供されていますので、単に料金だけで判断するのではなく、その電力を選ぶ事で自社の"排出係数"がどう変化するかという視点も必要な時代です。

事業で使用する電気や熱といったエネルギーを、単なるコストではなく"企業の社会的責任"の一部として捉え直すことが、これからのモノづくりには不可欠な要素だと我々は考えています。

まとめ

今回は、"Scope 2"解説シリーズの第2回目として、"排出係数"について深掘りしました。

"排出係数"という言葉は一見難しく聞こえるかもしれませんが、シンプルに言えば、より環境に優しいエネルギーを、自らの意志で買う/選ぶという事で、その一つひとつの選択が、企業が環境に取り組む姿勢を社会に示すメッセージとなります。

次回は、"Scope2"を構成するもう一つの要素である"エネルギー使用量"、いわゆる"活動量"に焦点を当て、私たちの具体的な取り組み事例も交えて深掘りしていきますので、ぜひご期待ください。

また当社の環境対策の取り組みやブログの内容についてご質問やご相談等がございましたら、以下のページからお気軽にお問い合わせください。

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最後まで読んでいただき感謝申し上げます。何かご質問や要望等があれば、何時でもご遠慮なくご連絡ください。引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。



執筆者紹介

三浦 佐和子
三浦 佐和子
多数のメディアで実績を持つプロのフリーライター。確かな構成力と徹底したファクトチェックに基づき、ブログ記事全般の執筆を担う。特に専門性の高い教育系コンテンツを、初心者にもスムーズに理解できるようわかりやすく再構築することで、読者のお役立ちに貢献。

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