例年では、5月末頃から梅雨入りを迎える地域が多いものの、年によっては記録的な早さで湿気の季節が訪れることもあります。そして、この高湿度の時期に猛威を振るうのが、鉄鋼業界にとって厄介な"白サビ"です。
そのような中で、「"白サビ"ってそもそも何なの?」、「"白サビ"が発生したらどうすれば良いの?」、「どうしたら"白サビ"は予防できるの?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、"白サビの発生メカニズム"から"具体的な原因と除去方法"、"防止に向けた管理とメンテナンス"まで、実用的な情報を網羅してお届けします。"白サビ"に悩む方に、参考にしていただければ幸いです。
"白サビ"とは何か? 〜発生の仕組みと性質〜
"白サビ"の定義
"白サビ"とは、主に水分と空気が要因となり亜鉛が酸化して発生した"亜鉛のサビ"のことです。この酸化した亜鉛は、専門用語では"塩基性炭酸亜鉛"と呼ばれ、これが私たちが目にする白いチョークの粉の様な"白サビ"になります。
発生メカニズム
"白サビ"は、空気と水分と亜鉛が反応することで発生します。
"白サビ"と"赤サビ"の発生メカニズムは似ていますが、異なる部分としては、"赤サビ"は"鉄"に発生するのに対し、"白サビ"は"亜鉛"に発生するという点です。
材料への影響
「"白サビ"も"赤サビ"のように、害のある"サビ"なんじゃないの?」と不安に思われる方もいらっしゃるかと思います。
結論から申しますと、"JIS規格 H8641"では下記内容の通り"亜鉛メッキ"の表面に発生する"白サビ"は、鉄自体が錆びて耐食性が落ちてしまう"赤サビ"とは異なり、耐食性にほぼ影響しない旨が記載されています。
日本産業規格JISH 8641-2007(要約)(溶融亜鉛めっき)
6.めっきの品質めっきの品質は、次による。
6.1外観 めっきの外観は、受渡当事者間の協定による用途に対して使用上 支障のある不めっきなどがあってはならない。また、めっき表面に現れる耐食性にはほとんど影響のない、濃淡のくすみ(やけなど) 及び湿気によるしみ(白さびなど)によって合否を判定してはならない。
(備考)めっきの主目的は、耐食性にあり、美観的要求事項を満足させることではない。また、装飾の目的で施されるものでもない。めっきは表面素材を滑らかにすると考えがちであるが、素材表面より良くならないのが普通である。
白さび
保管中に雨水の付着、結露などによって生じた塩基性炭酸亜鉛などの腐食生成物。
(参考)白さびによるめっき皮膜の消耗はわずかで、耐食性にはほとんど影響はない。
むしろ"白サビ"は鉄を腐食から守る為に作用し、"赤サビ"の発生を遅らせる効果があると一般に考えられています。
"白サビ"が発生する原因とは?
湿度・結露・塩分・酸性雨などの環境要因
雨や湿気が多い梅雨や台風の時期は、皆さま"亜鉛メッキ"製品への雨対策をされていると思いますが、実は雨や湿気以外にも、強酸性物質・強アルカリ性物質・有機酸・食塩等が亜鉛表面に付着することで"白サビ"が発生し易くなります。
例えば、冬場に使用される融雪剤には塩化ナトリウムや塩化カルシウム、塩化マグネシウムが含まれており、"亜鉛メッキ"製品が触れると"白サビ"が発生し易くなります。
また、海岸近くの地域で"亜鉛メッキ"製品が使用される場合も、雨や雪に塩分が含まれるため、"白サビ"が通常よりも発生し易くなってしまいます。
"白サビ"が発生し易い条件として、代表的なのが下記の例です。
- "亜鉛メッキ"当初の銀色の光沢がある、"溶融亜鉛メッキ"皮膜が活性な状態の時。
- 屋外での積み重ねや、シートを掛けての長期保管で水分が溜まり乾燥しにくい場所。
- 雨・結露・湿度が高い環境下での保管。
- 海岸地帯や融雪剤等の腐食物質が多い環境下。
"亜鉛メッキ"製品を保管する際は、上記の条件に対し適切な対策を行うことが肝心です。
"白サビ"を予防するための保管・管理方法
保管時の具体的なポイント
"白サビ"が防食の働きをするとはいえ、"亜鉛メッキ"皮膜の消耗自体は起こっているので、長期的に"白サビ"を放置しているといずれ鉄地に影響を及ぼす可能性があります。
メッキパイプの状態を保つために、定期的に製品の状態確認を行っていただくことをオススメします。
"白サビ"を予防するには、メッキパイプを水分に接触させないことが大切です。保管場所に応じて以下のポイントを押さえ、メッキパイプの保管環境を整えましょう。
①屋外保管のポイント
- メッキパイプの結束を解いて、パイプ間の水はけや風通しをよくする。(図1参照)
- 地面との隙間をあけ、水はけや風通しをよくする。(図1参照)
- 雨天時はメッキパイプに直接シートが接触しないよう完全にシートで覆い、雨に濡れないようにする。晴天になったら速やかにシートを外す。
図1. 屋外保管の例
②屋内保管のポイント
- 台木の片方を高くし、水はけをよくする。(図2左参照)
※パイプのバランスが崩れないよう安全面にご注意ください! - パイプの間にロープを入れ隙間をつくり、水はけや風通しをよくする。(図2右参照)
- 扇風機や空調機を使い、屋内の風通しをよくする。
図2. 屋内保管の例
管理方法のチェックリスト
皆さまの"亜鉛メッキ"製品保管環境が、"白サビ"が発生しにくいかどうかを確認できるよう、当社が実践している項目をチェックリストシートとしてまとめましたので、ご興味がある方は以下のフォームよりチェックリストをダウンロードの上ご活用ください。
"いいえ"にチェックが入る場合は"白サビ"が発生する可能性が高まりますので、管理方法を再度ご確認の上、お試しください。
また、どうしても上記内容に沿った管理方法を保つことが難しい場合には、以下のフォームよりご遠慮なく当社へお問い合わせください。
"白サビ"の落とし方と注意点
上記の様な予防対策をしっかり行っていても、天候の影響などで"白サビ"が発生する場合があります。
そのような際は、"白サビ"の進行具合に合わせて適切に対処する必要があります。
軽度 : 乾いた布・ブラッシング
- 表面の"白サビ"を濡れた布と乾いた布で拭き取った後に"亜鉛メッキ"製品を乾燥させ、保管環境を改善します。改善された環境で保管することで、徐々に"白サビ"の発生部下層にも緻密で安定した"保護皮膜"が形成されるので、外見上は通常部との差が目立たなくなります。
- 結束している"亜鉛メッキ"製品に"白サビ"が発生した場合は、結束を解き風通しを良くします。そうすることで水分や湿気が減り、更なる"白サビ"の進行を一定レベルで抑えることができます。
重度 : 中性洗剤・クレンザーの使用
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ワイヤーブラシ/サンドペーパー/スチールウール等で軽く擦った後、"ジンクリッチペイント"で補修塗装をします。補修塗装を行うことで見た目を改善すると共に、研磨で失った防錆性能を補完し一定レベルで"亜鉛メッキ"製品の寿命を延ばすことができます。
- サビの再発リスクが高まるのを防ぐために、ワイヤーブラシ/サンドペーパー/スチールウール等で表面を擦る際は、メッキを削りすぎないように注意しましょう。
まとめ
- 「"白サビ"=害ではないが、"放置"=リスク」という理解が必要。
- "適切な管理"こそが、コスト削減と品質維持の鍵。
今回は、"白サビの発生メカニズム"から"具体的な原因と除去方法"、"防止に向けた管理とメンテナンス"まで、実用的な情報を整理・網羅してお届けしました。"白サビ"に悩む方に、参考にしていただければ幸いです。
"白サビ"に関することや当社製品に関することで疑問がある方は、以下のフォームよりお気軽にご連絡ください。
最後までお読みいただき心より感謝申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
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