2021.06.23

メッキ鋼管の溶接をしたいんだけど・・・。その難しさと作業上の注意点について。

近年、自動車産業等では軽量化の為にハイテン鋼材を使用し、従来よりも板厚を薄くする取組みが行われています。そして、ハイテン化と同時にメッキ鋼材を使用し鋼材の耐食性を高める事で薄肉のデメリットを回避する事も注目されています。

鋼材を加工して製品を作っているお客様にとって、メッキ鋼材を採用する場合に懸念される事は"溶接"ではないでしょうか?

一般的には、メッキ鋼材の溶接は様々な問題がある為、推奨されていません。

しかし、製作過程に於けるコスト面と納期面を考慮した場合や、既にある構造物の補修の際等にどうしてもメッキ鋼管等のメッキ鋼材を溶接しなければならない状況もあるかと思います。

今回は、そういった場合にメッキ鋼管等のメッキ鋼材を溶接する際の注意点や対応方法についてご紹介します。

なぜ、メッキ鋼材は溶接が難しいのか?

亜鉛メッキ上に溶接を行う場合に大きな問題となるのは、①気孔欠陥 (ブローホール・ピット)/②スパッタの発生/③酸化亜鉛ヒュームの発生の3点です。

①気孔欠陥 (ブローホール・ピット)
気孔欠陥 (ブローホール・ピット)とは、水素や窒素等のガスやヒュームの発生によって溶接金属の表面や内部に小さな孔や空洞ができる現象です。気孔欠陥は溶接強度が低下する等の問題があります。

②スパッタの発生
素地である鉄の融点は約1,500℃であるのに対し、メッキの亜鉛は約900℃で沸点に達します。お湯を沸かした時のように気体となった亜鉛が融解した鉄を通過して外部へ拡散しようとする為、スパッタが多く発生します。スパッタは作業者に危険を及ぼす他、大きなスパッタは製品に飛び散るとそこで凝固してしまい品質に影響します。

③酸化亜鉛ヒュームの発生
前述した通り、溶接作業を行う際にメッキの亜鉛は沸点に達しますので、亜鉛は気体となります。亜鉛の気体が空気中の酸素と結び付く事と温度が低下する事で、ヒュームと呼ばれる微細な酸化亜鉛の固体粒子となり空気中に浮遊する現象が発生します。酸化亜鉛は人体に有害であり亜鉛中毒を引き起こす原因にもなります。

またこれらの問題は、亜鉛メッキの付着量が大きい程発生するリスクが大きくなります。

メッキ鋼材を溶接する時のポイント

実際にメッキ鋼管等のメッキ鋼材を溶接する場合は、当然前述した気孔欠陥やスパッタの発生、酸化亜鉛ヒュームの発生を抑えなければなりません。また、溶接した箇所は亜鉛メッキがなくなり錆びやすくなっている状況です。

これらに対する具体的な対処方法を幾つかご紹介いたします。

  • 溶接を施す箇所の亜鉛メッキをグラインダ等で除去する
    表面の亜鉛メッキを適正に削りとる事で、溶接時の加熱部分に亜鉛がなくなる為、鉄地同士の溶接を行う場合と同等の品質を得る事ができます。亜鉛メッキが適正に削り取れているかは、グラインダを使用した際の火花で確認する事ができます。

  • 亜鉛メッキ用の溶接材料を使用する
    気孔欠陥やスパッタの発生が抑えられる亜鉛メッキ用の溶接材料が販売されています。
    (※使用する際は、酸化亜鉛ヒュームの対策として、局所排気や全体排気の実施、呼吸用保護具の着用などで安全・衛生面にご注意ください。)

  • 溶接した箇所をジンクリッチペイントで補修
    ジンクリッチペイントは鉄地との密着性が良く、ハケ塗りやスプレーで作業できる等、作業性や施工性にも優れます。補修を行う際は、溶接部だけでなく溶接の熱の影響を受けた部分も錆びやすくなっているので、同時に補修を行うことがポイントです。

私たちのメッキ鋼管は少ない亜鉛付着量で高い耐食性を実現

これまでにご紹介した対処方法と併せて、溶接するメッキ鋼材の亜鉛付着量を選定する事も重要です。

基本的には、気孔欠陥やスパッタの発生、酸化亜鉛ヒュームの発生のリスクは溶接するメッキ鋼材の亜鉛付着量が多ければ多い程高まる為、より亜鉛付着量が少ないメッキ鋼材の方が溶接作業をし易いと考えます。

私たちのメッキ鋼管である"ポストジンク"や"パーフェクトポストジンク"はメッキ層のうち耐食性を損なう合金層の厚みを大幅に縮小し、耐食性に有効な純亜鉛層を充分に確保している為、少ない亜鉛付着量で高い耐食性を実現しています。

その為、"ポストジンク"や"パーフェクトポストジンク"は、ドブメッキと比較して同等以上の耐食性で溶接作業時のリスクを抑える事が可能な為、溶接し易いメッキ鋼管であると言えます。

[JP][Blog]メッキ層

私たちのパーフェクトポストジンクが”メッキ層中の合金層が薄い為、後メッキ鋼管よりも亜鉛付着量が少なくても、同等の耐食性を有する”という結果については、一般財団法人土木技術研究センターの建設技術審査証明でも紹介されていますので、詳しくは以下のURLよりブログをご確認ください。

 ブログなるほど!!!合金層が分ける亜鉛メッキの防錆性能と特性。

まとめ

今回は、メッキ鋼管等のメッキ鋼材の溶接を推奨しない背景と溶接する際の注意点及び対応方法についてご紹介いたしました。

前述の通りメッキ鋼材の溶接に関しては、溶接の品質や作業者の安全面等の様々な対策が必要な為、実務経験のある方と一緒に十分に注意した上で作業していただく様にお願いいたします。

また私たちのポストジンクパーフェクトポストジンクはこの難しいメッキ鋼管の溶接の難易度/負担を多少なりとも軽減できる特性を有しています。

実際に当社の製品で溶接のテストをしてみたいという方がいらっしゃいましたら、製品サンプルを提供する事も可能ですので、下記お問合せフォームよりお気軽にご相談ください。

以上、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

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