私たちの主力製品である軽量単管パイプ”スーパーライト700”や主に農業分野で活躍する”STX”は、700N級以上の引張り強度を持つ”ハイテン鋼板”を材料として使用した”ハイテンパイプ”です。
”ハイテン鋼板”は一般的には”ハイテン材”と呼ばれ、自動車業界を中心に広く採用されており、その背景には軽量化による燃費の向上の観点から経済性に加えて、昨今は地球環境保全の観点で環境性や優れる材料として注目を集めています。
そこで今回はその”ハイテン材”の特徴とメリットや課題について確認した上で”スーパーライト700”や”STX”の”ハイテンパイプ”としての優位性を紹介すると共に、更に私たちが挑戦している”乾式接合”の開発についてご提案させていただきます。
ハイテン材の特徴
”ハイテン材”とは”ハイテン鋼”や”高張力鋼”を元に造られる”ハイテン鋼板”等を含む鋼材の総称です。引張り強度が400Mpa(N/㎟)級で”400材”とも呼ばれる一般構造用鋼材に比べて、おおよそ490MPa(N/㎟)級以上の引張り強度をもつ鋼材はすべて”ハイテン材”に相当します。
”ハイテン材”の特徴は端的にいうと"軽くて強い"事です。
私たちの”スーパーライト700”や”STX”等のハイテン材の"軽くて強い"という特徴を、数値が大きい程”軽くて強い”ことを定量的に表す比強度という単位を用いて、SUS 304というステンレス鋼やアルミのバタ角にも使用される汎用性のあるアルミニウム合金であるA6063-T5などと比較したのが以下の表です。
比強度[kN·m/kg] = 引張強さ[N/㎟] ➗ 密度[kg/㎥]
物質名 |
引張強さ |
密度 [g/㎤] |
比強度 [kN·m/kg] |
ハイテン材 (スーパーライト700/STX) |
700 | 7.85 | 89.2 |
ハイテン材 (STX780) |
780 | 7.85 |
99.4 |
一般構造用鋼材 | 400 | 7.85 |
51.0 |
ステンレス鋼 (SUS 304) |
505 | 8.00 |
63.1 |
アルミニウム合金 (A6063-T5) |
185 | 2.69 | 68.8 |
一般的にアルミニウム合金が”軽くて強い”事が世間では広く知られている印象ですが、実際には”ハイテン材”の方が比強度が高く"軽くて強い"事がこの表から確認できます。
ハイテン材で得られる効果とは?
”ハイテン材”の特徴は前述したように"軽くて強い"事ですので、設計する構造物や自動車等の機械類に必要な強度をより少ない鋼材量で再現する事ができます。つまり使用する鋼材の量を抑える事で、環境面では製造工程の省資源に繋がり、価格面でもトータルコスト削減に繋がるといったメリットを生みだす事が可能になる訳です。
私たちの”スーパーライト700”や”STX”を例にこれら効果を具体的に紹介した内容が以下の通りです。
環境面の効果
(スーパーライト700の場合)
環境面の効果
(STXの場合)
価格面の効果
(STXを農業用ビニールハウスに使用した場合)
ハイテン材の課題とは?
ここまで”ハイテン材”のメリットについて説明してきましたが、良いことばかりなので、「なぜ世の中の鋼材は全て”ハイテン材”に置き変わらないの?」と疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
実は世の中の鋼材が直ぐに”ハイテン材”に置き換わるのは現状では難しいと言われており、その理由の代表的な例が以下にあげる”ハイテン材”の"加工性"という課題です。
プレス加工等の塑性変形が難しい
”ハイテン材”は引張強度が高いと同時に降伏点も高いため、加工の際により大きな力が必要になります。また、一般的に鋼材は引張り強度が高くなればなる程伸びが低下するので、割れ等の不具合が発生し易く、塑性変形させにくいと言ったデメリットがあります。
溶接やメッキ等の熱を加える加工が難しい
”ハイテン材”を使用して厚みを薄肉にし軽量化した構造の場合、単位面積あたりの強度が大きい"ハイテン材"は、侵蝕されて厚みが減肉すると一般鋼材を使用した構造よりも強度低下が大きくなる為、溶融亜鉛メッキ等の耐食性を高める加工が必要とされています。
しかし、”ハイテン材”は化学成分調整や熱処理等の方法で一般構造用鋼材よりも高い強度を実現していますので、特定の成分が加工性を低下させたり、熱が加わることにより熱影響部の品質が低下するといった不具合が発生する為、溶融亜鉛メッキ等の熱を加える加工が難しいという課題があります。
スーパーライト700やSTXがハイテンパイプとして優れる理由
私たちの”スーパーライト700”や”STX”は、”ダイワZプロセス”という当社独自のユニークなメッキ工程によって亜鉛メッキを施すため、ドブ漬けめっきでのメッキ浴への浸漬時間に比してメッキに要する時間が大幅に短くなり熱影響が少くなると共に、”ハイテン材”を使用し製造されるパイプに均一に亜鉛メッキを施すことを可能にしています。
つまり”スーパーライト700”や”STX”は、”ハイテン材”に短い時間で亜鉛メッキを施し耐食性の確保もできる為、薄肉による軽量化を行った場合に懸念される"減肉厚による強度低下"への対策も十分になされている訳です。
更に”スーパーライト700”や”STX”は他社の700N級のメッキパイプと比べて伸びが高く、プレス加工や曲げ加工等の塑性変形させ易いと言った特徴もあります。他社の”ハイテンパイプ”と伸びを比較した内容については過去のブログでも詳しく紹介していますので、宜しければご参考にして頂ければ幸いです。
参考:大和鋼管工業_ブログ_STXは加工性に優れる?!鋼材の伸びと降伏点について。
私たちが挑戦する"乾式接合の開発"とは?
メッキパイプである”スーパーライト700”や”STX”を建築物や機械類等の構造に使用する場合に、そのポテンシャルを最大限に活用する方法は溶接という湿式の接合ではなく、ボルト等を締める事によって乾式で接合する"乾式接合"を行う事だと私たちは考えています。
ハイテン材は前述した通り、耐食性を高める事で薄肉のデメリットを回避する事が重要ですが、一般的には我々がメッキ鋼管で実現している様な溶融亜鉛メッキ加工が他の部材では難しいのが現実です。
また以前のブログでご紹介したとおりメッキパイプを溶接する事はとても難しく、ブローホール・ピット等の気孔欠陥 や、スパッタ及び酸化亜鉛ヒュームの発生等の課題があり、溶接自体の品質や作業者の安全面等で様々な対策が必要になります。
参考:大和鋼管工業_ブログ_メッキ鋼管の溶接をしたいんだけど・・・。その難しさと作業上の注意点について。
そこで我々が注目するのが"乾式接合"です。溶接を行う湿式ではなく、ボルト締め等の乾式で十分な接合強度を確保できれば、特に熱を加える加工に不向きなハイテン材をより多くの建築物や機械類等の構造に採用し易くなると私たちは考えている訳です。
更に"乾式接合"はハイテン材が採用し易くなるだけでなく、以下の図のように溶接工の人手不足の問題や、溶融亜鉛メッキの工程省略から横持ちの工程がなくなりコスト削減や二酸化炭素削減等の地球環境負荷の軽減に繋がる効果も見込めます。
溶接接合と乾式接合(ボルト接合)に於ける工程の比較
私たちはこれまでに"簡単な組み立て方法によりほとんど偏芯しない平面トラス構造"の特許を取得したり、溶接の代わりに接着剤を使用するテストを実施等の”乾式接合”の開発を行なってきました。
平面トラス構造の概要図
お客様の中で「自社の製品に対してオリジナリティを出したい!!」や「もっと強固な金具を開発したい!!」と言ったご要望がありましたら、私たちも一緒にチャレンジしたいと考えていますので、お気軽にご相談頂ければ幸いです。
まとめ
今回は一般的に”ハイテン材”と呼ばれている鋼材の特徴とそのメリットや課題について説明した上で、”スーパーライト700”や”STX”の”ハイテンパイプ”としての優位性、そして私たちが今挑戦している"乾式接合の開発"についてご紹介しました。
新型コロナウィルスの影響やカーボンニュートラル等の地球環境保全の取組が世界的に広がりを見せる中で、今正にコスト削減と環境性能の両面で”ハイテン材”の更なる活用が求められています。そこで”スーパーライト700”や”STX”の”ハイテンパイプ”としての強味を活かす”乾式接合”を実現すれば、我々は更にお客さまへの為になるお役立ちを広げていけると考えています。
私たちの”乾式接合”の開発への取組について詳しく知りたいという方や、自社の製品へスーパーライト700やSTXと”乾式接合”を活用したいと考えている方がいらっしゃいましたら、以下のお問合せフォームよりお気軽にご相談ください。以上、宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。
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