2023.08.09

”STX”と”STK”の違いや如何に?!具体例で数値を使ってその性能と効果を確認。

当社が製造・販売している”STX (エスティーエックス)は、一般構造用鋼管として広く普及している同じサイズの"STK400"と比較しておよそ2倍の強度を持つ高抗張力鋼管です。

パイプ画像-STX

 

 

”STX”を採用する事で、構造物の強度向上やコスト削減及び環境性能の改善等が期待できます。

しかし、”STX”を採用するにあたり「肉厚が薄くなっても本当に大丈夫なの?」や「見た目で強さが分からないので強度を実感しにくい」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで今回は、”STX”の従来材からの置換えについて"農業用ビニールハウス/パイプハウス"と"道路資材"の2つの例に対して、具体的な数値を使ったご提案をご紹介致します。

STXとは

”STX”は、日本製鉄株式会社と大和鋼管が共同開発をした、従来製品に対しより”しなやか”で”強靭”な特徴を持つ高張力鋼管製品の総称です。

鋼管の機械的性質である引張強さ/降伏点や耐力及び設計基準強度は、それぞれ従来材"STK400"に比べ700N/㎟以上で約2倍以上のレベルに達しています。

種類

機械的性質

設計基準強度
(短期許容応力度)
[N/㎟]

引張強さ
[N/㎟]

降伏点
又は
耐力
[N/㎟]

伸び
[%]

G3444
STK400

一般構造用炭素鋼鋼管

400 235 23以上 235

STX(700N)

ハイテン鋼管
厚み2.0mm以上

700

570 10以上 490

STX(780N)

ハイテン鋼管
厚み1.2mm、1.6mm

780 - - 546

・STX (700N)の基準強度(短期許容応力):490N/㎟(国土交通大臣認定 No.MSTL-0197)
・STX (780N)の基準強度(短期許容応力):546N/㎟(引張り強度780N/㎟ x 70% = 546N/㎟)

”しなやか”とは”柔軟性に優れている”事を、”強靭”は強度と柔軟性が産み出す”復元力がある”事を指しており、これらの特性を活かし”農業用ビニールハウス/パイプハウス”のアーチ材や道路資材、各種構造物等に多く使われています。

農業用ビニールハウス(パイプハウス)の例

”農業用ビニールハウス/パイプハウス”の分野では、既に”STX”の実績が多数あります。アーチ材に”STX”を採用しピッチの調整を行う事で、”農業用ビニールハウス/パイプハウス”の強度向上/コスト削減が効果的に実現できます。

STK400 外径φ31.8mm x 厚さ1.6mmと同じサイズのSTX (外径φ31.8mm x 厚さ1.6mm)の"基準強度"および"最大曲げモーメント"を比べると以下の表になり、引張りや曲げに於いて2倍以上強くなる事が分かります。

 

規格

外径
[mm]

厚さ
[mm]

単位重量
[kg/m]

基準強度
[N/㎟]

最大曲げモーメント
[KN・cm]

STK400

31.8

1.6

1.19

235

25.6

STX(780N)

31.8

1.6

1.19

546

59.6

 

過去に徳島大学と共同で行なった研究では、ハイテン鋼管を用いた間口が6mもしくは7.2m/奥行が10m/アーチピッチが0.5m/軒高(肩高)が1.65m/天高が3mの、下図の様な”農業用ビニールハウス/パイプハウス”を対象に、FAP-3という汎用立体フレーム弾性応力解析ソフトを用いて、様々な風荷重ならびに積雪荷重に対する”農業用ビニールハウス/パイプハウス”全体の応力度分布/変位等を解析し、各使用鋼種に対する許容荷重を明らかにしました。

 
[JP][Blog]徳島大学共同研究概略図
ここでは、徳島大学との共同研究結果を用いて、金具や基礎をしっかりして動かないものと仮定し、”農業用ビニールハウス/パイプハウス”のアーチパイプが破壊される強度を私たち独自でシミュレーションを行い、従来品(STK400)を使用した場合と"STX"を使用してアーチピッチを50cmから75cmに拡げた場合を比較した結果をご紹介します。
 
規格

パイプサイズ

ハウス
間口

アーチ
ピッチ

ハウスアーチ
強度

ハウスアーチ
コスト

風速[m/s]

積雪
[cm]

パイプ
単価比

アーチパイプ
コスト比

STK400

Φ31.8mm x 1.6mm

7.2 m

50cm

44

26

1

1

STX(780N)

Φ31.8mm x 1.6mm

7.2 m

75cm

55

42

1.3

0.9

 
先ず強度について比較すると、"STX"は従来品のSTK400を使用した場合と比べて、対風荷重と対雪荷重の面で優れているため、およそ25%耐候性が向上することが期待できます。
 
続いてコスト面を比較すると、付加価値の高い"STX"が従来品の1.3倍の単価であると仮定した場合でも、アーチパイプのピッチを拡げることにより使用する本数が減るため、アーチパイプのコストはおよそ10%低減することが見込まれます。
 
このように私たちのSTXを採用してアーチピッチ/パイプサイズを調整する事で、従来の"農業用ビニールハウス/パイプハウス"と比較してより"低コスト"で"強靭な"設計が可能になります。

道路資材の例

"STX"を採用する事は、カーブミラーや道路標識の柱などの道路資材を取り扱われている業者様にとっては軽量化や強度アップ、コストダウンだけでなく、地球環境に優しい取り組みに繋がるご提案が可能です。

"STX"は通常材に比べて約2倍の引張強度を持っていますので通常材に替えて”STX”を使用する事で同等以上の強度を保ちながら、パイプサイズを小さくする事ができます。

以下のSTK400 外径φ89.1mm x 厚さ4.2mmとSTX 外径φ76.3mm x 厚さ2.8mmの"単位重量"と"最大曲げモーメント"および1mあたりのパイプ外面の"表面積"を比べてみました。

規格

外径
[mm]

厚さ
[mm]

単位重量[kg/m]

表面積
[㎠]

基準強度
[N/㎟]

最大曲げモーメント
[KN・cm]

STK400

89.1

4.2

8.79

28.0

235

534

STX

76.3

2.8

5.08

24.0

490

562

先ずこの事例に於いては、重量に関しては"STX"を使用すると1mあたり3.71kg/42%軽くなります。また最大曲げモーメントに関しても"STX"を使用すると28KN・cm/5.24%強度がアップします。さらに表面積は"STX"を使用すると1mあたり4.0㎠/14.3%小さくなりますので、塗装を行う場合には塗装面積を減らす事ができます。

B.表面積20230807

塗装面積を減らすことは塗装にかかるコストを抑えるだけでなく、使用される塗料の量が減るため、塗料から揮発されるVOCも削減する事ができます。

その他サイズでSTXに置き換えると強度/重量/表面積がどの程度改善されるかまとめた表を作成しましたので、ご興味ある方は是非ダウンロードしてください。
 
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まとめ

今回は、”STX”の従来材からの置換えについて"農業用ビニールハウス/パイプハウス"と"道路資材"の2つの例に対して、具体的なに数値を使ってその活用効果をご紹介しました。

現在”STX”は”農業用ビニールハウス/パイプハウス”や道路資材の他にも様々な分野で活躍していますが、更に皆さまのニーズを踏まえて、その活用範囲はドンドン広がっていくと我々は考えています。

上記のダウンロード資料に記載されていないケースや詳しく内容を相談したい等のお悩みがありましたら、以下のご相談フォームより気軽にお問い合わせください。

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最後までお読みいただき感謝申し上げます。当社では引き続き、皆さまの"為になるお役立ち"に繋がる情報発信を続けて参りますので、今後とも宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。

 


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