2024.08.21

”ポストジンク”でオーバースペックを解消?!船内手すりを事例に行なったメリットの考察について。

メッキパイプは、建築や機械等の構造に使用する場合や、水や気体などを中に流す場合等、使用する用途や目的に合わせて必要十分な機能や性能と同時に可能な限りコストを抑えるべく、最適なスペックを見極める事が理想です。

しかし、メッキパイプにも”STK (一般構造用炭素鋼鋼管)”や”STKM (機械構造用炭素鋼鋼管)”、”SGP (配管用構造鋼管)”等の様々な規格・品種があり、性能や加工性やロット等の製品の特性を見極めることがあまり容易では無い為、つい身近にあるオーバースペックの製品を使用してしまいがちです。

一般的に”SGP”は、”STK”と比較すると外径毎に肉厚や長さが殆ど決まっているため、大量に製造されています。そのため、定尺であれば安価で必要な外径のメッキパイプを気軽に入手し易いといった特徴があります。

しかし、メッキが施された”SGP”である白ガス管は基本的にドブメッキの仕上げになっており、溶接加工を行う場合には亜鉛のヒュームやスパッタが多くでたり、曲げ加工でメッキが割れる等の不具合が発生する可能性もあります。

今回は"船内手すり"という事例を用いて、構造用に白ガス管を用いた場合と私たちの”ポストジンク”を用いた場合を比較した考察をご紹介致します。

ポストジンクとは?

”ポストジンク”は、外面は全周均一メッキおよび防錆樹脂コーティング、内面は当社独自の水性亜鉛無機コーティングを施した構造用の溶融亜鉛メッキ鋼管です。

”PZ”は、”STK”や”STKM”、当社オリジナルのハイテン鋼管”STX”等、様々な品種に対応する事が可能です。

[JP][Blog]パイプ画像PZ

 

 

”ポストジンク”は、当社独自のライン設備である”ダイワZプロセス”によって製造しております。パイプ成型と溶融亜鉛メッキを連続一貫で行うこの設備は、メッキパイプの製造工程を効率化するだけでなく、製造された製品の錆びにくさを追求しています。

 参照リンク独自のライン設備「ダイワZプロセス」

"船内手すり"の事例

”船内手すり”とは、船に設置されている落下防止の為の構造物です。

[JP]船内手摺_20240806

”船内手すり”には、一部メッキを施さずに塗装のみを行う仕様もありますが、一般的には水辺や海上で長時間に渡って使用される想定で高い耐食性が求められ、メッキが施されている外径φ34.0 x 厚み3.2mmの”25A”と呼ばれる"SGP"や、外径φ34.0 x 厚み3.2mmの”STK290”もしくは”STKM11A”等のメッキパイプが使用され、さらにその上に塗装が施されています。

1.耐食性の比較

私たちのポストジンクの外面は、ドブメッキと同様に全周亜鉛メッキが施されており、溶射部からのサビの心配がありません。また、内面は"ミズエコ"という”水系処理剤”を使用しています。

”ミズエコ”は、外観が美しくさびに強いだけでなく、通常塗料と呼ばれるのに必須な成分である有機樹脂が入っていない内面用塗料に替わる”水系処理剤”です。

 

[JP][Blog]ポストジンク断面図(ミズエコver)

更に、独自の製法によって少ない亜鉛付着量でも耐食性に有効な純亜鉛層の厚さがドブメッキとほぼ同等な為、用途によって必要十分な耐食性を経済性を担保し実現できる可能性があります。

独自の調査で、実際に農業資材として使われているドブメッキの単管パイプを踏まえて、当社の”ポストジンク”が同レベル以上のメッキ性能を実現できないか、外メッキ層を構成している合金層/純亜鉛層の厚さを測り検証しましたので、以下をご参照いただければ幸いです。

メッキ層/合金層/純亜鉛層の比較

[JP]メッキ層比較

2.溶接加工時の比較

亜鉛メッキ上に溶接を行う場合に大きな問題となるのは、①気孔欠陥 (ブローホール・ピット)、②スパッタの発生、あり③酸化亜鉛ヒュームの発生の3点です。

基本的には、気孔欠陥やスパッタの発生、酸化亜鉛ヒュームの発生のリスクは溶接するメッキ鋼材の亜鉛付着量が多ければ多い程高まる為、より亜鉛付着量が少ないメッキ鋼材の方が溶接作業をし易いと考えます。

ポストジンクはメッキ層のうち耐食性を損なう合金層の厚みを大幅に縮小し、耐食性に有効な純亜鉛層を充分に確保している為、少ない亜鉛付着量で高い耐食性を実現しています。

その為、ポストジンクは、ドブメッキと比較して同等以上の耐食性で溶接作業時のリスクを抑える事が可能な為、溶接し易いメッキ鋼管であると言えます。

3.環境性能の比較

ポストジンクに使用されるメッキの原材料は、純度99.9995%の最純亜鉛地金です。ドブメッキに含まれる毒性の高い鉛やカドミウムは一切含まれていない為、土壌汚染や水質汚染といった重金属公害を引き起こす心配がなく、環境性能に優れます。

また、表面に施されている当社独自の樹脂製透明保護皮膜にもクロムを使用しておらず、ポストジンクはRoHS2・ELV指令にも適合した地球環境に優しいメッキパイプです。

4.ポストジンクの塗装性について

ポストジンクは、ドブメッキを施した鋼管と同じく極めて塗装がしやすく、美しい塗装の仕上がりを実現可能なメッキパイプで、そのポイントは”全周メッキ”にあります。

先メッキのメッキパイプではメッキ鋼板をパイプに状に丸めて溶接したあとに、溶接部に金属溶射をしており、塗装を施した場合にその部分が浮き出た状態になってしまいます。

しかし、ポストジンクは当社独自の”全周メッキ”の技術によって帯状の鉄をパイプ状に丸め溶接した後に外面を高純度溶融亜鉛で全周を均一にメッキを施すため、溶接部にもその他の外面と同様に均一な亜鉛メッキが施され、自ずと塗装がしやすく滑らかで美しい仕上がりが可能になります。

また、亜鉛メッキ上には"油コーティング"は行わず、当社独自の樹脂製透明保護皮膜を施していますので脱脂の工程を簡略化して塗装する事もできます。

5.ポストジンクの特寸対応について

白ガス管は定尺である4mや5.5mの長さの製品は数多く流通していますが、切断時の歩留まりや接合部分が多くなってしまう等、コストアップの要因が様々あります。

私たちのポストジンクは生産する条件の合う定尺以外の特寸も受注生産を行っています。今回ご紹介しているポストジンクSTK290外径φ34.0 x 厚み3.2mmの特寸の最低造管本数は以下です。

品種

外径 x 肉厚

規格

5,500mm未満

5,500mm以上

ポストジンク

34.0 x 3.2

STK290

546本

364本

他サイズの品種やサイズの最低造管本数について詳しく知りたい方がいらっしゃいましたら、以下のブログを参考にしてください。

大和鋼管ブログ:コスト削減への妙案?!特寸製品による切断歩留まりの改善について。

まとめ

今回は"船内手すり"を事例にして、主にメッキが施された”SGP”である白ガス管を構造用に用いた場合と、私たちのポストジンクを用いた場合を比較した際の考察をご紹介しました。

私たちの”ポストジンク”と白ガス管を比較しましたが、メッキパイプやメッキが施されていない黒管でも使用用途に合った製品を採用する事が安全面でも使用面でも極めて重要であると考えます。

私たちの製品に興味がある方や購入したいという業者様がいらっしゃいましたら、以下のフォームよりお気軽に見積を申し込みください。

新規CTA

最後までお読みいただき、感謝申し上げます。私たちは引き続き皆さまの"為になるお役立ち"の情報を発信して参りますので、何卒よろしくお願いいたします。ありがとうございました。


RELATED POST関連記事


RECENT POST「構造用メッキ鋼管」の最新記事


”ポストジンク”でオーバースペックを解消?!船内手すりを事例に行なったメリットの考察について。