資材が高騰している中で、少しでも安く単管パイプを購入したいと思い、輸入の単管パイプへの切り替えを検討している方が増えているのではないでしょうか?
最近は、輸入の単管パイプの品質が良くなってきているという情報もありますが、本当に輸入材で安全/安心に使用できるのか?不安に思っている方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、私たちの視点で輸入の単管パイプと国産の単管パイプの品質/サービス面で比較した考察をご紹介いたしますので、今後の購買判断にご活用いただければ幸いです。
輸入の単管パイプの基礎知識
輸入の単管パイプは"一般構造用炭素鋼鋼管の白 (HSコード:7306.30.021)"に分類され、現状ではその殆どは韓国から輸入されています。
実際に、以下のリンクの財務省貿易統計のサイトで2022年01月〜2022年12月迄の期間で、品目コードが"7306.30.021"で検索をかけると、韓国からの輸入が27,370tで全体の97.97%を占める事が分かります。
"一般構造用炭素鋼鋼管の白"の輸入量
国名 | 重量[kg] | 金額[千円] |
韓国 | 27,370,131 | 4,062,867 |
中国 | 280,438 | 45,030 |
台湾 | 83,833 | 16,864 |
ベトナム | 187,392 | 33,510 |
タイ | 784 | 282 |
ドイツ | 137 | 1,186 |
イタリア | 137 | 6,177 |
合計 | 27,936,345 | 4,165,916 |
また、輸入される単管パイプの殆どはピンなしの4m以上になっており、4mよりも短いサイズへの切断やピン加工に関しては、日本国内の業者が対応をおこなっている様です。
輸入の単管パイプの品質について考察
では、輸入の単管パイプの品質について、①従来の単管パイプの材質②軽量単管パイプの材質③耐食性の3つ観点で比較していきましょう。
①従来の単管パイプの材質
従来の単管パイプに関しては、JIS G3444(一般構造用炭素鋼鋼管)に適合しているならば、強度面に関しては大きく心配する必要はないと考えられます。但し確実にその性能の保証を得るには各造管メーカーから該当するロットのミルシート等を入手する必要があります。
JIS G3444(一般構造用炭素鋼鋼管)の機械的性質
種類の記号 | 引張り試験 | 曲げ試験 |
へん平試験 |
|||
引張り強さ |
降伏点または耐力 |
伸び % |
曲げ角度 |
内半径 |
平板間の距離 (H) |
|
11号試験片 |
||||||
STK500 | 500以上 | 355以上 | 15以上 | 90° | 6D | 7/8D |
②軽量単管パイプの材質
一方で軽量単管パイプに関しては、JIS規格(日本産業規格)で定めるJIS G 3444(一般構造用炭素鋼鋼管)には入っていない為、軽量単管パイプの引張り強度/降伏点又は耐力/へん平性等の機械的性質は、各鋼管メーカーによってそれぞれ異なりますので注意が必要です。
従って軽量単管パイプを仮設資材として使用するには、労働安全衛生規則で定められている"JIS規格以外で足場管として使用する場合の規定"に適合しているか確認する必要があります。
リンク:JISHA_安全衛生情報センター_安全衛生規則_第十章_(第二節 足場)
以下のグラフは、実際に各社が製造している軽量単管パイプを独自で引張り試験を実施し、応力と伸びについて比較をした結果です。
上記のグラフの通り引張り強さを示す応力は、各社どの製品もそれほど大きくは変わりませんが、最大値は国内A社が少し高くなっています。一方で”伸び”に関しては国内A社/B社、輸入材は約6%〜10%に対し、私たちの軽量単管パイプ”スーパーライト700”はおよそ14%と、他社製品と比べ2倍以上の差が出ており圧倒的に高い数値です。
つまり”強さ”では各製品あまり差がありませんが、”伸び”もしくは”延性”及び”靭性”で考えると”スーパーライト700”が最も粘り強く折れにくい”強靭”な軽量単管パイプだと言える訳です。
そして従来の単管パイプと同様に確実にその性能の保証を得るには、使用者はメーカーを特定する必要があり、特に軽量単管パイプにおいてはJIS等の規格がなく、”伸び”等の性能がメーカー毎にバラツキがあるので注意が必要です。
③耐食性
耐食性に関しては、ホームセンターで手に入れ易い軽量単管パイプを4種類準備し、当社が独自でサイクル試験を実施して耐食性を比較しました。
サイクル試験―暴露試験の相関性
上記の試験結果より、私たちの”スーパーライト700”と国内B社は、30サイクルでも赤サビは確認されませんでしたが、外面亜鉛付着量の少ない国内A社と輸入材は、溶射部分から発生した赤サビが確認できます。
特に、輸入材は亜鉛付着量が最も少なく、溶射部以外からも赤サビが発生している事が分かりますので、コーティング等の仕様も国内のメーカーとは異なっている事が推察されます。
また結果的に全周溶融亜鉛メッキである私たちの製品は、溶射部も含めてトータルで赤サビが発生しにくく、サビに強い軽量単管パイプだという事が確認できたと思います。
輸入の単管パイプのサービスについて考察
続いて輸入の単管パイプのサービスについてですが、納期に関しては在庫と輸送のタイミングの影響を受けやすく、特に短尺やピン付きを含む明細の場合、加工業者の状況/対応次第になると考えられます。
また輸入の単管パイプでミルシートが必要な場合、加工業者でのロットトレースや必要なロット照合等の作業が困難な場合もあるので注意が必要です。
そして、万が一何かあった場合には輸入業者を介して製造メーカーに確認する必要がある為、タイムリーに正確な状況確認ができない場合も考えられますので、シッカリと事前に販売元に確認を入れると共に、もしもの時の備えを十分に行うようにしておきましょう。
まとめ
今回は、輸入の単管パイプと国産の単管パイプの品質/サービス面で比較し、我々なりの考察をご紹介させていただきました。インフレ等の影響で厳しい経済環境が続く中で、お客さまが少しでもムリ/ムダ/ムラを減らしていくことの一助になっていれば幸いです。
総括としては、従来の単管パイプに関してはJIS規格として統一されている為、それらが守られている事を前提とすれば、品質自体の差はあまり大きくはありませんが、もしもの時にはその性能の保証を得る為にメーカーを特定する必要があり、またそれらの対応を迅速に行う必要がありますので、その点は十分注意しておきましょう。
一方で、軽量単管パイプに関しては国産や輸入に拘らず統一規格がない為、万が一の場合に備えると共に、安全/安心に単管パイプを使用/活用したい方は、販売元及び鋼管のみならず素材の製造メーカーをシッカリ見極めると共に、製品の性能の差を十分に認識した上で判断する必要があるとの認識に至りました。
特にミルシート等の製品保証に関する対応が必要な場合には、一般的には国産のメーカーの方が対応がスムーズだと考えられますので、案件に応じて十分に調査/確認を行った上で、販売元及び製造元の見極め/選択を行っていただければと思います。
他に単管パイプについてのご質問やご相談、また具体的なお見積等のニーズがございましたら、以下のフォームよりお気軽にご相談ください。
最後まで読んで頂き感謝申し上げます。我々は今後とも皆さまの為になり役に立つ情報の提供を心掛けて取り組んで参りますので、引続きご支援/ご協力の程、宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。
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