資材が高騰している中で、少しでも安く"単管パイプ"を購入したいと思い、輸入の"単管パイプ"への切り替えを検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか?
最近では、輸入の"単管パイプ"の品質が良くなってきているという情報もありますが、「本当に輸入材で安全/安心に使用できるのか?」と不安に思っている方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、私たちの視点で輸入の"単管パイプ"と国産の"単管パイプ"の品質/サービス面で比較した考察をご紹介いたしますので、今後の購買判断にご活用いただければ幸いです。
輸入の"単管パイプ"の基礎知識
輸入の"単管パイプ"は"一般構造用炭素鋼鋼管の白 (HSコード:7306.30.021)"に分類され、現状ではその殆どは韓国から輸入されています。
実際に、以下のリンクの財務省貿易統計のサイトで2024年01月〜2024年12月迄の期間で、品目コードが"7306.30.021"で検索をかけると、韓国からの輸入が27,982tで全体の97.22%を占めていることが分かります。
"一般構造用炭素鋼鋼管の白"の輸入量
国名 | 重量[kg] | 金額[千円] |
韓国 | 27,982,709 | 3,936,258 |
中国 | 718,818 | 107,433 |
台湾 | 27,732 | 5,984 |
ベトナム | 54,200 | 8,786 |
合計 | 28,783,459 | 4,058,461 |
また、輸入される"単管パイプ"の殆どはピンなしの4m以上になっており、4mよりも短いサイズへの切断やピン加工に関しては、日本国内の業者が対応をおこなっている様です。
輸出入でかかる"関税"とは?
"関税"とは、外国から輸入される商品に対して課される税金のことで、国内製品と輸入品の価格差の調整により国内産業を保護したり、税収を確保したりする目的で国が設定しています。
"関税"が主要な収入源となっている国もあり、貿易政策として特定の国に高い"関税"を設定することで政治的な圧力をかけたり、自国の貿易バランスを調整したりすることもあります。
"関税"には、価格に対し一定の割合で課される"従価税"、商品の数量や重量に応じて課される"従量税"、発展途上国からの輸入品に対して通常より低い関税を適用する"特恵関税"、貿易摩擦がある国に対して制裁目的で高い関税を課す"報復関税"などの種類があります。
"関税"は重要な役割を果たす一方で、高すぎると輸入品の価格が上がり消費者の負担が増えたり、国内企業の競争力が低下するなどのデメリットや、貿易の自由化を阻害する側面もあるため、国ごとに慎重に設定されています。
輸入の"単管パイプ"の品質について考察
では、輸入の"単管パイプ"の品質について、①従来の"単管パイプ"の材質②"軽量単管パイプ"の材質③耐食性の3つ観点で比較していきましょう。
①従来の"単管パイプ"の材質
従来の"単管パイプ"に関しては、"JIS G3444(一般構造用炭素鋼鋼管)"に適合しているならば、強度面に関しては大きく心配する必要はないと考えられます。但し確実にその性能の保証を得るには各造管メーカーから該当するロットの"ミルシート"等を入手する必要があります。
"JIS G3444(一般構造用炭素鋼鋼管)"の機械的性質
種類の記号 | 引張り試験 | 曲げ試験 |
へん平試験 |
|||
引張り強さ |
降伏点または耐力 |
伸び % |
曲げ角度 |
内半径 |
平板間の距離 (H) |
|
11号試験片 |
||||||
STK500 | 500以上 | 355以上 | 15以上 | 90° | 6D | 7/8D |
②"軽量単管パイプ"の材質
"軽量単管パイプ"に関しては、"JIS規格(日本産業規格)"で定める"JIS G 3444(一般構造用炭素鋼鋼管)"には入っておらず、"軽量単管パイプ"の引張り強度/降伏点又は耐力/へん平性等の機械的性質は、各鋼管メーカーによってそれぞれ異なるため注意が必要です。
従って"軽量単管パイプ"を仮設資材として使用するには、労働安全衛生規則で定められている"JIS規格以外で足場管として使用する場合の規定"に適合しているか確認する必要があります。
リンク:JISHA_安全衛生情報センター_安全衛生規則_第十章_(第二節 足場)
以下のグラフは、実際に各社が製造している"軽量単管パイプ"で当社が独自に引張り試験を実施し、"応力"と"伸び"について比較した結果です。
上記のグラフの通り引張り強さを示す"応力"は、各社どの製品もそれほど大きくは変わりませんが、最大値は国内A社が少し高くなっています。一方で"伸び"に関しては国内A社/B社、輸入材は約6%〜10%に対し、私たちの"軽量単管パイプ スーパーライト700"はおよそ14%と、他社製品と比べ2倍以上の差が出ており圧倒的に高い数値です。
つまり"強さ"では各製品にあまり差はありませんが、"伸び"もしくは"延性"及び"靭性"で考えると"スーパーライト700"が最も粘り強く折れにくい"強靭"な"軽量単管パイプ"だと言える訳です。
そして従来の"単管パイプ"と同様に、確実にその性能の保証を得るには、使用者はメーカーを特定する必要があります。特に"軽量単管パイプ"においてはJIS等の規格がなく、"伸び"等の性能がメーカー毎にバラツキがあるので注意が必要です。
③耐食性
耐食性に関しては、ホームセンターで手に入れ易い"軽量単管パイプ"を4種類準備し、当社が独自でサイクル試験を実施して耐食性を比較しました。
サイクル試験―暴露試験の相関性
上記の試験結果より、私たちの"スーパーライト700"と国内B社は、30サイクルでも"赤サビ"は確認されませんでしたが、外面亜鉛付着量の少ない国内A社と輸入材は、溶射部分から発生した"赤サビ"が確認できます。
特に、輸入材は亜鉛付着量が最も少なく、溶射部以外からも赤サビが発生していることが分かりますので、コーティング等の仕様も国内のメーカーとは異なっていると推察されます。
また結果的に全周溶融亜鉛メッキである私たちの製品は、溶射部も含めてトータルで赤サビが発生しにくく、サビに強い"軽量単管パイプ"だということが確認できたと思います。
当社の"単管パイプ"についてさらに詳しく知りたいという方は、以下のフォームよりお気軽にご相談ください。
輸入の"単管パイプ"のサービスについて考察
続いて輸入の"単管パイプ"のサービスについてですが、納期に関しては在庫と輸送のタイミングの影響を受けやすく、特に短尺やピン付きを含む明細の場合は、加工業者の状況/対応次第になると考えられます。
また輸入の"単管パイプ"で"ミルシート"が必要な場合には、加工業者でのロットトレースや必要なロット照合等の作業が困難な場合もあるので注意が必要です。
万が一何かあった場合には、輸入業者を介して製造メーカーに確認する必要があるため、タイムリーに正確な状況確認ができないケースも考えられます。
事前にシッカリと販売元に確認を入れると共に、もしもの時の備えを”自己責任”で十分に行う必要がある点が、国内品との大きな差だと考えられます。
まとめ
今回は、輸入の"単管パイプ"と国産の"単管パイプ"の品質/サービス面で比較し、我々なりの考察をご紹介させていただきました。インフレ等の影響で厳しい経済環境が続く中で、お客さまが少しでもムリ/ムダ/ムラを減らしていくことの一助になっていれば幸いです。
総括としては、従来の"単管パイプ"に関してはJIS規格として統一されているので、それらが守られていることを前提として、品質自体の差はあまり大きくはないと言えますが、もしもの時にはその性能の保証を得る為にメーカーを特定する必要があり、それらの対応を迅速に行う必要がありますので、その点は十分注意しておきましょう。
一方で、"軽量単管パイプ"に関しては国産や輸入に拘らず統一された規格がないため、安全/安心に"単管パイプ"を使用したい方は、販売元及び鋼管のみならず素材の製造メーカーをシッカリ見極め、製品の性能の差を十分に認識した上で判断する必要があるとの認識に至りました。
特に"ミルシート"等の製品保証に関する対応が必要な場合には、一般的には国産のメーカーの方が対応がスムーズだと考えられますので、案件に応じて十分に調査/確認を行った上で、販売元及び製造元の見極め/選択を行っていただければと思います。
他に"単管パイプ"についてのご質問やご相談、また具体的なお見積等のニーズがございましたら、以下のフォームよりお気軽にご相談ください。
最後まで読んでいただき感謝申し上げます。我々は今後とも皆さまの為になり役に立つ情報の提供を心掛けて取り組んでまいりますので、引続きご支援/ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
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