2021.03.24

なるほど。鋼の成分とSTKR490の化学成分の改正について。

鋼管の素材となる鋼には、鉄以外にも様々な化学成分が添加されており、それぞれの化学成分毎に役割が違ってきます。

また、鋼管の規格毎に材質/形状/用途が変わるので、各鋼管に求められる性能に応じた化学成分を添加し調整することで、強度や伸びだけではなく、靭性や加工性を上げたりしています。

今回は、2021年にJIS G3466 一般構造用角形鋼管(STKR)にて化学成分の改正が一部ありましたので、併せて化学成分の役割や特徴についてもご紹介します。

JIS規格について

JIS規格とは、日本産業規格の英語での記載である”Japanese Industrial Standards”の頭文字JISに”規格”をくっつけた略称になります。英語と日本語で”規格”が繰返されているのがなんだか不思議な感じです。

JIS規格は日本の産業標準化の促進を目的とする産業標準化法に基づき制定される任意の国家規格であり、自動車や電化製品等の産業製品生産に関するモノから、文字コードやプログラムコードといった情報処理、サービスに関する様々な規格が含まれています。

技術の進歩や社会的環境の変化等、必要に応じて制定または改正が定期的あり、少なくとも5年以内に見直しが行われ、そのJISを主務大臣が確認 / 改正又は廃止を行います。

JIS規格の制定等が行われると官報に名称、番号並びに制定、改正及びその年月日が公示され、 その内容は、規格票として日本産業標準調査会(JISC:Japanese Industrial Standards Committee)のホームページに掲載されます。

 出典:日本産業標準調査会(JISC)ホームページ

JIS G3466 一般構造用角形鋼管(STKR)とは?

JIS G3466 一般構造用角形鋼管(STKR)の規格は、STKR400とSTKR490に2種類に分類されます。

建築材料の用途に於いてSTKRよりも靭性や加工性に優れ国土交通大臣認定品であるBCRやBCP(冷間成形角形鋼管)が主流になり、採用されるケースは減りましたが、STKRはボックスパレットや鋼製家具等の工作物に多く使用されています。

STKRの中でもSTKR400の方が流通量が多く、特別な契約以外でSTKR490を市中で手に入れる事は難しいですが、強度の高いSTKR490は仮設資材の材料等で活躍しています。

2021年のSTKR490の化学成分の改正について

今回は「JIS G3466 一般構造用角形鋼管」の一部化学成分が改正されました。前回の改正から2年が経過し、近年の市場製品の反映、類似鋼管のJISとの共通表記の確保等の観点から改正の要望があったのが理由となっています。

変更内容としましては、下記赤字部分になります。

〜変更後〜

[JP][Blog]STKR490化学成分(変更後)

〜変更前〜

[JP][Blog]STKR490(変更前)

改正点としましては化学成分に於いて、JIS G3444 一般構造用炭素鋼鋼管(STK490)の化学成分との整合を図る為、STKR490のMn、P及びSの規定値を、それぞれ「Mn=1.50%以下を1.65%以下」に、「P及びS=0.040%以下を0.035%以下」に改正をしました。

尚、当社で変更部分をまとめた資料を作成致しましたので、よろしければ下記資料ダウンロードフォームよりご確認頂ければ幸いです。

新規CTA

C・Si・Mn・P・Sが与える鋼への影響

鋼管の素材となる鋼で、特に含有比率が大きい元素のことを「五元素」と呼ばれており、C(炭素)・Si(シリコン/ケイ素)・Mn(マンガン)・P(リン)・S(硫黄)の5つです。

鋼管の多くは化学成分値の多い少ないによって、下記の様に鋼への影響を及ぼす為、JIS規格によって上限 / 下限の値がそれぞれの元素毎に定められています。

C (炭素):

  • 強度、硬さは主にこの炭素量で決まります。この炭素量によって鋼管の区分が分けられており、軟鋼や硬鋼等があります。一方で、炭素量が多すぎると伸びの能力が低下し折れやすくなってしまいます。

Si (シリコン/ケイ素):

  • 降伏点と引張強さの強度を見るための二大指標や耐熱性に影響します。成分に多く入れすぎると材質がもろくなる原因にもなります。
  • メッキを施す場合には、メッキ焼けの原因になる事もあります。

Mn (マンガン):

  • ねばり強さの指標である靭性に影響し、耐摩耗性/衝撃強度/引張強さに寄与します。この元素は単体ではなく、他の元素との組み合わせによって効果を発揮します。

P (リン):

  • 主に氷点下になると鉄鋼材料が本来の強度よりも弱い力で破壊されてしまう「低温脆性」に寄与する有害元素の一つと言われています。加工性を上げるために意図的にいれることもありますが、多く含有してしまうと溶接性/冷間加工性/衝撃特性を阻害要因ともなる為、少ない方が良質の鋼とされています。

S (硫黄):

  • 切削加工性を上げる為に添加することがありますが、こちらもP(リン)と同じく衝撃特性/溶接性を低下させる要因にもなりますので、通常は少ない方が良質の鋼とされています。

上記のように元素はそれぞれ役割をもって意図的に加えられているモノがあったり、できれば少なくしたいが製法上完全には除去できない為、含有してもよい上限だけを定めて品質管理を行っているモノがあったりしています。

一方で意図的に入れているモノでも、その元素単体のみ増やすと逆に組織が脆くなったりしてしまう為、他の元素との組合せや比率が重要となってくる訳で、その点がJIS規格に反映されているとご理解下さい。

まとめ

この様に鋼管の素材となる鋼の各化学成分量は、その性質/性能を決定づけるとても重要な要素です。

私たちはお客さま一人ひとりに当社製品をよりに安全/安心にご使用頂ける為に、2021年に改正したJIS G3466 一般構造用角形鋼管(STKR)へ移行期間内の令和4年2月21日までに移行する対応を鋭意進めております。

当社製品をご購入頂いているお客さまのご要望に応じて、ミルシートの発行にも対応しておりますので、必要な際はご遠慮無く連絡を頂ければ幸いです。

また今回のJIS規格の変更に関して何かご不明点やご質問等がございましたら、下記お問い合わせフォームよりお気軽にご相談頂ければと考えております。引続き宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。

新規CTA


RECENT POST「話題/トピックス」の最新記事


なるほど。鋼の成分とSTKR490の化学成分の改正について。