鉄鋼製品の製造/流通や販売に関わる方が、必ず出会うであろう”ハイテン鋼"や”高張力鋼”という言葉。しかし、詳細についてはあまりよく分からないという方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、当社のハイテンパイプである"スーパーライト700”や"STX(エス・ティー・エックス)"の素材でもある”ハイテン鋼”の基礎知識を、わかりやすくご紹介させていただきます。
普段何気なく見たり取り扱ったりしている”ハイテン鋼”について、改めてどんなものなのかを知るきっかけにしていただければ幸いです。
”ハイテン鋼”および”高張力鋼”とは?
”ハイテン鋼”もしくは”高張力鋼”とは、一言でいえば、強度が高くて軽い鋼材のことです。特定の商品名ではなく、ある一定の強度を備えた鋼材を”ハイテン鋼”や”高張力鋼”と呼んでいる訳です。
英語では”High Tensile Strength Steel”(ハイ・テンサイル・ストレングス・スティール)と表記され、日本語読みしたときの冒頭部分(ハイ・テンサイル)が省略されて、”ハイテン鋼”と呼ばれ、コレを日本語に直訳すると”高張力鋼”になります。つまり”ハイテン鋼”と”高張力鋼”は全くの同義の言葉です。
国や鉄鋼メーカーによって定義が異なるものの、日本において一般的には”引張強さ”が490MPa(50kg/㎟)以上の鋼材が”ハイテン鋼”に分類されます。
19世紀末頃に研究開発が始まって以降、技術の進歩と共に強度は増していき、現代では”超ハイテン鋼”と呼ばれる鋼材も登場しています。
”ハイテン鋼”の特徴
”ハイテン鋼”の特徴は、従来の一般的な鉄である”軟鋼”よりも高い強度です。合金元素が加わることで性質が変化し、力を加えた時に変形するまでに必要な力の大きさである”引張強さ”が大きくなり、力を加えた時に変形して元に戻らなくなる基準点となる”降伏点”が高くなることを実現しています。
さらに、研究開発によって溶接性や加工性、切欠き靭性や耐食性等についても優れた性能を引出すことを実現したことから、現在では幅広い分野で活用されています。
”ハイテン鋼”の活用例
”ハイテン鋼”は様々なところで使われていますが、身近な例では特に自動車のボディーに多く用いられています。他にも、高層ビルや長大橋、船舶や燃料タンク等にも使われており、まさに私たちの生活を支える重要な資材といえます。
また建材分野ではまだまだ発展途上ですが、軽量単管足場や農業用ビニールハウスの骨組み等に採用されており、今後も様々な可能性を秘めた鋼材といえます。
当社では実際に”ハイテン鋼”を用いた足場管の”スーパーライト700”や、農業用パイプの”STX ”を製造しており、導入いただいたお客様からその”軽さ”や”強さ”の特性による高いパフォーマンスでご好評をいただいております。
”ハイテン鋼”の製造方法
”ハイテン鋼”は構造用低合金鋼です。すなわち、対象物の構造上で重要部分に使うべく、少量の合金元素を”軟鋼”に添加して作られます。
加える合金元素の例としては、延性や靭性を損なわずに強度を高める”ケイ素(Si)”、強度と硬度を増す”マンガン(Mn)”、靭性を向上させる”チタン(Ti)”、摩耗しにくくさせる”バナジウム(V)”等があります。
なお、合金元素の添加だけでなく、熱処理技術や化合物の組成に働きかける技術の進歩によって、更に強化された鋼材が製造できるようになっています。
”ハイテン鋼”開発の歴史
”ハイテン鋼”開発の背景には、産業の発展に伴った構造物の大型化や大容量化、軽量化へのニーズがありました。
欧米では19世紀末頃には研究が始まり、橋梁や軍艦に採用されるようになりました。日本では、太平洋戦争の時期に海軍主導で開発が進みましたが、研究開発に勢いがついたのは終戦後です。
防衛庁の警備艦に使うために大規模な研究が行われたり、工作基準が設けられたりして、当時の製鋼会社は競うように開発を行ったといいます。
現代における”ハイテン鋼”の技術進歩は、自動車への要求の高まりと共にあるといっていいでしょう。安全性の向上はもちろんのこと、世界的に環境問題へ注目が集まる中で、燃費向上を目的とした車体の軽量化が求められるようになり、薄くて軽くて強い鋼材の需要が高まりました。
軽くて丈夫な”ハイテン鋼”は、自動車だけでなく、様々な目的で使われています。用途によっては加工性が強く求められたり、表面の美しさが重視されたりして、ニーズに応じて種類も増えていきました。”ハイテン鋼”は、今でも進化を続けている鋼材なのです。
”ハイテン鋼”を用いた当社自慢のハイテンパイプ
先述のとおり当社では、”ハイテン鋼”を用いた”ハイテンパイプ”である”スーパーライト700”と”STX ”を製造しています。軽くて丈夫な鋼材に、当社独自のインラインメッキ等の技術を加えることによって、皆様のお役に立てるパイプをご提供している訳です。
現場のコストも軽くする。軽量足場管“スーパーライト700”
”スーパーライト700”は、自動車の衝突時に安全を守るドア補強材である”ドアインパクトビーム”をヒントに、日本製鉄株式会社と大和鋼管が共同開発した超軽量足場用鋼管です。
肉厚1.8mmで軽量化を実現するだけでなく、引張り強さを従来品よりも40%向上させた、まさに"軽くて強い"ハイテン鋼の特徴を活かしたパイプです。全体のコストダウンや作業負荷の軽減につながる為、それまでの足場管に替えて導入いただく現場が増えております。
参照リンク:「スーパーライト700」で実現する文化・伝統の継承。桑平工業さまのご活躍について。
農家の皆様を支える”STX”
”STX”も日本製鉄株式会社と大和鋼管が共同で開発した、現在は農業向けの用途をメインとしている”ハイテンパイプ/ 高張力鋼管”です。
高い強度を実現すると同時に柔軟性にも優れており、積雪や強風にも耐えるしなやかさを持つことから、農業用ビニールハウスや支柱等にご活用いただいております。
参照リンク:更に強靭な農業用ビニールハウスを。大和鋼管が皆さまと取組む”STXハウス”というチャレンジ。
まとめ
今回は、”ハイテン鋼”の基礎知識についてご紹介させていただきました。
”ハイテン鋼”は私たちのインフラを下支えしている生活に欠かせない鋼材であるとともに、様々な活用の可能性を持つ素材でもあります。
この記事をきっかけに、更に”ハイテン鋼”や”ハイテンパイプ”に更にご興味を持っていただけましたら幸いです。もしなにかご質問やご要望等がございましたら、以下のページからお気軽にお問い合わせください。
記事内でご紹介させていただいた”ハイテンパイプ”である”STX”や”スーパーライト700”についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページから製品カタログがダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
当社では、お客様の為になる”お役立ち情報”をブログやメルマガを通して発信してまいります。今度ともよろしくお願いいたします。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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