2024年09月17日に東京製鐡は、10月契約販価でコイル類/
この発表を受けて、鉄鋼製品を取り扱う皆さまの中には、「
そこで今回は、
東京製鉄の10月契約販価値下げの背景
東京製鐡は、以下のコメントにもある通り、10月契約販価値下げの背景として海外マーケットの市況があります。
海外マーケットは、米国では比較的堅調な景気動向を示していましたが、一部で先行きへの不透明感が再燃し、為替や株価の乱高下が続き、足元では方向性が定まらない環境にあります。
また中国では、景気減退の局面にあり内需の低迷が長引いているため、鉄鋼関連製品の需給バランスが崩れ、国内外への販売価格は大きく値を下げたままにあります。
この様な状況の下、欧米のみならず、アジア地域においても鉄鋼製品の保護貿易政策はより鮮明となり、日本においても何らかの具体的な対応策が必要な局面となりました。
引き続き、世界の経済動向と金融政策並びに鉄鋼需給の変化を慎重に注視してまいります。
以下に、2024年に於ける東京製鐡のホットコイルの10月契約販価と中国国内のホットコイル価格相場をグラフにまとめました。
上記のグラフで分かる通り、中国国内のホットコイル価格相場は、2024年の年初と8月を比較すると日本円換算でおよそ16,000円/㌧下がっています。
東京製鐡が2024年09月17日に発表したコイル類の10月契約販価は、15,000円/㌧と大幅な値下げとなっていますが、その幅は、中国国内のホットコイル価格相場の値下がりとほぼ同じ幅となっている事が分かります。
②東京製鐡の販売価格について考察
続いて、東京製鐡の販売価格について、スクラップの購入価格との差であるメタルスプレッドを用いて今年のHCの価格推移を分析/統合し、考察してみたいとおもいます。
以下は、東京製鐵の①スクラップ購入価格 (特級/宇都宮陸上)と②ホットコイルの販売価格 (厚み:1.7mm〜22.0mm)、③メタルスプレッド (ホットコイル販売価格からスクラップ購入価格の平均を引いたもの)について、2024年分の推移を表にまとめました。
年月
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①スクラップ購入価格 [円/トン] |
②ホットコイル販売価格
[円/トン] |
③メタルスプレッド
[円/トン] |
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月初 | 月末 | 平均 | |||
2024年01月 | 51,000 | 51,000 | 51,000 | 105,000 | 54,000 |
2024年02月 | 51,000 | 53,000 | 51,000 | 107,000 | 56,000 |
2024年03月 | 53,000 | 51,500 | 52,250 | 107,000 | 54,750 |
2024年04月 | 51,500 | 50,500 | 51,000 | 107,000 | 56,000 |
2024年05月 | 50,500 | 51,500 | 51,000 | 107,000 | 56,000 |
2024年06月 | 51,500 | 52,500 | 52,000 | 107,000 | 55,000 |
2024年07月 | 52,500 | 51,000 | 51,750 | 107,000 | 55,250 |
2024年08月 | 51,000 | 45,500 | 48,250 | 107,000 | 58,750 |
2024年09月 | 45,500 | 38,500 | 41,750 | 107,000 | 65,250 |
2024年10月 | - | - | - | 92,000 | - |
2024年09月17日に発表したコイル類の10月契約販価はトンあたり15,000円/㌧と大幅な値下げとなっていますが、主原料となるスクラップの購入価格も、今年の最高値だった3月月初の53,000円/㌧から9月月末の38,500円/㌧を比較すると14,500円/㌧の大幅な値下げとなっています。
また、10月契約で15,000円/㌧と大幅な値下げの販価を発表をする直前の2024年09月14日時点には、既にスクラップ購入価格は40,000円/㌧前後となっています。
従って販売価格の大幅な下落のインパクトはありますが、その分スクラップの購入価格も下がっているので、粗利に相当するメタルスプレッドに関しては、10月月初でもトンあたり50,000円㌧以上はキープでき、スクラップ価格の下落傾向が継続すれば、さらに拡大できそうな状況にあるといえます。
つまり年初からの推移を追ってみると、9月のトンあたり65,250円/㌧のメタルスプレッドが寧ろ大き過ぎる印象で、今回の行なった15,000円/㌧販価の修正は、市況環境の悪化を念頭にメタルスプレッドを縮小することで数量の確保と価格の底入れを実現し、自社の収益の確保を狙っていると考察できます。
③今後の市況について
以下のグラフは、2019年から2024年の現時点までの①スクラップ購入価格(特級/宇都宮陸上)、②ホットコイルの販売価格(厚み:1.7mm〜22.0mm)、③メタルスプレッド(ホットコイル販売価格からスクラップ購入価格の平均を引いたもの)をグラフに表したものです。
2021年4月以降から直近までのメタルスプレッドは、2022年に一時的に80,000円/㌧まで上昇はしましたが、基本的には50,000〜60,000円/㌧前後を推移していることが分かります。
また2021年4月前後でメタルスプレッドは、おおよそ20,000円/㌧程度の幅で拡大していますが、これは電気料金が収益に与える影響が大きな電炉業界に於いて、当時は電力などのエネルギー供給が逼迫した事を機会に電気料金や燃料が急激に値上がり、この傾向が基本的には継続している事を表しています。
更に足元では、電気料金のみならず人件費/輸送費等のさまざまな物価が上がっている状況なので、大幅にメタルスプレッドが縮小すると、収益が悪化し事業の継続性が危ぶまれる事態に陥ることになります。
その様な背景から東京製鐵は、今後も期間収益の確保と事業の継続性を念頭に、市況に応じてメタルスプレッドを50,000円/㌧〜60,000円/㌧確保する方向でHCの売り出し価格を決定していくと考えられます。
例えば、現時点で50,000円/㌧程度まで縮小したメタルスプレッドを55,000円/㌧程に戻す為には、10月契約販価ではスクラップ購入価格が約36,000/㌧まで下がる必要がありますが、9月の月末のスクラップ価格が下落傾向の中で既に38,500㌧/月である点を踏まえると既に射程距離内と考えられ、当面はスクラップ価格は弱含みだと判断していると推察されます。
そして今回の大幅値下げをふまえると、スクラップ価格が大きく下がらない限り、当面HCの売り出し価格は当面下がらないと考えられますし、もしスクラップ価格が上昇した場合には、HCの売り出し価格も上昇に転じると想定するのが自然だと考えられます。
まとめ
今回は、
久々に東京製鐡の売り出し価格が大幅に引き下げられた事には驚かされましたが、その背景と意図を推察すると、国内の鉄鋼需要が奮わない中で、中国製品を中心に価格下落傾向が進んでいる足元では、早目の数量確保と価格の底入れを目指し、この大幅な価格調整を実施した事が伺えます。
一方でいわゆる”2024年問題”といわれる労働時間の総量規制等の影響も受けながら、縮小している日本国内の建材向けの鉄鋼市場は、足元では比較的在庫が積み上がっている状況ですし、値段を下げても数量が見込めない環境です。
従って今回の東京製鐵の値下げに対する国内鉄鋼業界の皆さんの反応は、現時点では我々は極めて冷静だと感じていると共に、我々も過去半年間に取組み実現できてない値上げも加味しながら、丁寧な価格対応を行なっていく必要があると認識しています。
一方で足元及び先々の物件に関して、見積価格をご相談したい場合には、当社の営業担当者か以下のフォームから気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき感謝申し上げます。引き続き皆さまにとって”為になり、役に立つ”情報を発信して参りたいと思いますので、引き続きご支援・ご協力を何卒宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。
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