”メッキパイプ”は、"DIY"などで一般の方でも扱い易い馴染みのある材料ですが、やテントや農業用ビニールハウスなどの構造物にも使用されるプロ向けの材料でもあります。
”メッキパイプ”で製品を製造される方々にとっては、パイプ同士を接合する際は、必要な強度や施工性を踏まえ、経済性を考慮した適切な方法を選択することが重要です。
しかし、”メッキパイプ”の接合は、
そこで今回は、”メッキパイプ”の接合方法について詳しく解説した上で、オススメの金具をご紹介させていただきます。
鋼材の接合方法である"湿式"と"乾式"について
湿式
”湿式”は、溶接により鋼材を結合する方法で、加熱や加圧によって資材となる鋼を溶かし、冷却して固めることで一体化させる加工方法です。”湿式”のメリットとデメリットを以下にまとめました。
メリット- ”湿式”は、”乾式”よりも接合部が一体化するため、より高い強度が得られる。
- ”湿式”は、金具やボルトなどの部品が少なく、不要になる場合もあり、構造がシンプルで軽量化に繋がり易い。
デメリット
- ”湿式”は、一度溶接すると溶接箇所を解体する事が難しく、手直しが効かない。
- ”湿式”の溶接作業には、熟練した技術が必要になり、チョッとした工作物やDIYには不向き。
乾式
”乾式”は、溶接を行わずに鋼材を結合する方法で、金具やボルトなどの部品や鋼材そのものをかしめるなどの方法により接合させます。”乾式”のメリットとデメリットを以下にまとめました。
メリット
- ”乾式”は、金具を必要に応じて取り外したりできるため、解体や再組立及び手直しが可能。
- ”乾式”は、”湿式”と比較し熟練した技術が不要なため、チョッとした工作物やDIYにも向いている。
デメリット
- ”乾式”は、溶接に比べて接合部の強度の過不足が発生し易い。
- ”乾式”は、部品点数が多くなる可能性があり、見た目が煩雑になる場合がある。
メッキパイプを接合する場合の注意点
”メッキパイプ”を接合する場合の注意点を、"湿式"と"乾式"に分けてそれぞれでご紹介します。
”メッキパイプ”を湿式で接合する場合の注意点
”メッキパイプ”を”湿式”で溶接接合する場合の注意点は、①気孔欠陥 (ブローホール・ピット)、②スパッタの発生、③酸化亜鉛ヒュームの発生の3点です。
①気孔欠陥 (ブローホール・ピット)
”気孔欠陥” は、”ブローホール・ピット”とも呼ばれ、溶接時に発生する水素や窒素等のガスやヒュームによって、溶接金属の表面や内部に小さな孔や空洞ができる現象です。”気孔欠陥”は、溶接強度が低下する等の問題を引き起こします。
②スパッタの発生
”スパッタ”は、一般的に”火花”とも呼ばれ、作業者に危険を及ぼす他、大きなスパッタは製品に飛び散るとそこで凝固してしまい品質に影響します。
”メッキパイプ”の素地である鉄は融点が約1,500℃であるのに対し、亜鉛は約900℃で沸点に達する為、溶接作業で沸点を超えて気体となった亜鉛が、お湯を沸かした時のように融解した鉄を通過して外部へ拡散しようとし”スパッタ”が発生します。
③酸化亜鉛ヒュームの発生
”メッキパイプ”の表面にある亜鉛は、溶接作業の際に沸点に達し気体となります。亜鉛の気体が空気中の酸素と結び付く事と温度が低下する事で、”ヒューム”と呼ばれる微細な”酸化亜鉛”の固体粒子が生成され、空気中に浮遊する現象が発生します。
”酸化亜鉛”は、通常は人体に無害ですが、大量に摂取すると健康を害することがあり、特に”ヒューム”の様に微粉塵の形で吸入すると、”金属ヒューム熱”と呼ばれる、咳・胸痛・悪寒・発熱・呼吸困難・筋肉痛・嘔吐等の症状を発症します。
メッキ鋼管の溶接についてさらに詳しく知りたいという方がいらっしゃいましたら、以下のブログを参考にしてください。
参考:大和鋼管ブログ_メッキ鋼管の溶接をしたいんだけど・・・。その難しさと作業上の注意点について。
”メッキパイプ”を乾式で接合する場合の注意点
”メッキパイプ”を”乾式”で接合する際には、表面に発生する”摩擦”に関して注意が必要です。
建物などの接合部に強度が求められる場合には、通常のボルトよりも強度が高い"高力ボルト"を使用し、締め付けることで部材間に大きな”摩擦”を生じさせ、その摩擦力によって部材を接合します。
”メッキパイプ”は、メッキを施していない鋼材と比べて表面が滑り易いため、”高力ボルト”では十分な接合強度を得られないという可能性があります。
メッキパイプを接合する場合のメリット/メリットのまとめ
これまでの内容を踏まえ、メッキパイプを接合する場合の接合方法について、意匠性/コストを踏まえた私たちの考察をご紹介します。
接合方法 | 施工性 | 強度 | 意匠性 | コスト |
湿式 | △ | ◯ | ◯ | △ |
メッキが施されている事により、施工の難易度が上がる。 | 正しく接合できれば、より安定した高い強度が得られる。 | 収まりも良く、スッキリした印象になる為、意匠性は高い。 | 接合後にメッキを施すと、トータルコストは大きくなり易い。 | |
乾式 | ◎ | △ | △ | ◎ |
メッキの有無に関わらず、施工の難易度は低い。 |
建築物等で接合部に高い強度が求められる際は懸念がある。 |
状況により部材の重なりが発生し、意匠性に課題が生じる。 | 接合後のメッキが不要で、トータルコストを低くし易い。 |
上記の通り、”メッキパイプ”を接合する際は、強度や意匠性を優先するなら”湿式”を、施工性やコストを重視するなら”乾式”を選択する事が望ましいですが、更に環境性を考慮すると”乾式”に軍配が上がると我々は考えています。
オススメの金具のご紹介
”メッキパイプ”の中でも外径が48.6mmの”単管パイプ”は、一般の方も入手し易く、”乾式”で接合する際に必要な金具も、様々なタイプが開発されています。
”単管パイプ”を”乾式”で接合する際に使用できる金具として、強度が高い"単管クランプ"と、意匠性が高い"単管ジョイント"についてそれぞれご紹介します。
単管クランプ
”単管クランプ”とは、2本の”単管パイプ”を1箇所で締め付けて固定する為の金具です。建築資材の一つで広く普及しており、特に”単管パイプ”で足場を組む際に多く使用されます。
様々な種類がありますが、代表的なモノとして、交差する2本の”単管パイプ”の角度を90度に固定し緊結する”直交型クランプ”と、交差する2本の”単管パイプ”を自由な角度に緊結する”自在型クランプ”の2種類があります。
単管ジョイント
”ジョイント”とは、パイプ同士の接合のほか、パイプの方向を変える際に使用される接合用部品の金具です。ネジ止めで簡単に接続ができるのが特徴で、ホームセンターやオンラインショップで気軽に購入できることから、DIY・農業用ビニールハウス・フェンス等多くの用途で使われています。
材質の種類は多岐に渡り、鉄製・アルミ製・プラスチック製・ステンレス製等があります。
また、形状も用途に応じて様々であり、一般的なT型・Y型・L型の他にも、製作物の移動を想定したキャスター付きのモノや、農業用ビニールハウスや簡易倉庫への使用を想定したパイプハウス用のモノ、さらには太陽光用等の用途に特化したモノもあります。
画像:株式会社ジョイント工業
まとめ
今回は、”メッキパイプ”の接合方法について詳しく解説し、オススメの金具をご紹介させていただきました。”メッキパイプ”の接合方法は様々な方法がありますが、目的に応じて適切な接合方法を選ぶ事が重要です。
自社の製品へ”メッキパイプ”を活用したいと考えている方がいらっしゃいましたら、以下のお問合せフォームよりお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき感謝申し上げます。今後とも何卒宜しくお願いします。ありがとうございました。
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