鋼材は、建築や土木の建設部門や自動車や家電等の製造業部門で使用される主要な資材です。
しかし、国内の鋼材価格は、製品自体の"需要"や"供給"だけでなく、その"主原料価格"や鋼材の"国際相場"の影響を受けて価格が変動します。先々の動向を読み、鋼材を適切な価格やタイミングで仕入れを行う為には、幅広い知識と深い考察が必要となります。
今回は、今後の鋼材の"需要予測"について私たちがまとめた情報とその考察をご紹介します。今後の鋼材価格を考えるうえでの一助になれば幸いです。
2024年の海外鋼材需要について
世界鉄鋼協会は、「2024年の国際的な鋼材需要は、米国やEUで需要回復が鈍化するものの、新興国の成長や中国不動産市況の安定により、2023年比1.9%増の18億4910万トンになる」との見通しを2023年10月に発表しました。
一方で、中国経済が構造的に移行期である事や、ロシア・ウクライナ及びイスラエル・パレスチナに於ける情勢不安などによって原油価格上昇や経済的分断が進む、鉄鋼需要の下振れの要素になりえるとしています。
参考:世界鉄鋼協会_worldsteel Short Range Outlook October 2023
以下は、2021年に於ける国別の”鋼材見掛消費量”を割合で表した円グラフです。
2021年 鋼材見掛消費量の割合
![[JP][Blog]国別・地域別の鋼材見掛消費量割合2023.11.20](https://www.daiwast.co.jp/hs-fs/hubfs/images/blog/%5BJP%5D%5BBlog%5D%E5%9B%BD%E5%88%A5%E3%83%BB%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E5%88%A5%E3%81%AE%E9%8B%BC%E6%9D%90%E8%A6%8B%E6%8E%9B%E6%B6%88%E8%B2%BB%E9%87%8F%E5%89%B2%E5%90%882023.11.20.jpg?width=700&height=432&name=%5BJP%5D%5BBlog%5D%E5%9B%BD%E5%88%A5%E3%83%BB%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E5%88%A5%E3%81%AE%E9%8B%BC%E6%9D%90%E8%A6%8B%E6%8E%9B%E6%B6%88%E8%B2%BB%E9%87%8F%E5%89%B2%E5%90%882023.11.20.jpg)
上記のグラフのとおり中国は、”鋼材見掛消費量”においても5割を超える世界シェアがあり、供給面でも世界シェアの5割を越える粗鋼生産量を誇っています。
そのような状況を踏まえ私たちは、国際的な鋼材の需給バランスは受給両面に於いて中国の動向から極めて大きな影響を受ける為、足元で中国に発生している不動産不況による鋼材受給の変化を特に用心深く注視する必要があると考えています。
これからの国内鋼材需要について
日本国内の鋼材需要については、経済産業省の発表によると、2023年10月〜12月の第 3 四半期鋼材需要見通しは、前年同期比では▲0.6%減少で横ばいの見通しとなっています。
以下は、"普通鋼鋼材 部門別国内消費量"の表です。
普通鋼鋼材 部門別国内消費量
参考:経済産業省_2023 年度第 3 四半期(2023 年 10-12 月期)鋼材需要見通し
経済産業省は、「建設部門は、土木分野は前年と同水準の予算を確保しているが、建築分野は中小案件を中心に工期の 中止や後ろ倒しが継続していることもあって、前年同期比では減少する見込み」とコメントしています。
一方で製造業部門は、「自動車業界は半導体等の供給制約が解消されつつある為回復することが期待されていますが、建産機分野等は徐々に減速している事もあり、横ばい」との見通しを示しています。
このような状況を踏まえ私たちは、建築分野の鉄鋼需要は、2024年04月に働き方改革関連法が適用されることで発生する建設業の人手不足やコスト増大などのさまざまな課題、いわゆる”建設業の2024年問題”の影響を受け、来年度は急速な需要回復は見込めないと考察しています。
東京製鐵株式会社が発表した2023年12月の契約価格について
東京製鐵株式会社は2023年11月20日に、"2023年12月契約価格の全品種据置き"と"品種ごとに運賃エキストラの改定"を発表しました。
その際に東京製鐵株式会社は、海外マーケットと国内マーケットの商況についても以下のようなコメントを発表しています。
海外マーケットは、各国における景気持ち直しへの見通しは、未だ続くインフレの影響によりその方向性は確信が持てない状況です。然しながら、エネルギー価格及び主原料価格の高位定着により厳しい採算が続き、一部の鉄鋼メーカーによる値上げ発表の動きが出るなど、鉄鋼製品の取引価格に変化が出ています。特に米国においては足元の鉄鋼価格指標も大幅な値戻しとなり、経済活動の底堅さが垣間見れる状況です。一方中国では、政府による1兆元にのぼる景気対策に期待が寄せられ、中国市況のみならず国際市況の反転に向かうきっかけとなるとの見方も出来ますが、引き続き、中国及び世界の鉄鋼需給の動静を慎重に注視してまいります。
国内マーケットは、建材品種において、足元でも実施計画の縮小や工期の見直しの動きが出ており、鋼材の荷動きは地域により鈍いところもあり、流通における販売姿勢も緩慢な状態にあります。一方で鉄鋼メーカーへは年明け以降の鋼材手配が既に寄せられ、また年内デリバリーを必須とする短納期の注文も続いているため、今後も建設需要は一定の水準で推移すると思われます。他方で2024年問題を目前に控え、輸送コスト並びに人手不足等に起因する諸コストの更なる上昇は避けられ無い状況にあるため、早期の商況好転が待たれます。
鋼材需要の予測をふまえた考察について
これまでに紹介した鋼材需要の見通しをまとめると、"海外は需要が下ブレのリスクがありつつも微増"で"国内は需要は継続的に力強い回復が見込めない"となっています。
つまり、国内の鋼材需要と海外の鋼材需要ともに低位安定する可能性が高い一方で、鉄鉱石や石炭等の国際的な主原料原材料の供給調整が進むことが考えられ、国内の立場からすると「あまり売れている実感がないけれどもインフレであがった鋼材の値段はなかなか下がらない」という状況になるのではないかと考えています。
つまり景気の低迷とインフレーションが同時進行するスタグフレーションの現象が今後も一定期間継続する可能性が高く、経済が目覚ましく回復する可能性は低いということです。
このような状況では、"値段を下げて量を確保する"という方策はバリューチェーンのどの階層に於いても効果が薄く、”必要な分だけ鋼材を購入し、市場の変化に適応する”事を想定し、経済合理性を踏まえた持続可能な商売を行う事が極めて重要だと考えられます。
まとめ
今回は、2024年以降の鋼材の"需要予測"について私たちがまとめた情報とその考察をご紹介しました。
冒頭で説明した通り、国内の鋼材価格は、国内の"需要"や"供給"だけでなく、世界全体の"主原料価格"や"国際相場"等の影響を受け変動する為、今回ご紹介したシナリオとは別の結果になる可能性もありますが、先が見通し辛い状況だからこそしっかり持続可能な商売を確保しつつ、市場の変化に俊敏に適応できる様に身軽にしておく必要があります。
そのような状況下でもし「急な引合いで単管パイプが欲しいけども手に入らない」や、「見込んでいた仕入れが想定外に遅れて困っている」という方々がいらっしゃいましたら、是非お気軽に以下の見積りフォームからご相談頂ければ幸いです。
最後まで読んでいただき、心より感謝申し上げます。これからもみなさまの為になって役に立つ情報を積極的に発信して参りますので、引続きご支援/ご協力を宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。
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