2020.11.25

STXの”しなやかで強い”とは?最大曲げモーメントとたわみについて。

ハイテンパイプを農業用ビニールハウスに実際に使用してみると、パイプが思ったより”しなる”ので、「本当に強いのか?」と疑問に感じた事はありませんか?

ハイテンパイプはそもそも一般のパイプとは素材レベルで特性が異なりますので、同じ力を加えてもそのしなり具合にはどうしても今迄の感覚と差が出てしまいますし、サイズが違えば尚更その点は更に広がります。

今回は私たちの提供しているハイテンパイプ”STX”を使って、農業用ビニールハウスに使用した場合を例に”しなやかで強い”を証明する’最大曲げモーメント’と’たわみ’を、具体的な数値を使って検証したいと思います

ハイテンパイプSTXについてのおさらい

先ずは、STXの特性についてご紹介します。STXは従来材(STK400)に比べ2倍の強度を持つ高抗張力鋼管です。下記の表の通り機械的性質である引張り強さ/降伏点又は耐力/伸び及び設計基準強度は一般鋼管とは随分違う事がご確認頂けると思います。

[JP][Blog]強度たわみ_02

最大曲げモーメントとは?

次に最大曲げモーメントというパイプが耐えられる最大の曲げる力を表す数字をご存知ですか?パイプが耐えられる最大曲げモーメントの計算式は、断面係数に基準強度を乗じて求められます。

パイプが耐えられる最大曲げモーメント[KN・cm] = 断面係数[㎤] x 基準強度[N/㎟]

農業用ビニールハウスの場合、この数値を超える力がアーチや母屋材に加わると、使われているパイプが変形し元に戻らない状態になります。

ここで下記の通りSTXφ25.4x1.2とSTK400φ31.8x1.6を例に最大曲げモーメントを比較してみました。

[JP][Blog]強度たわみ_03

【STXφ25.4x1.2】
 断面係数[㎤] x 基準強度[N/㎟] = 0.53[㎤] x 546[N/㎟]
                    = 0.53[㎤] x 54.6[KN/㎠]
                    = 28.8[KN・㎝] 

【STK400φ31.8x1.6】
 断面係数[㎤] x 基準強度[N/㎟] = 1.09[㎤] x 235[N/㎟]
                    = 1.09[㎤] x 23.5[KN/㎠]
                    = 25.6[KN・㎝] 

STXφ25.4x1.2のパイプはSTK400φ31.8x1.6のパイプと比べてみると、断面係数が劣るものの基準強度が高いので、最大曲げモーメントで比較するとSTXφ25.4x1.2が優れている事が分かります。

つまりSTXφ25.4x1.2の方がSTK400φ31.8x1.6と比べて変形し元に戻らない状態になる数値が高いため、曲げる力に対して総合的に強いという事になる訳です。

たわみとは?

一方でたわみとは下記の図のとおり、風や雪の荷重によりアーチや母屋材に荷重が掛かっている間、一時的にパイプが変形する程度のことを指します。

[JP][Blog]曲げとたわみ_01

同じ寸法の農業用ビニールハウスでは、たわみは部材の断面二次モーメントと掛かる荷重によって決まる為、パイプの引張り強度や最大曲げモーメントには依存しません。

農業用ビニールハウスのアーチの形で計算すると複雑なので、パイプを以下の様な単純な梁材を例に計算式を紹介します。[JP][Blog]強度たわみ_04

上記の場合、中央に加わる力をP[KN]とすると、たわみ”δ”の計算式は以下の様になります。

 δ[mm] = PL3 / 48EI

Eはヤング率[N/㎟]と言われる定数で、鉄のパイプの場合はその材質に関わらず一定の値(205,000[N/㎟])を使用します。Iは断面二次モーメント[㎝4]の事を示しています。
※ヤング率に関して詳しく知りたい場合は、右記のサイトを参考にして下さい。Wikipedia:ヤング率

つまり、掛かる力の条件が同じ場合パイプのたわみ”δ”は、材料の断面二次モーメント”I”が大きくなれば少なく、小さくなれば大きくなる事が分かります。

以下の最大曲げモーメントの比較と同じ表を用いてSTXφ25.4x1.2とSTK400φ31.8x1.6を比べました。

[JP][Blog]強度たわみ_03

上記の表にある通り材料の断面二次モーメント”I”が小さいので、同じ力を加えた場合はSTXφ25.4x1.2の方がたわみが大きくなる訳です。

STXは”しなやかで強い”

次の動画はSTXφ25.4x1.2とSTK400φ31.8x1.6に錘を載せた曲げテストの比較を行なった実験の様子です。

ご覧の通り同じ重さの錘を乗せた際にはSTXφ25.4x1.2の方が大きく曲がっているものの、STK400φ31.8x1.6の方が先に破壊されている事が分かります。

これは同じ重さの錘をぶら下げた場合、STXφ25.4x1.2の方が断面二次モーメントが小さい為、たわみが大きく出てしまうものの、最大曲げモーメントは大きいので破壊されないという事を表しています。

つまりこれがSTXが”しなやかで強い”という事を実際に裏付けている訳です。

まとめ

今回はSTXの”しなやかで強い”について理論的な計算式と動画を用いて紹介させて頂きました。

STXの”しなやかで強い”はパイプを見ただけでは分かりにくいのですが、実際の荷重試験を見て頂くと、その"しなやかで強い”が視覚的に伝わり理解し易くなります。

今回の農業用ビニールハウスにパイプを使用する場合の最大曲げモーメントとたわみについて資料としてまとめましたので、ご興味ある方は是非参考にして下さい。

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また、その他にも農業用ビニールハウスパイプについてお悩みやご相談があれば以下のお問合わせフォームよりご連絡頂ければ幸いです。宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。

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