2025.06.04

”農業用パイプハウス”の風対策は如何に?!倒壊のメカニズムを踏まえた3つの基本的なアプローチをご紹介。

6月に入り日本列島は南から次々と梅雨入りをしていく季節ですが、近年ではその前後から早目に台風が発生し、さまざまな被害の予防や対策に気を揉む時期でもあります。

そして農業用パイプハウス”つまりビニールハウス”で発生する被害のうち、最も多い原因は台風や強風による"風害"であると言われています。

しかし、風に強い"ビニールハウス"を設計したり、既設の"ビニールハウス"を風に強くするためには、どのような方法があり、どう取り組めばいいのかが分からず、悩んでいる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで今回は、”ビニールハウス"が倒壊するメカニズムを簡単に解説した上で、我々なり考えた”風対策”に関してての3つの基本的なアプローチついて解説します。

ビニールハウスが風により倒壊するメカニズム

"ビニールハウス"の側面に強風が吹いた場合は、風上側のパイプには持ち上げる力つまり”引抜き”の力が働き、逆に風下側のパイプには地中へ押し込まれる力つまり”押込み”の力が働きます。

[JP][Blog]日鉄高炉セメント

つまり”ビニールハウス”の内部空間を支えている”アーチパイプ”が倒壊してしまう主な原因は、風上側の”アーチパイプ”に加わる浮き上がる力が加わり”差し込み”が抜けてしまう"引抜き"や、風上側で発生する”押込み”によって加わる曲げモーメントに耐えきれず”アーチパイプ”が壊れてしまう”柱の折れ”などが考えられます。

[JP]パイプハウス風害

”引抜き”の対策について

ビル等の一般的な建築物であれば、構造物自体に十分な自重があり風の力では浮き上がる心配は極めて少ないのですが、”ビニールハウス”は自重が軽い為、この浮き上がりに対して抵抗する措置を施さなければなりません。

もし浮き上がってパイプが地面から抜けてしまった場合、ビニールハウスは強風の力で大きく変形して倒壊してしまうので作物も甚大な被害に繋がります。

従って強風対策には、ビニールハウス”が引き抜かれないことが、”アーチパイプ”の”柱の折れ”と並び、極めて重要になります。

一般的な”ビニールハウス”は、地中差込み式で基礎を使用しないケースが多いかと思います。

”ビニールハウス”の基礎として採用されている代表的な基礎の種類と特徴を調べた所、経済性や施工性の観点で①→③の順番で検討する流れが一般的ですので、参考にしていただければと思います。

①杭やアンカー等

  • 施工機器が必要になる場合もあり、施工費が高額になる場合もある。
  • 地盤強度をベースとした設計計算がし辛く、対象とならない事もある。
  • ビニールハウスの新設後に、追加・調整ができる。

②生コンクリート

  • 施工費を含めると、安価に対応できると言われている。
  • 生コンは製造してから約2時間で固まるので施工作業上の制約が多い。
  • ビニールハウスの新設時以降の追加・調整は極めて難しい。

③コンクリート 2 次製品

  • 施工条件に縛られにくく様々な場所で活用でき、費用もほどほど。
  • 施工の際に、設置位置に精度が求められる。
  • ビニールハウスの新設時以降の追加・調整は難しい。

 ”押込み”の対策について

 ”柱の折れ”につながる”押込み”への有効な対策は、”アーチパイプ”自体を強くする事です。その為には”アーチパイプ”に使用するパイプの径を太くする事や、強度の強い資材である当社のハイテンパイプ"STX (エスティーエックス)"を使用するなどの対策が考えられます。

パイプの径を太くする

パイプ径を太くする事で、”アーチパイプ”の強度を高める事ができます。しかし、パイプの径が太くなる事でハウス内に日陰ができ易い事や、パイプハウスの建設コストが上がってしまうなどの懸念もあります。

規格 外径
[mm]
厚み
[mm]
引張強さ
[N/㎟]
断面二次モーメント
[cm4]
STK400 31.8 1.6 400 1.74
STK400 42.7 1.6 400 1.74

ハイテンパイプ"STX"を使用する

”STX”とは、日本製鉄株式会社と大和鋼管が共同開発をした、従来製品に対しより”しなやか”で”強靭”な特徴を持つ高張力鋼管製品の総称です。

パイプ画像-STX

 

 

鋼管の機械的性質である引張強さ/降伏点や耐力及び設計基準強度は、それぞれ従来材STK400に比べ約2倍以上のレベルに達しています。

”しなやか”とは”柔軟性に優れている”事を、”強靭”は強度と柔軟性が産み出す”復元力がある”事を指しており、これらの特性を活かし”ビニールハウス”の支柱や道路資材、各種構造物等に多く使われています。

規格 外径
[mm]
厚み
[mm]
引張強さ
[N/㎟]
断面二次モーメント
[cm4]
STK400 31.8 1.6 400 1.74
STX(780) 31.8 1.6 780 1.74

風の力を弱める対策

ビニールハウスを風の力に強くする対策以外にも、風の力自体を弱める対策も有効です。

強風への対策の一つとして、"防風柵"があります。防風柵とは、風の影響を減らし、植物が倒れたり"ビニールハウス"が変形や倒壊したりするのを防ぐ柵のことです。

3456478_s

"防風柵"を使用することで、未使用時と比べて体感50〜90%ほど風の影響を抑えられると言われています。具体的な効果としては、設置した"防風柵"の高さの約20倍の範囲まで風を弱める働きがあり、高さ2mのネットの場合には約40m先まで風の勢いを弱めることができます。

一方で、"防風柵"の高さは”ビニールハウス”の屋根面よりも高くする必要があり、取付ける際には工夫や安全面での注意が必要となりますので、作業を行う際は十分お気をつけください。

単管パイプは”防風柵”の材料として使用する事ができます。単管パイプを使用した”防風柵”にご興味がある方は、以下のブログを参考にしてください。
大和鋼管ブログ:"単管パイプ"で作る"防風柵"!農業用ハウスの強風対策をご紹介。

まとめ

今回は、ビニールハウスの風対策について、基本的な3つのアプローチに関して解説しました。

ビニールハウスを風の力に強くするためには、その設計や補強などが必要になりますが、”防風柵”の設置などは比較的容易に行えると言われてますので、これからの強風や突風に不安がある方にとって、活用し易い対策だと考えています。

ハイテンパイプなどの農業用メッキパイプについて、お悩みやご相談のある方がいらっしゃいましたら、以下のフォームよりお気軽にご相談ください。

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最後まで読んでいただき感謝申し上げます。

引続き皆さまへの"為になるお役立ち"に繋がる情報発信を続けて参りたいと思いますので、今後とも宜しくお願いいたします。ありがとうございました。


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