2024.04.24

”STXハウス”は風速50mに耐えうるパイプハウス!?”低コスト耐候性ハウス”と”施設園芸協会の安全構造診断”も含めて詳しく解説。

資材の価格が高騰している中、農業用ビニールハウスのコストを抑えるために、大型の鉄骨ハウスへの投資をパイプハウスへの投資に見直す生産者さまが増えています。

しかし、施設園芸を行う生産者さまは、気候変動による影響で年々激しくなる台風や大雪等の自然災害による農業用ビニールハウスの倒壊や破損等の被害をふまえて、「災害に強い強靭な農業用ビニールハウスが欲しい」と考える方が多いのではないでしょうか?

特にパイプハウスでは使用される部材が鉄骨ハウスと比較して細くなる為、台風や大雪等の災害に耐える"耐候性"が劣る可能性がある点には十分な注意が必要です。

そこで今回は、私たちが得意としている高抗張力鋼管を使用してパイプハウスの強靭化に挑戦した低コスト耐候性ハウス”STXハウス (エスティーエックスハウス)”の取り組みについてご紹介します。

STXハウスの基本性能

”STXハウス”は、間口7.2m/肩高1.8m/アーチピッチ50cm/奥行き:20m~50mの寸法で、耐雪性:50cm耐風性:50m/sの耐候性を持つパイプハウスです。

[JP]20220209_Blog_STXハウス[東栄産業]

アーチパイプと直管パイプである主骨にSTXφ31.8x2.0(700N/㎟級)を採用し、ピッチを従来のパイプハウスと同等の50cmとする事で耐雪性:50cm耐風性:50m/sの耐候性を実現しました。

間口/肩高/アーチピッチ等の寸法には、制約がありますが、遮光性能やフッ素系フィルムの採用といった被覆材の仕様や、ドアや天窓の設置といった妻面の仕様に関しては自由に変更する事が可能です。

”STXハウス”は鉄骨ハウスと比較して同等の強度を持ちながら、サイズ仕様を絞り込む事で、パイプハウスならではの低コストを実現できている訳です。

STXハウスに使用されているハイテン鋼管"STX"について

”STXハウス”の主骨となるアーチパイプや直管パイプに使用されている鋼管は、全て当社のハイテン鋼管"STX (エスティーエックス)"です。

パイプ画像-STX

”STX”とは、日本製鉄株式会社と大和鋼管が共同開発をした、従来製品に対しより”しなやか”で”強靭”な特徴を持つ高張力鋼管製品の総称です。

鋼管の機械的性質である引張強さ/降伏点や耐力及び設計基準強度は、それぞれ従来材STK400に比べ約2倍以上のレベルに達しています。

”しなやか”とは”柔軟性に優れている”事を、”強靭”は強度と柔軟性が産み出す”復元力がある”事を指しており、これらの特性を活かし農業用ビニールハウスの支柱や道路資材、各種構造物等に多く使われています。

農業用ビニールハウスの用途としては、国や地方自治体の補助事業の要件である"低コスト耐候性ハウス"の材料として使用された実績もあります。

当社の”STX”についてさらに詳しく知りたいという方がいらっしゃいましたら、以下のフォームより製品カタログをご確認下さい。

ハイテンパイプSTX資料

低コスト耐候性ハウスとは?

”低コスト耐候性ハウス”とは、一般的に普及している鉄骨補強パイプハウス等の基礎部分や接合部分を、強風や積雪に耐えられるように補強・改良することで十分な強度を確保したハウスであり、同規模・同強度の鉄骨ハウスに比べて大幅に設置コストを抑えた農業用施設のことです。

具体的な”低コスト耐候性ハウス”の条件は以下の2つです。

(1)耐候性

(1-1)風対策

今迄は基本的に風速50m/秒の耐風強度を持つハウスが”低コスト耐候性ハウス”とされていましたが、現在の補助事業要件では一律風速50mではなく、その地域の過去の最大瞬間風速を耐風強度としてもよい事になっています。

(1-2)雪対策

従来は新雪50kg/㎡の積雪に耐えうるハウスが”低コスト耐候性ハウス”とされていましたが、条件が整えば、”園芸用施設安全構造基準の暫定基準”に基づいて、低減措置の適用が可能になっています。

(2)低コスト 

それぞれの地域において従来の方法で上記の耐候性を持つ鉄骨ハウスの本体工事をした場合と比較し、70%程度の費用が抑えられている農業用施設が”低コスト耐候性ハウス”とされています。

リンク:日本施設園芸協会_低コスト耐候性ハウス

施設園芸協会の安全構造診断を実施

”施設園芸協会の安全構造診断”とは、施設園芸用温室・ハウスについて、”園芸用施設安全構造基準の暫定基準”に基づき、施設の安全性について日本施設園芸協会が診断と指導を行うサービスです。

リンク:日本施設園芸協会_安全構造診断のご案内

”STXハウス”は、施設園芸協会が実施している"安全構造診断"を受診しました。

パイプハウスは、ビルや橋梁といった設計技術が確立されている構造物とは異なり、部材を金具/ビスで留めたり地面に差し込んで足場を固める等の不確定な要素が多い構造物です。

その為、パイプハウスの構造計算を行う際には、不確定要素に対し"仮定"を置いて構造計算を行います。私たちは、構造計算を行う設計事務所に協力していただき、様々な仮定を設定し、”STXハウス”の耐風性/耐雪性に関しての理論値を算出しました。

そしてその"仮定"が正しい事を実験等で証明する必要があります。

私たちは、宇都宮大学附属真岡農場の敷地に実際と同じ大きさの”STXハウス”を建設し、耐風性/耐雪性に関する実大実験をそれぞれ行いました。

耐風性の実大実験

一般的に”横風”とも呼ばれる梁間方向の耐風性の実大実験は、水平方向に3.6m離れた地面上にアースアンカーを設置し、そこから載荷点の間にチェーンブロックを取り付けて人力で載荷する方法で行いました。載荷する荷重はチェーンブロック端部に取り付けたロードセルで計測し、その時の水平変位についても計測を行いました。

[JP][Blog]STXハウス実大実験1

また、桁行方向の耐風性に関しても梁間方向と同様の方法で試験を行なっています。

[JP][Blog]STXハウス実大実験2

耐風性の実大実験の結果は、設計用風荷重(風速50m/s)を超えても剛性の大きな変化は見られず、耐力は十分満足する事が確認されました。また、桁行方向に関しても設計用風荷重までは剛性の大きな変化は見られず、耐力は十分満足する事が確認されました。

耐雪性の実大実験

耐雪性の実大実験に関しては、アーチパイプにチェーンを取り付け、その先端に1つ6kg(積雪10cm相当)の砂袋を段階的に増やしながら吊り下げる方法で行いました。

[JP][Blog]STXハウス実大実験3

耐雪性の実大実験の結果は、設計用積雪荷重である積雪50cmを超えても剛性の大きな変化は見られず、耐力は十分満足する事が確認されました。

実大実験から安全構造診断が終了するまでの流れ

これまでの構造計算の結果と実大実験の結果を安全構造診断委員会に提出し、構造計算の中身や実大実験の結果について質疑を受け回答や説明を複数回行いました。

その結果、”STXハウス”の構造計算書や当社が設定した"仮定"や"証明"の内容等について客観的に評価され、その理論が正しいことが認められました。

STXハウスはこんな方にオススメ!!

”STXハウス”は耐候性に特化したパイプハウスです。その為、他の一般的なパイプハウスに比べると、風速50m/秒や新雪50kg/㎡の耐候性を実現する為に、コストが若干高くなっている、大型ハウスと比較すると内部の空間が若干狭くなっているといった特徴があります。

その様な点を踏まえて”STXハウス”は、以下のような方々にオススメします。

できるだけ安く、さらに農業用ビニールハウスに耐候性を求める方

”STXハウス”は、様々あるパイプハウスの中でも高い耐候性を持ちます。そのため「耐候性を求めて大型ハウスの導入を検討しているが、予算が足りない」や「パイプハウスの予算内で、できる限り耐候性の高いハウスが欲しい」と言った方々の期待に応えます。

耐候性の高い簡易的な農業用の倉庫が欲しい方

”STXハウス”は、地盤条件によりますが、基礎工事を伴わずに、基礎工事をした倉庫と同じような頑丈な作りが実現できます。実際に宇都宮大学附属農場の乾草を保管する倉庫に採用された実績があります。

”STXハウス”の農業用倉庫としての実績を詳しく知りたい方がいらっしゃいましたら、以下のリンクより事例紹介をご確認下さい。

リンク:農材ドットコム_事例紹介_倉庫にも負けない強度で安心 大和鋼管のSTXハウスを倉庫に活用する宇都宮大学附属農場

まとめ

今回は、私たちが得意としている高抗張力鋼管を使用してパイプハウスの強靭化に挑戦した 低コスト耐候性ハウスである”STXハウス”についてご紹介しました。

”STXハウス”についてご興味がある方がいらっしゃいましたら、当社がSTXを販売している近隣の農業資材販売店をご紹介しますので、以下のフォームよりお気軽にご相談ください。

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最後までお読み頂き感謝申し上げます。これからも読者の皆さまの”為になり、役に立つ“情報を共有して参りますので、引続き宜しくお願い致します。ありがとうございました。


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