2021.06.16

半導体が鍵を握る?今後の国内鋼材市況について。

2021年6月現在、中国では一時的な調整局面が発生しましたが、日本のみならず世界の鉄鋼業界で歴史的な値上げ及び価格の高止まりが続いています。

以前のブログでも紹介しました通り、中国を追って欧米を中心にCOVID-19から回復する過程に於ける鋼材需要の増加と、中国を筆頭に環境政策の一環として自国の粗鋼生産を抑える事による供給の減少により、世界中で需給バランスが崩れている事がこの背景にあります。

また同時に世界的な"半導体不足"という話題をよく耳にする機会が増えました。実はこの"半導体不足"も国内鋼材市況に少なからず影響を与える可能性があると私たちは考えています。

今回は、私たちも注目している世界的な"半導体不足"が国内鉄鋼市況に与える影響について私たちの認識をご紹介いたします。

半導体不足の原因は?

需要面では、コロナの影響による巣ごもり需要で、パソコンや"プレイステーション5"等のゲーム機の家電類の需要や第5世代(5G)移動通信システムの普及に伴い、半導体の需要が急増しています。

供給面では、米中対立の関係により、中国の半導体製造企業への発注が少なくなり、台湾等の半導体製造企業に発注が集中している事や、国内の半導体製造工場で発生した2件の火災の影響で、供給が急速にタイトになっています。

この様に需要は増えているが、供給が追いつかないという現象により世界中で”半導体が不足している!”と認識されている訳です。

自動車産業の半導体不足は更に深刻?

また自動車の様々な部分でも半導体は使用されています。みずほ銀行の2019年の調査によると、ガソリン車1台当たりの半導体搭載金額は約200ドルと報告されており、これが電気自動車になれば倍以上になると言われている様です。

そしてコロナが猛威を奮い始めた頃に自動車業界は需要の大幅な減少に伴い生産を極端に減らした為、家電等の他産業との半導体を仕入れる競争に於いて劣勢になりました。

更に今年3月に大規模な火災が発生した日本の半導体メーカーの"ルネサス エレクトロニクス"は、世界の半導体生産に占める割合が約6%あり、特に自動車業界にとっては最大規模の半導体供給メーカーであった為に、自動車業界の半導体不足はより深刻な状況に陥りました。

自動車の需要が高まる中でも、この様な状況を背景にトヨタ自動車は工場のラインを3~8日間停止する事を06月07日に発表し、およそ2万台の生産に影響を与えるといった事態が発生しています。

鉄鋼業に於ける自動車産業のインパクト

日本鉄鋼連盟の用途別受注統計によると、2019年04月~2020年02月に於ける普通鋼材の内需のおよそ20.7%が自動車向けの為、鉄鋼業は自動車産業の影響を受け易いと考えられます。

[JP][Blog]普通鋼材品種別グラフ

一般社団法人 日本鉄鋼連盟 用途別受注統計より

 

今後の半導体の動向は?

一方で、半導体の供給側は逼迫した需給を緩めるべく、生産体制の増強を加速させる動きが活発です。

経済産業省は、半導体を取り巻く環境の変化に対応するため、半導体/デジタルインフラ/デジタル産業の今後の政策の方向性について検討する「半導体/デジタル産業戦略検討会議」を今年の03月に設置し、有識者との意見交換を重ね、"半導体/デジタル産業戦略"を取り纏めました。

"半導体/デジタル産業戦略"の中で、半導体産業の強化の為に以下の4つが個別戦略として策定されています。

  1. 先端半導体製造技術の共同開発と生産能力確保
  2. デジタル投資の加速と先端ロジック半導体の設計・開発の強化
  3. グリーンイノベーション促進
  4. 国内半導体産業のポートフォリオとレジリエンス強靭化

また先述の"ルネサス エレクトロニクス"は、自動車向けの主力製品の出荷を07月上旬以降に火災前の水準に戻す見込みを立てています。

つまりこれまでの情報を統合すると半導体の供給体制が整った場合、自動車産業が活発になる事で自動車向けの鉄鋼の受注も増え、現在の鉄鋼のタイト化に益々拍車がかかる可能性が大いにありえます。

まとめ

今回は、世界的な"半導体不足"が国内鉄鋼市況に与える影響について私たちの分析と統合をご紹介させていただきました。

歴史的な鋼材の値上げが進んだり、高止まりが想定される状況ですが、"半導体不足"の様に他産業の動向によっても、先々で鋼材が手に入りにくくなったり、更なる値上げに繋がる可能性が隠れている事がわかりました。

私たちとしては様々な要因が入り交じる複雑な状況ですが、お客さまと密にコミュニケーションを取る事で、少しでも"為になり役に立つ"情報を提供/発信させていただきたいと考えております。

ご相談や質問等があれば以下のお問合せフォームより遠慮なくお問合せください。引続きよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

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