2022.03.09

ロシア・ウクライナ情勢の影響は如何に?!今後の国内の鉄鋼市況について。

ロシア・ウクライナ情勢の影響によって国際経済はパンデミックから完全に回復することなく更に不透明な要素が増え、今後は更にインフレが加速する懸念が少なくとも足元では深まっています。

具体的には石油/天然ガス/石炭等の"化石燃料"のみならず、白金やパラジウムなどの白金族元素、ニッケルなどの"レアメタル"に関しても、供給が大きく減る事が懸念され価格上昇圧力が高まっており、裾野の広いエネルギー関連の影響のみならず、レアメタルを活用する半導体やハイテク産業への影響も大いに懸念されます。

このように足元では先々の市況が大変見通しにくい状況ではありますが、私たちなりに今ある情報を可能な限り整理整頓した上で、今後の鉄鋼製品の需要/供給の状況を推測し、具体的に足元では"どのような行動をするのが良いか?"を考察しましたのでご紹介させていただきます。

そもそも2022年の鉄鋼需要の見通しは?

そもそも2021年04月15日に世界鉄鋼協会が発表した短期需要見通しでは、2022年度の世界の鉄鋼需要に於いては中国では全ての分野で需要増加が見込まれ、他の先進国では自動車部門や公共工事の分野を中心に需要増加が見込めれる為、2021年と比較して2.7%増加すると言われていました。

 参考:世界鉄鋼協会_Worldsteel Short Range Outlook 2021年4月

一方で国内の鉄鋼需要に於いても2021年12月14日に一般社団法人 日本鉄鋼連盟が発表した"2022 年度の鉄鋼需要見通し"によると、建築部門・自動車部門では増加を見込んでおり、機械部門も設備投資の改善から国内向けも回復すると見られ、鋼材需要も持ち直しが期待されています。
 
 
これらの状況はその後の環境変化を何処まで折込めているかの精査が必要ではありますが、基本的にはパンデミックからの回復を踏まえて2022年の鋼材需要は海外/国内ともに増加すると想定されており、特に自動車分野を中心に高品質な鉄鋼材料を得意とする日本の高炉品の需要は堅調であると想定されます。

一方で鉄鋼供給は環境問題が足枷に?

一方で世界最大の鉄鋼生産国である中国は、2022年03月05日に開幕した全国人民代表大会に於いて、経済の安定を掲げながらも引続きCO2対策を目的に鉄鋼の生産/輸出を抑える方針を打ち出しています。
 
これは中国においての鉄鋼生産の大部分を担っている高炉では、酸化鉄である鉄鉱石を原料に酸素を引きはがすために炭素が用いられており大量の二酸化炭素、つまりをCO2排出する為です。

ご存知のように世界の各鉄鋼メーカーは研究を重ね”ゼロカーボンスチール”の実現に挑戦していますが、現時点では様々な問題/課題を克服する必要があり、直ちに"ゼロカーボンスチール"を大量に生産することが困難な状況です。(”ゼロカーボンスチール”へ挑戦については、過去にブログでご紹介していますので、ご興味のある方は以下のリンクからブログご参照ください。)
 リンク:大和鋼管ブログ_水素で作った鉄が地球を救う?!(・・? 高炉の歴史とゼロカーボンスチールについて。

この様な状況からCO2排出量を削減する為に減産を行う方針は中国のみならず世界各国で継続される可能性が高く、日本国内の高炉メーカーでも同様ですので、供給が直ちに増える可能性は低いと私たちは考えています。

更にロシア・ウクライナ情勢が与える影響は?

冒頭で話題に挙げた通り、ロシア・ウクライナ情勢により鉄鋼業界にも急激なインフレの波が押し寄せている状況で、既に欧州やトルコに於いて、東南アジアなどから輸入する鉄鋼半製品や鉄スクラップの価格が数日間で100ドル以上上昇するなど、鉄鋼市況の暴騰が確認されています。

そして足元で国内電炉メーカーの数社は、鉄スクラップの価格高騰の先行き不透明感が強いためオファーを止め、当面の間オファー止めを継続する方針も打ち出されています。

またウクライナが日本への主な輸出品目である鉄鉱やアルミニウム合金及びチタン鉱やフェロシリコマンガンの供給が現地が戦場化する事で足元で供給の滞りが顕在化する一方で、経済制裁の対象が広がっているロシアの日本への主な輸出品目であるアルミニウム合金や無煙炭も供給も大きく減る事が懸念され鉄鋼製品への影響がどれだけ拡大し継続するのかが心配です。

特に"レアメタル"の添加率の高いステンレス鋼やハイテン鋼などの"特殊鋼"の分野では、より色濃く影響が出てくることが予想され、メーカーが主原料の大幅な値上げを販売価格へ転嫁せざるを得ない状況です。

この様な状況を踏まえると、鋼材のタイト感は今後少なくとも一時的には更に増していく考えられ、その解消は今後の展開次第では長期化する可能性も想定すべきだと思います。

ところが国内の足元の状況は?

ところが国内の自動車メーカーは新型コロナウイルスの感染状況や半導体/部品不足の影響により相次いで生産調整を行っており、その結果として1月末の国内向け薄板3品在庫は2ヶ月連続で増えている状況です

[JP][Blog]薄板3品在庫

 引用:鉄鋼新聞社_統計販価情報_薄板3品在庫

これまでにご紹介させていただいた通り、今後は全世界的なインフレ影響に伴うコスト上昇の影響を受け国内鋼材価格も少なくとも一旦は上昇していく事が想定されますが、足元では在庫が増えている状況である為に、国内鋼材価格は高いポジションを維持しながらも比較的落ち着いています。

まとめ

上記の通りロシア・ウクライナ情勢という突然発生した世界的な緊急事態を踏まえて、見通しにくい今後の鉄鉱市況に関する情報を私たちなりに整理整頓しました。

これらの情報を踏まえると、世界規模で緩やかな需要増が見込まれる一方で、供給面でカーボンニュートラルの取組を念頭に、そもそも鉄自体が大幅な増産ができない状況が一貫して続いている中で、今回のロシア・ウクライナ情勢が勃発した訳ですが、日本とロシアの経済的な繋がりの強さを考えると、日本国内での需要への影響はさして大きくはなく、寧ろ供給面での懸念が大きいように感じられます。

今後はロシア・ウクライナ情勢影響から少なくとも一時的には世界的にインフレ傾向に拍車が掛かると想定されていますので、上記の需要面の状況を踏まえると足元の在庫増は速やかに解消される可能性が高く、更に自動車等の鉄を多く活用する産業の生産状況が回復したタイミングで、国内鋼材のタイト化の傾向が更に顕著に現れる想定も、私たちはしておくべきだと考えています

つまりこの先の鉄鋼市況は一時的にタイトになり価格が上昇する可能性が高いので、比較的に在庫がある状況のうちに既に見えている必要な鋼材の購入は少なからず早めに確保しておいた方が良い一方で、情勢が急激に悪化し急速に需要が減退する可能性も想定した上で、在庫を適正に保ちつつ常に市況の変化に敏感に対応する備えを怠らないようにすべきだと思います。

必要な製品の確保やお急ぎの対応が必要な場合には、引続き可能な限り対応をさせていただきますので、以下のフォームや営業担当者に購入方法や納期/見積等をご相談いただければ幸いです。何卒宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。

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