2021.08.18

水素で作った鉄が地球を救う?!(・・? 高炉の歴史とゼロカーボンスチールについて。

近年台風/豪雨/熱波といった異常気象による自然災害が世界各地で激甚化しており、その要因は地球温暖化による気温上昇と密接な関係があるとされ、特に”温室効果ガス”増加への懸念が注目を集めています。

温室効果ガスの中でも最も割合の高い二酸化炭素に関しては、「世界全体で人為起源による二酸化炭素の正味排出量を、2010年水準から2030年までに約45%減少させ、2050年前後には正味ゼロにしなければならない」とう内容の報告書を国際機関IPCCが2018年に発行しています。

その様な背景から日本でも2020年10月に菅総理が所信表明演説の中で、「脱炭素社会の実現に向け”2050年カーボンニュートラル”を目標とする」事を表明しました。そして多くの日本企業が協力を表明している中、私たちの働く鉄鋼業界も大きな役割を担っています。

そこで今回は二酸化炭素を多く排出している”高炉”の歴史と、日本の鉄鋼業界が新たに取組んでいる”ゼロカーボンスチール”への挑戦について詳しくご紹介させていただきます。

高炉の歴史について (^_^)

”高炉”とは徳利の様な形をしており溶けた鉄である”銑鉄”を作る製銑に於ける中核的な設備です。製銑の基本的な仕組としては、原料となる”鉄鉱石”と石炭を蒸し焼きにした”コークス”を高炉に交互に入れ、2千度以上の熱を吹き込む事で、酸化鉄である鉄鉱石を溶かしながら酸素を取除き鉄をドロドロに解けた”銑鉄”という形で取出します。

昔の鉄器は石を積んで作った炉で加熱をした半固体状の鉄鉱石を、鍛冶屋が取出して鎚で鍛えて作っていた為、多くの量を自由な形に造形することができませんでした。

そこで高温で完全に溶解させ液状にした"銑鉄"を精錬してから”鋼”にする”製鋼”の技術が考案され、鉄鋼の製造工程における”高炉”の役割はとても大きなものになりました。

しかし初期の高炉では森林破壊の問題が懸念されるほど大量の”木炭”を使用していた事が問題になり、製銑の為に木を切ることを禁止する法律が繰返し出される程でした。

そして木炭に代わりになるモノの研究が進み、石炭を蒸し焼きにした”コークス”を高炉に使用するイノベーションの実現により、鉄鋼の生産量は大幅に増大し、蒸気機関の発明と相まって18世紀の産業革命の基盤となりました。

 参考文献:Wikipedia_高炉

鉄鋼業界の目の前にある大きな課題 (^_^;)

地球温暖化の原因の一つでもある”温室効果ガス”の中でも、人為的行為により圧倒的に大量に排出され、地球温暖化への影響度が大きいと考えられているのが”二酸化炭素”と言われています。

これは産業革命以降、石炭/石油/天然ガス等の化石燃料の使用が増えたことにより、大気中に排出される二酸化炭素の量も年々増加しています。

その中でも特に私たちの働く鉄鋼業界は、その生産量の多さから日本の産業界では最も多くの二酸化炭素を排出しています。

表_業界別CO2排出量 出典:・国立研究開発法人国立環境研究所_日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2018年度)(速報値)

鉄鋼は鉄鉱石を原料としており、酸化鉄である鉄鉱石を鉄をするには酸素を引きはがす必要があり、この酸素を引きはがす役割を担う物質として、石炭等の化石燃料に含まれ鉄よりも酸素に結びつきやすい炭素が用いられます。

この反応は鉄鉱石の炭素による”還元反応”と呼ばれ、鉄が生成される際に多くの二酸化炭素も一緒に発生してしまいます。

そして”還元反応”で発生してしまう”二酸化炭素の低減”が、鉄鋼業界にとって最も大きな目の前にある課題となっている訳です。

ゼロカーボンスチールへの挑戦 (^_^)v

上記の課題を解決すべく現在日本の鉄鋼業界で特に積極的に取組みが始まっているのが、”ゼロカーボンスチール”への挑戦です。

これは炭素と同様に酸素と結びつきやすい”水素”の性質を活かし、水素ガスを使って鉄鉱石の還元をする事で、製銑における二酸化炭素発生を無くそうとする試みです。

一方で”ゼロカーボンスチール”の取組みには、下記のような技術や社会インフラの面で多くの課題が存在します。

  • 水素による還元反応は吸熱性の化学反応である為、炉の温度が下がってしまい銑鉄を精製する効率が悪くなる。
  • 爆発性を有する水素ガスを、大量に安全性を担保して加熱をする技術が現在では確立されておらず、技術開発の難易度が高い。
  • 従来の製法では、個体である石炭が鉄鉱石を支えて高炉内の通気性を維持する役割を担っているが、水素は気体であり鉄鉱石を支えられない為に通気性が悪化し、炉内の燃焼効率が悪くなってしまう。
  • 水素ガスは地球上に殆ど自然の状態では存在しないので人為的に作る必要があるが、水素を大量に生成し供給する産業及び社会基盤が未整備である。
  • 水素ガスの生成にはこれ迄は化石燃料がされており、その工程で二酸化炭素が発生してしまう為、カーボンフリーで大量の水素を生成方法が必要になる。

 参考文献:一般社団法人日本鉄鋼連盟_ゼロカーボンスチール特設ホームページ

この様に”ゼロカーボンスチール”への挑戦は、単に炭素を含む”石炭”を”水素”に入れ換えれば良いというのではなく、上記の通り様々な問題/課題を克服する必要があります。

しかし世界の鉄鋼を技術でリードしている日本の鉄鋼メーカー及び鉄鋼業界は、世の中に最も多く存在し広く使われている鉄という素材を活かして人類の持続可能な発展を支える為、日々果敢に”ゼロカーボンスチール”の実現に向け研究開発に取組んでいる訳です。

まとめ

今回は足元で猛威を奮っている自然災害の要因とされる温室効果ガスの中で最も割合の高い二酸化炭素の低減に向け、鉄鋼メーカーが様々な研究を重ね取組んでいる”ゼロカーボンスチール”への挑戦についてご紹介しました。

私たち大和鋼管も微力ながら”よりエコで性能の高いパイプ”の実現を目指し、様々な取組みを行って参りました。

現在も更にハイテンパイプの用途開発を進める事によるカーボン・フットプリントの削減や、主力製品であるポストジンクの内面塗料に含まれる有害物質VOCの削減による環境負荷の軽減等に取組んでいます。

当社のエコなパイプへの取組みについてご質問やご相談等何か御座いましたら、下記ご相談フォームよりお気軽にご連絡いただければ幸いです。以上、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

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