2022.04.13

亜鉛の値段はドコまであがる?!コスト状況の背景と製品価格へのインパクトについて。

三井金属鉱業株式会社は2022年04月11日に、亜鉛の国内相対取引の目安となる建値を引き上げ、過去最高値となる1トン59万8千円としました。同年04月06日にそれまでの過去最高値となる1トン59万2千円を発表したばかりですが、短期間で過去最高値が更新された事になります。

今回は亜鉛の建値が過去最高値となっている背景と単管パイプのコスト上昇に与えるインパクトを計算し、私たちが想定する今後の展開についてご紹介させていただきます。

値上りの背景は電力コストの上昇だけではない

以前のブログでもご紹介しましたが、亜鉛は電解製錬法により亜鉛地金を製造した場合、非鉄金属の中でアルミニウムに次いで電力を消費する金属です。電解製錬法により製造される亜鉛地金1t あたり3,200~3,500kWhの電力を要します。2円/kWhの電気料金が値上げになると、亜鉛地金は1t あたり6,400円〜7,000円のコストアップとなります。

その為足元では地球環境問題の観点やロシア/ウクライナ情勢の悪化から電力のエネルギーコストが高騰しており、世界最大規模の非鉄金属専門の先物取引所であるLMEでも亜鉛の価格は上昇している状況です。

更に国内の亜鉛建値の値上がりに拍車をかけている要因は円安です。相対的な通貨の実力を測る日本円の"実効為替レート指数"は、2010年の年間平均値を"100"とすると2022年2月時点で"82.08"まで下がっている状況で、日本円の実力は低下しています。

足元では対ドルでの円安はさらに急激に進んでいる状況で、2022年02月時点での1ドル115.16円だった状況から、2022年04月11日では1ドル125円台半ばまで到達し6年10ヶ月ぶりの円安水準となっています。

[JP][Blog]為替レート実行為替レート指数png-1

ポストジンクの単管パイプへの影響

そこでココでは亜鉛建値がトンあたり20万円上がった場合、私たちのポストジンクの単管パイプはメートルあたりどのくらいコストが上がるのか試算してみました。

ポストジンク単管パイプ外面の亜鉛付着量:120 [g/㎡]
ポストジンク単管パイプ(1m)外面の表面積:外径48.6[mm] x 3.14 x 長さ1[m] ≒ 0.153[㎡]
ポストジンク単管パイプ(1m)外面の亜鉛付着量:0.153[㎡] x 120[g/㎡] ≒ 18.4[g]
ポストジンク単管パイプ(1m)あたりのコスト上昇:18.4[g] x 200,000[円/t] = 3.68[円]

亜鉛建値がトンあたり20万円上がった場合に、ポストジンク単管パイプはメートルあたり3.68[円]のコストアップすることが分かります。つまり近年もっとも亜鉛価格が安かったトン当たり25万9千4百円(2020年3月時点)での状況から2022年04月11日現在のトン当たり59万8千円では、メートルあたりでは6.23[円]の累積でコストアップしている事になります。

今後の亜鉛価格の見通しについて

これまでに欧州の亜鉛製錬メーカーは、電力等のエネルギー価格の高騰を背景に稼働率を制限してきましたが、LME亜鉛価格が過去最高になった事や在庫減少を受けて、供給を増やす為に稼働率を上げる方針に転換しています。

この取組みにより今後は亜鉛の一定の供給増は見込まれるものの、ロシア/ウクライナ情勢を背景にしたエネルギーコストの上昇分に関しては価格転嫁を行わざるを得ない状況にあり、今後の亜鉛価格は当面高値で推移することが想定されます。

私たちは先ず自ら生産性を更に高める歩留り等の努力をシッカリ行ってコスト削減に取組む一方で、足元で発生している母材の熱延コイルの価格高騰への対応だけではなく、亜鉛市場や副資材の価格動向にも十分注視して、メッキ製品の安定供給に必要な対策を考えていきたいと考えています。

まとめ

今回は亜鉛の建値が過去最高値となっている背景と、それによって生じる単管パイプのコストへのインパクトを実際に計算してみると共に、私たちが今後想定している状況についてご紹介させていただきました。

世界的な物価上昇による先行き懸念によって、日本国内の建材需要は一定レベルで引き締められることが予測される状況ですが、私たちが取組むべきなのは歩留りの改善や機能性の向上等によって製品の提供する経済的な価値を追求する一方で、シッカリと製品の安定供給を実現し、お客さまの事業が滞りなく進むことで少しでも経済の好循環に寄与する事だと考えています。

従って出口が未だ見えない急速なインフレと、ロシア/ウクライナ情勢という急激に変化する可能性のある地政学的リスクが顕著になっている状況を踏まえ、私たちは先々で決まっている必要な鋼材は早目に確保すること、投機的な取組みは避け過剰な在庫を持たないこと、そして常に機敏に状況の変化に対応することをお客さまに提案し、対応して参る所存です。

そして今後更に深刻化が予測される物流コストの上昇や人件費の高騰に対応すべく、ハイテン化によって建材の輸送コストを抑制し、作業効率改善に寄与する取組みにもシッカリと取組んで参りたいと思います。

具体的な案件での見積りをご希望されるお客様がいらっしゃいましたら、以下の見積フォームより気軽にお問い合わせください。引続き宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。

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