2025.07.31

亜鉛メッキの"耐食性"と"付着量"及び"メッキ膜厚"との関係とは?!その違いを詳しく解説。

亜鉛メッキの”耐食性”は、亜鉛の”付着量"または"メッキ膜厚"によって規定されており、公共工事や企業間の取引に於いては、”製品仕様書”に指定されている場合もあるので、その内容と実態を正しく理解しておくことが必要です。

しかし実際には、亜鉛の”付着量"または"メッキ膜厚"は、それぞれの製品で具体的な仕様が異なっている為、製造メーカーに問い合わせなければならないケースもあり、理解する事が容易ではありません。

そこで今回は、亜鉛メッキの”耐食性"と亜鉛の”付着量"及び"メッキ膜厚"に関して、私たちの認識を詳しく解説いたします。今後の案件対応や取引先との遣り取りの参考にしていただければ幸いです。

亜鉛メッキが鉄地を守るメカニズムについて

亜鉛メッキは、主に鉄の表面に亜鉛という”耐食性”の高い金属を使って”メッキ”を施す技術です。亜鉛メッキが鉄地を守るメカニズムには、"バリア効果"と"犠牲防食効果"という2つの作用があります。

亜鉛メッキの”バリア効果”

亜鉛メッキの”バリア効果”とは、亜鉛が鉄の表面を物理的に覆うことで、空気中の水分や酸素、二酸化炭素、塩分などの腐食因子が鉄に直接触れるのを防ぐ働きです。これにより、鉄が錆びる原因である酸化反応が抑えられます。

亜鉛メッキの”犠牲防食効果”

亜鉛メッキの”犠牲防食効果”とは、亜鉛のメッキ層に傷がついて鉄が露出した場合でも、傷の周囲の亜鉛が電子を失って陽イオンになろうとする"イオン化傾向"が鉄よりも大きいという特徴により先に溶け出し、電気化学的に鉄の表面を保護する事で腐食を防ぐ作用のことです。

塗料等の樹脂による被膜は初期状態では良好な耐食性を得る事はできますが、被膜の欠陥や傷がついてしまった場合は露出した鉄に赤サビが発生し"腐食"します。亜鉛による被膜ではこの現象を与えられた条件に応じて回避する事が可能になります。

犠牲防食_図

"腐食速度"と"耐食性"及び"亜鉛付着量"の関係について

亜鉛メッキを施した鋼材の表面の亜鉛は、空気中や水中で”腐食”が進行し少しづつ失われます。その時の亜鉛が”腐食”で失われる速度を"腐食速度"と呼び、同じ様に亜鉛メッキが施されていても、製品が使用される環境によって”腐食速度”は異なります。

亜鉛メッキの”腐食”が進み続けると、表面の亜鉛は完全に無くなってしまい、鉄地が露出して"亜鉛メッキのバリア効果"や"犠牲防食効果"が機能しなくなります。

亜鉛メッキの耐食性及び耐用年数は、上述した亜鉛の腐食速度から表面の亜鉛がなくなってしまう期間を計算で求めた数値で、以下の計算式で求められます。

亜鉛メッキの耐食性[年]=亜鉛付着量[g/㎡]÷ 腐食速度(g/㎡年)× 0.9

参考:一般社団法人 日本溶融亜鉛鍍金協会HP_溶融亜鉛めっきの耐食性

つまり使用する環境が同じ場合には、一般的に亜鉛メッキの”耐食性”は、どれだけ多く”亜鉛”が存在し、どれだけ早く”腐食”がすすむのかで決まってくる為、"亜鉛付着量"が重要である事は明らかです。

"亜鉛メッキの膜厚"と"亜鉛メッキ付着量"の違い

2021年12月20日に”溶融亜鉛めっき”に関する”JIS H 8641や”溶融亜鉛めっき試験方法に関する”JIS H 0401”といったJIS規格が改正されました。

改正前は、規格に該当する製品の”単位面積あたりに何グラムの亜鉛が付着しているか”である”亜鉛付着量”を基準として”HDZ△△”と表記されていました。

そして改正後は、”表面にどのくらいの厚さの亜鉛が付着しているか”である”亜鉛メッキの膜厚”が基準になることに変更され”HDZT◯◯”と表記される様になり、”HDZT"の”T”は、英語で厚さを意味する"Thickness"の”T”です。

 

[JP][Blog]メッキ厚

この規格の変更に伴って、いままで”直接法”や”間接法”の付着量試験で得られる亜鉛付着量[g/㎡]は、以下の計算式を用いて、亜鉛付着量[g/㎡]を膜厚[μm]に換算する必要があります。

膜厚[μm] = 亜鉛付着量[g/㎡] ➗ 7.2(亜鉛の密度[g/㎤])

メッキパイプの規格"HDZT◯◯"や"Z◇◇"について

メッキパイプの耐食性を表す規格として、"HDZT◯◯"や"Z◇◇"という規格があります。

"HDZT◯◯"は”溶融亜鉛メッキ”の規格でパイプに限らず様々な鋼材に使用されていますが、"Z◇◇"は”亜鉛メッキ鋼板”の規格であり、メッキパイプに於いては、製品の母材として使用される”亜鉛メッキ鋼板”の規格を指します。

溶融亜鉛メッキの規格"HDZT◯◯"

"HDZT"は、上記のとおり従来"HDZ"とされていた溶融亜鉛メッキの後継の規格であり、”鋼管”に限らず”ネジ”や建築物に使用する大きな”柱”など、様々な鋼材に”耐食性”の向上を目的に施す”溶融亜鉛メッキ”の品質面での有効性を規定しています。

改正後の規格はHDZT +膜厚を表す数字で規格が分類されていますが、メッキ鋼管の場合にこの"膜厚"は外面若しくは内面のどちらか一方の膜厚を指します。

また鋼管を”溶融亜鉛メッキ”する際に、メッキ浴槽での浸漬時間が長くなると、同じメッキ厚でも鉄と亜鉛が混じる合金層が発達し、”耐食性”が異なってくる点には注意が必要です。

例:HDZT35の膜厚

[JP]HDZTの解説

 

記号の種類 膜厚[μm] 旧記号

付着量[g/㎡]

HDZT 35

35以上

HDZ A

※250以上

HDZT 42 42以上 HDZ B ※300以上
HDZT 49 49以上 HDZ 35 350以上
HDZT 56 56以上 HDZ 40 400以上
HDZT 63 63以上 HDZ 45 450以上
HDZT 70 70以上 HDZ 50 500以上
HDZT 77 77以上 HDZ 55 550以上
※平均めっき膜厚の平均から算出

亜鉛メッキ鋼板の規格"Z◇◇"

前述のとおり"Z◇◇"は鋼管の規格ではなく、溶融亜鉛メッキ鋼板のJIS規格すので、メッキ鋼管として”Z27”と指定されている場合は、"Z27のメッキ鋼板を使用した先メッキパイプ"を意味していることになります。

またこの規格は”Z + 付着量”を表す数字で分類されていますが、メッキ鋼管の場合にこの"付着量"は、外面と内面を足し合わせた付着量を指しています。

更に下記の表にあるとおり、片面における亜鉛メッキの”1点最小付着量”は、両面で合計した”付着量”の規定値の40 %以上であることが望ましいと規定されています。

例:Z27のメッキの付着量

[JP][Blog]めっき鋼板付着量解説

 

めっき区分

めっきの付着量表示記号

3点平均最小付着量
[g/㎡]

1点最小付着量
[g/㎡]

非合金化めっき Z06 60 51
Z08 80 68
Z10 100 85
Z12 120 102
Z14 140 119
Z18 180 153
Z20 200 170
Z22 220 187
Z25 250 213
Z27 275 234
Z35 350 298
Z37 370 315
Z45 450 383
Z60 600 510

当社のポストジンクとパーフェクトポストジンクの耐食性について

私たちの"ポストジンク"とパーフェクトポストジンクは、何れも当社独自のメッキパイプ製造方法と品質管理に基づき製品化され生産しており、亜鉛メッキの品質は”片面の亜鉛付着量”で管理しています。

社内規格 ※片面の亜鉛付着量[g/㎡]
110Z 110±20
120Z 120±20
150Z 150±20
200Z 200±20
250Z 250±20
300Z 300±20
※亜鉛付着量の許容差の上限は、製造状況により上回る場合があります。

ポストジンク

[JP][Blog]パイプ画像PZ

 

 

”ポストジンク”とは、外面に全周均一メッキとその上に防錆樹脂コーティング、内面は水性亜鉛無機コーティングミズエコを施した溶融亜鉛メッキ鋼管です。

[JP][Blog]ポストジンク断面図作成

特に”ポストジンク”では、外部との物的な接触が頻繁に起こる可能性がありより高い耐食性が求められる鋼管の外面に、全周溶融亜鉛メッキよって溶接部分にも均一にメッキが施されている為、先メッキパイプで起こりがちな”溶射部からの赤サビ”が発生しません。

一方で、外面に比べ物的な接触が起こる可能性が低い鋼管の内面には、亜鉛をふんだんに含みんだ無機性の処理剤である"ミズエコ"使用し内部の溶接部分もカバーすることで、サビに強く地球環境に優しいメッキパイプを実現しています。

[JP]ポストジンクと先メッキ

これらを踏まえ、当社の”ポストジンク”の社内規格と、"Z◇◇のメッキ鋼板を使用した先メッキパイプ"の外面の耐食性との相関を纏めると以下の表の様になります。

ポストジンク

先メッキパイプ

110Z Z22と同等
120Z Z22以上Z25未満

150Z

Z27以上Z35未満

200Z Z37以上Z45未満

250Z

Z45以上Z60未満

300Z

Z60と同等

上記を踏まえると、当社の”単管パイプ”の外面の仕様は110Zで、耐食性は"Z22のメッキ鋼板を使用した先メッキパイプ"と同等、一方で”スーパーライト 700"の外面の仕様は120Zで、耐食性は"Z22のメッキ鋼板を使用した先メッキパイプ"以上、"Z25のメッキ鋼板を使用した先メッキパイプ"未満になっていることが確認できます。

パーフェクトポストジンク

パイプ画像-PPZ

 

 

"パーフェクトポストジンク"とは、外面に全周均一メッキとその上に防錆樹脂コーティング、内面にも溶融亜鉛メッキを施した溶融亜鉛メッキ鋼管です。

[JP][Blog]パーフェクトポストジンク断面図作成
”パーフェクトポストジンク”の外面は、全周溶融亜鉛メッキで赤サビを防ぎ、内面は”犠牲防食”の効果で内面溶接ビード部からの赤サビ発生を防ぐのが基本的な仕様ですが、必要に応じて内部の溶接部分を塗装・処理剤等でカバーする製品の検討も可能です。

[JP]パーフェクトポストジンクとドブメッキ鋼管

更に当社独自のメッキパイプ製造方法により、メッキ層中の”合金層”が薄く”耐食性”に有効な”純亜鉛層”の割合が大きくなる為、"ドブメッキ鋼管"と比較し、より少ない”亜鉛付着量”で同等以上の”耐食性”を実現しています。

”合金層”と”純亜鉛層”について詳しく知りたい方がいらっしゃいましたら、以下の当社ブログを参考にしてください。
大和鋼管ブログ_なるほど!!!合金層が分ける亜鉛メッキの防錆性能と特性。

また”ドブメッキ鋼管”は、外面と内面の亜鉛メッキ付着量をそれぞれコントロールすることが技術的に難しいですが、当社のパーフェクトポストジンクは、外面と内面の付着量をそれぞれコントロールする事が可能です。

これらを踏まえ、当社の"パーフェクトポストジンク"の社内規格と、"ドブメッキ鋼管”の新記号”HDZT◯◯”及び旧記号"HDZ △△”との相関を、外面の付着量を元に纏めると以下の表の様になります。

パーフェクトポストジンク ドブメッキ鋼管 (新記号) ドブメッキ鋼管 (旧記号)
120Z HDZT 49 HDZ 35
150Z HDZT 56 HDZ 40
200Z HDZT 63 HDZ 45
250Z HDZT 70 HDZ 50
300Z HDZT 77 HDZ 55

まとめ

今回は、亜鉛メッキの”耐食性"と亜鉛の”付着量"及び"メッキ膜厚"について詳しく解説しました。

当社の製品は、お客様のニーズに合わせて亜鉛付着量を調整し耐食性を実現する事ができるので、要求される性能を確保した上で、コスト削減を追求することも可能です。

ご興味のある方は以下のお問合せフォームよりお気軽にご相談ください。新規CTA

最後まで読んでいただき感謝申し上げます。何かご質問や要望等があれば、何時でもご遠慮なく連絡ください。引続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。


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