2021.08.04

鋼材市況もワクチン次第?!各国のワクチン接種状況と経済・鋼材市況への影響。

2021年07月29日に初めて日本国内の新型コロナウィルスの一日当たりの感染者が1万人を超え、デルタ株が猛威を奮い感染が拡大しています。

世界的にも新型コロナウィルスの感染はデルタ株の影響で再度拡大傾向にあり、多くの産業がこの影響を受け、世界経済にも鋼材市況にも大いに変化を及ぼすと考えられます。

今回は足元の新型コロナウィルスの感染状況の変化を鑑み、世界とアジアのワクチン接種の進捗状況を詳しく確認した上で、今後経済や鋼材市況に与える影響について考察させて頂きます。

新型コロナウィルスの感染状況

世界的な新型コロナウイル感染者は2021年08月02日の時点で累計1億9,834万人となりました。最も感染者の多い米国は累計で3,500万人で、続いて2番目に多いインドは3,170万人です。

米国では、2021年06月に一日の感染者数が1万人以下まで低下しましたが、7月以降は一日あたり1万を超える感染者数となり、増加に転じています。これは昨今報道されているとおりデルタ株の影響が大きく、ワクチン接種率目標に辿り着き集団免疫を達成しつつある中で、新たな局面を迎えています。

一方でまだまだ欧米に比べるとワクチン接種が進んでいないアジア各国でも感染力が強いデルタ株が広がっており、タイやベトナムでは最大都市で地域医療を圧迫する状況が発生し、事実上のロックダウンに踏切っている状態が発生しています。

世界及びアジアでのワクチンの接種状況

では今後の世界経済の動向を考える上で鍵となるワクチンの接種状況はどうなっているのでしょうか?

全世界のワクチンの接種状況は、2021年07月末の時点で41.8億回、抗体ができる迄に必要な回数を接種した人が11.4億人で世界の人口の14.7%です。

今迄は集団免疫を達成するのに約70%のワクチン接種率が必要と言われていましたが、デルタ株の影響によって約80%必要との見解がでてきており、何れにしても世界全体としてはまだまだ長い道のりと言えます。

また国や地域によりワクチン接種の進み具合にバラツキがでている事も顕著であり、この事が世界や各国の経済に及ぼす影響が懸念されます。

2021年08月01日時点でワクチンを少なくとも一回接種した人の割合を確認すると、欧米諸国ではカナダで71.8%、イギリスで69.0%、フランスが63.0%、ドイツが61.3%、アメリカで57.35%と此方も何れも高い水準で着実に集団免疫に近づいている事が確認できます。

一方で比較的ワクチン接種が遅れていると言われているアジアの地域にのワクチンの接種状況の状況を、2021年08月01日時点でワクチンを少なくとも1回接種した人の割合が多い順で以下の様に表に纏めてみました。

ワクチン接種率_表(修正)

出所:英オックスフォード大学”Our World in Data”_https://ourworldindata.org/covid-vaccinations?country=OWID_WRL

・累計接種回数(万)、 1回接種した人の割合(%)、 接種が完了した人の割合(%)のカッコ内の数値は、前週比。
・(-)は前週データなし。
・本データは8月3日時点での最新データのものを使用。

トップを走っているシンガポールは人口約570万人の小国ですが、戦略的且つ積極的なワクチン外交で欧米に引けを取らないレベルを実現しています。

2位と3位は意外に思われるかもしれませんが、カンボジアは人口は約1,650万人でワクチンを中国/インドから調達、マレーシアは人口が約3,200万人でワクチンを米英中から調達していますので、人口の大きさとワクチン外交を勘案すると納得できる結果に様に思います。4位の香港も人口が約750万人でワクチン供給の多くは中国からです。

5位の中国は当然全て中国製のワクチンですが、人口が約14億とダントツに大きいので、欧米には及ばないものの驚異的なレベルでワクチン接種の普及に取組んでいると言えます。またもう一つの人口大国であるインドはこの表には含まれていませんが、2021年08月01日時点でのワクチンを少なくとも1回接種した人の割合が26.7%ですので中国とは大きく差が開いています。

そして日本は現状6位になっていますが、ワクチンは何れの欧米製のみで人口も約1億2,630万人ですので、かなり頑張っていると言えるのでは無いでしょうか?また国内の一日あたりワクチン接種は約90万回以上ですので、アジアの中でも現状3番目のペースになっています。

一方でタイは人口が約6,960万人で少なくとも1回接種した人の割合が17.6%、ベトナムに於いては人口が9,650万人で約少なくとも1回接種した人の割合が5.9%ですので、日本に比べてもワクチン接種の進行状況は大きく遅れており、また接種の増加ペースも伸びが比較的小さいので、両国が日本の自動車メーカーへの部品供給を行なっている事を考えると少し心配な状況です。

今後の鋼材市況への影響について

以前のブログでご紹介致したとおり、自動車向けの鋼材需要が旺盛になる事で国内の鋼材が供給不足になる可能性が想定されていましたが、この状況も日本のみならず各国のワクチン接種の進行状況の影響を受ける事が考えられます。

リンク:半導体が鍵を握る?今後の国内鋼材市況について。

2021年07月の国内の新車販売台数はおよそ37万台で、昨年に比べて4%減となっています。これは以前ご紹介した半導体不足の影響に加え、デルタ株が東南アジアで急拡大し都市や工場が閉鎖され自動車メーカーが部品を調達できなくなり、自動車の生産に影響を及ぼしたと推察されます。

加えて世界最大の粗鋼生産国でその約6割を担う中国は、環境問題への対応として以前から減産の方針を示していましたが、2021年06月から実際に前年より少ない生産結果となっており、減産が実際に進んでいる事が伺えます。

更にワクチンが普及するにつれて、経済活動が活発になり、今までに経験した事のない世界的な鋼材のタイト化が更に進行する事が考えられるますが、一方で各国のデルタ株の影響及びワクチン接種の進行具合によって経済活動の減速し、供給/需要両面へどの様な影響を及ぼすかは判断が難しいところです。

まとめ

今回は新型コロナウィルスのワクチン接種の進捗状況をアジアを中心に詳しく確認した上で、今後の鋼材市況に与える影響について考察をしてみました。

ワクチン接種は欧米諸国を中心に集団免疫に近づく国もありますが、世界全体としてはまだまだ進んでいませんし、暫く時間を要する事は明らかです。

また比較的ワクチン接種が遅れていると言われるアジアでも国により大きな差がある事が確認でき、進んでいる国や地域とそうでない国や地域では、新型コロナウィルスのデルタ株が経済に及ぼすインパクトの大きさにかなり差がでる事が想定されます。

一方で半導体の様に裾野が広い産業や自動車の様にグローバルに調達や分業をしている産業では、工場がどの国や地域にあるのかによって大きく影響を及ぼしたり受けたりするので、とても判断が難しくなっている認識です。

基本的には現時点で世界の6割の鉄の生産を担っている中国が環境対策としての減産及び輸出制限の傾向を強めているので供給はタイト化し、歴史的な鋼材価格の高止まりの傾向は継続すると考えられます。

しかし更にこの状況が更に深刻になるのか、デルタ株の影響による経済活動の低下で緩和されるのかはとても微妙な状況だと思いますし、ワクチン接種の進行状況が複雑に影響を及ぼすと我々は考えております。つまり状況はとても複雑であると同時に刻一刻と変化していくと思われます。

ですので我々は兎に角経済及び業界への全体性への感性を更に高めながら、各々のお客さま状況を現場/現実/現物で更にシッカリ把握させて頂き、可能な限り為になり役に立てる様に頑張って参りたいと考えております。

今後とも不透明な市況環境が続く事が想定されますが、メッキパイプの供給状況や価格動向に関してご質問や相談がある場合には、お問合せフォームよりお気軽にご相談頂ければ幸いです。引続き宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。

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