2025.03.12

”グリーンスチール”で”脱炭素”に貢献?!知っておきたい基礎知識と国内メーカーの製品について。

近年、地球温暖化対策への意識の高まりと共に、”グリーンスチール”という言葉を耳にする機会が増えています。

2025年02月26日には、世界鉄鋼協会による鉄鋼業の温室効果ガス管理に関するガイドラインの発行を受け、日本鉄鋼連盟が”グリーンスチールに関するガイドライン”第3版を公表しました。”グリーンスチール”は、鉄鋼業界の世界的な動向を反映した、今まさに知っておくべきキーワードといえます。

そこで今回は、”グリーンスチール”について分かりやすく解説すると共に、日本のメーカー5社が販売している具体的な製品をご紹介します。

”グリーンスチール”の概要

[JP]二酸化炭素

”グリーンスチール”とは、CO2等の”温室効果ガス”の排出量を削減した方法で製造された鉄を指します。”グリーン鋼材”や”ゼロエミッションスチール”及び”低炭素鋼”と呼ばれる事もあります。

日本で一般的な製鉄方法は、”高炉”を使用し、酸化鉄である”鉄鉱石”と石炭を蒸し焼きにした”コークス”で還元処理するもので、エネルギー効率が高く上質な鉄を製造できる一方で、大量のCO2を輩出してしまいます。

そこで、鉄スクラップ”を活用した”電炉”による製鉄を筆頭に、”CCUS”と呼ばれるCO2を回収/貯蓄/利用する技術や、”コークス”に含まれる”炭素”の代わりに”水素”を還元剤として使用する”水素還元製鉄”等により、CO2の発生を抑えて製造される”グリーンスチール”が期待を集めています。

 関連ブログ:”グリーンスチール”って何?!”水素還元製鉄”を中心に鉄鋼業界の脱炭素化の取り組みを紹介。

https://www.photo-ac.com/main/detail/23239194&title=巨大製鉄所の早朝風景

ただし、”電炉”以外によるこれらの技術は、まだまだ発展途上であることから、現在流通している高炉で製造される”グリーンスチール”には、主に”マスバランス方式”という仕組みが適用されています。

”マスバランス方式”は、”物質収支方式”とも呼ばれ、製造の加工・流通過程において特性の異なる原料が混合される場合に、ある特性を持つ原料の投入量に応じて、生産する製品の一部にその特性を割り当てる手法を指します。鉄以外では、パーム油・紙・バイオマスプラスチック・カカオ等、既に様々な業界で適用されています。

高炉で製造される”グリーンスチール”においては、企業が社内や工場でCO2等の温室効果ガス排出削減対策を行い、その成果である削減量を任意の製品に割り当てます。削減量は、第三者検証を受けて発行される削減証書によって担保されます。

CO2排出削減技術が広く実用化され、リアルな”グリーンスチール”が、普遍的且つ安定的に供給されるまでにはまだまだ時間が掛かるので、”マスバランス方式”によってこの移行期をつなぎ、温室効果ガス排出削減の期待に応えようという訳です。 

日本のメーカー5社のグリーンスチール製品

それでは、実際に販売されている”グリーンスチール”には、どのような商品があるのでしょうか。日本のメーカー5社が取り扱っている製品を紹介します。

東京製鉄:ほぼゼロ

"ほぼゼロ"は、東京製鉄が2024年に販売開始した電炉材です。国内最大手の電炉メーカーとして、製造時のCO2排出量が少ない電炉材を扱える強みを活かすと共に、化石燃料を使わずに発電したCO2排出量削減の効果を証明する"非化石証書”を付与し、言葉どおりCO2排出量が”ほぼゼロ”である事を謳っています。

現時点では、主に建設部材やプリンティング製品に採用されており、資材と製造に関わる他企業と連携し、”グリーンスチール”活用の取り組みを進めています。

 参考:東京製鐵のグリーン鋼材 「ほぼゼロ」(東京製鐵株式会社)

大和工業:+Green™(プラスグリーン)

"+Green™(プラスグリーン)"は、大和工業の連結子会社であるヤマトスチールが2024年に販売開始した電炉材です。

物流施設の建材にも採用されているこの製品には、自然/森林由来の"カーボンクレジット"及びバイオマス発電由来の"再エネ電力証書"が使われているのが特徴です。

"カーボンクレジット"とはCO2等の温室効果ガスの削減量を売買できるようにしたもので、自助努力で削減し切れない部分について、他の温室効果ガスの削減活動に投資等をして埋め合わせる方法の1つです。

また、"再エネ電力証書"は、再生可能エネルギーで発電された電気の環境価値を証明する証書の事で、前述した”非化石証書”もこの一種です。

 参考:+Green 環境配慮型鋼材ブランド(大和工業株式会社)

神戸製鋼所:Kobenable® Steel(コベナブルスチール)

”Kobenable® Steel (コベナブルスチール)”は、神戸製鋼所が国内で初めて商品化した”グリーンスチール”です。自動車用鋼板や特殊鋼線材、建築用鋼板、船舶用鋼板等で採用されています。

”マスバランス方式”を適用しており、”高炉”での製鉄プロセスにおいて、材料として既に還元済みの直接還元鉄(HBI:Hot Briquetted Iron)を用いてコークスの量を削減し、CO2の発生を従来の方法よりも抑えています。

 参考:Kobelable® Steel(株式会社 神戸製鋼所)

JFEスチール:JGreeX®(ジェイグリークス)

”JGreeX®(ジェイグリークス)”は、JFEスチールが2023年から供給を開始している”マスバランス方式適用の”グリーンスチール”です。

橋梁工事や産業用機器等に採用されており、2024年09月には"JGreeX®"を全量使用したドライバルク船 (乾貨物専用貨物船)が就航。”グリーンスチールのみを使用した世界で初めての船舶として注目を集めました。

2025年01月には、鋼管・管材商社向けにも販売が決定しています。

 参考:グリーン鋼材 “JGreeX®”について(JFEスチール株式会社)

日本製鉄:NSCarbolex® Neutral(エヌエスカーボレックス ニュートラル)

"NS Carbolex® Neutral(エヌエスカーボレックス ニュートラル)"は、日本製鉄が2023年から販売開始した製品です。”マスバランス方式”適用の”グリーンスチール”で、日本製鉄自身のCO2削減プロジェクトの成果が割り当てられています。

量産車や物流施設の鉄骨等に採用されている他、シンガポールの大手鋼管問屋であるHUPSTEEL社への販売も決まっています。

 参考:NSCarbolex® Neutralとは ~ 脱炭素社会の実現に必要不可欠な鉄鋼製品 ~(日本製鉄株式会社)

まとめ

今回は、日々進化を続ける”グリーンスチール”についてお伝えしました。

”グリーンスチール”はまだ発展途上の技術であり、コストや品質等の課題も残されています。しかし、世界的に脱炭素化の取組みが推進される中で、その重要性はますます高まっていくでしょう。

今この瞬間も、各企業が”グリーンスチール”の技術開発/提供を進めています。技術発展が進み、それぞれの特徴や強みを持った製品が登場し、様々な分野で活用されていく事が期待されます。

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例えば、”GX”や”カーボンニュートラル”について詳しく解説している記事はこちらです。

関連ブログ:”GX”と”カーボンニュートラル”の違いはナニ?!日本の鉄鋼業界の課題と対応について。

また、”カーボンニュートラル”の実現において重要な”鉄スクラップ”について、3回に渡って詳しく解説したシリーズもございますので、これらの記事もぜひ併せてご覧いただければ幸いです。

関連ブログ:鉄スクラップシリーズ
【第1回】"鉄スクラップ"は"脱炭素"に有効?!カーボンニュートラルに繋がる知っておきたい再生資源の基礎知識。
【第2回】世界の"鉄スクラップ"事情や如何に?!各国の動向をわかりやすく解説。
【第3回】"鉄スクラップ"を更に活かす技術の進化とは?!"脱炭素"や"カーボンニュートラル"を支えるテクノロジーをご紹介。

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