2023.12.20

"0災害の追求"で我々は何を見過ごしたのか?

大和鋼管中村です。安全ブログの開始にあたり、多くの反響や具体的な励ましのお言葉を頂けた事に心より感謝申し上げます。

事故から日が経っていない状況下での安全に関する情報発信については、社内からもその必要性やタイミングに関して、色々と懸念する声もありました。

そんな中で前回のブログ配信の結果として今迄にない反応を頂けた事は、我々の安全に関する経験/知見を少しでも多くの方々に知って頂き、具体的に世の中全体としての"0災害の追求"に繋げていく取り組みを進める上で、大いに勇気づけられた次第です。

一方で、まだまだ回復過程にある操業状態や、お客さま/取引先の皆さまのご期待に対し、商売の面で十分に対応できていない事を十分に認識する必要があると考えております。

今後ともシッカリと読者の皆さま及び仲間一人ひとりへの配慮を怠ることなく、この安全ブログの配信を続けて参る所存ですので、何かお気づきの点や質問/提案/リクエストがございましたら、ご遠慮なく率直なフィードバックを頂ければ幸いです。

本件に関するご質問/ご提案/リクエストはこちら

前回のブログで、当社は2014年2月に起きた一度目の死亡事故から、様々な形で積極的に"0災害の追求"に取り組んでいたにも関わらず、10年も経たない2023年11月に二度目の事故が発生してしまった旨を共有させて頂きました。

"0災害の追求"の徹底にも関わらず、何故、二度目の事故が起きたのか?

まだまだ様々な分析/統合が必要ではありますが、私自身はその理由の一つとして、我々の"0災害の追求"自体に"盲点"があったと考えています。

労働災害における経験則の一つに"ハインリッヒの法則"があります。この法則は1件の重大な事故及び労働災害の裏には、29件の軽微な事故及び労働災害があり、更にその裏には300件の事故には至らなかった事象、つまり"ヒヤリ・ハット"が存在するという考え方です。
参考:Wikipedia_ハインリッヒの法則

当社でもこの"ハインリッヒの法則"を踏まえて、"ヒヤリ・ハット"を徹底的に現場/現物/現実で見つけ、報告し、対策を打つという取組を継続して行ってきました。これ自体は全く間違っていない取り組みなのですが、結果的に今回の事故を防ぐまでには至りませんでした。

一体、その理由はなぜなのか?

発生する事故には、常に"ヒヤリ・ハット→軽微な事故及び労働災害→重大な事故及び労働災害"といった繋がりがある訳ではなく、異なる事象や偶然が重なり突然"重大な事故及び労働災害"が起こる事もあるという見解に、私自身は至りました。

我々はとにかく"0災害の追求"という使命を掲げ、ヒヤリ・ハットや軽微な事故及び労働災害も見過ごさずにそれぞれの取り組みを徹底する事にとらわれ過ぎていなかったか。またそのために、本当に危ない、致命傷になる様な事故の可能性を優先して深掘りすることを、十分に明確にしきれていなかったのではないのか、と考えました。

先ず今回の重大な事故発生後に、現場/現物/現実に基づいて発生原因を追求している過程でこの見解を得てから、操業を再開する現場に管理者/技術者を送り込み、機械設備や資材等の現物及び具体的に危険を感じたり心配になったりする作業をリストアップしました。現時点の2023年12月19日ではこの数は実に延べ571件に上りました。

この結果を踏まえて現場毎にこの内容を共有し、今迄の安全最優先の感覚を更新した上で作業員一人ひとりに操業再開への同意を確認すると共に、操業前に必ず指差し確認を行う事を徹底しています。

一方で、リストアップされた危険についてはそのリスクレベルに応じて、"致命傷になる"、"致命傷になるかもしれない"、"怪我をする"の3つにランク付けし、日々の安全チェック及び今後の対策における優先順位の明確化に取り組んでおり、現時点で"致命傷になる"は153件で26.80%、"致命傷になるかもしれない"は156件で27.32%、"怪我をする"は262件で45.88%になっています。

更にそのリストを踏まえ改善すべき内容について、場所や作業環境に関連する事を"現場"として、機械/設備/資材等に関連する事を"現物"として、行う作業に関連する事を"現実"として、複数回答可の条件でラベリングしました。その割合は現時点で、"現場"は153件で27.47%、"現物"は203件で36.45%、"現実"は215件で38.60%になっています。

今後の取り組みとしては、"現場"については表示や柵の設置及び立入センサーと音/色/光での対応を、"現物"については表示やカバーの設置及び接触センサーと音/色/光での対応を、それぞれ進めていくべく既に着手し改善を進めています。

一番対応が難しい"現実"に関しては、先ず"致命傷になる"項目を精査して"絶対禁止事項"を明確にして、必ず作業前に行うツールボックス・ミーティング(TBM)の際に指差し確認すべく準備を進めています。

この”致命傷になる絶対禁止事項"を、既存/新規の作業手順/標準の冒頭に加えると共に、"致命傷になるかもしれない"と"怪我をする"の項目を加えて、作業員/技術者/安全管理者による確認/検証を定期的に行って安全作業手順/標準を確立することで、その共有/更新を仕組み化していく事に着手しています。

こうして我々は先ず一つの取り組みとして、"0災害の追求"の盲点を着実に無くしていく事に着手しました。

これからも色々な苦労や失敗があると思いますが、現場/現物/現実を兎に角徹底して、不屈に有能に更新された安全最優先を元に"0災害の追求"に取り組んで参りたいと思います。

そしてこのブログでは、可能な限り私自身の経験と知見を皆さんに共有させて頂いた上で、率直なご質問/ご提案/リクエストを頂きながら、一緒に"0災害の追求"に挑み、行動していければと考えています。

本件に関するご質問/ご提案/リクエストがございましたら、下記のリンクよりご連絡頂ければ幸いです。これからのご支援/ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

大和鋼管工業株式会社
代表取締役社長
中村 慎市郎

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