2025.11.05

"ハイテン鋼管"はどう選ぶ?!JIS規格のない鋼管の採用と我々のハイテン鋼管"STX"について。

"ハイテン鋼管"は、汎用的に使用される"STK290"や"STK400"よりも強度が高く、あらゆる用途でコストダウンや環境負荷削減の可能性を秘めている材料です。

しかし、現時点では構造用鋼管には540N/㎟より高い強度のJIS規格が存在せず、どのような基準で"ハイテン鋼管"を採用すれば良いか分かり難いことが課題です。

そこで今回は、"ハイテン鋼管"の選び方について解説し、私たちのハイテン鋼管"STX(エスティーエックス)"について、詳しくご紹介します。

ハイテン鋼管とは?

”ハイテン鋼管”とは、国や鉄鋼メーカーによって定義が異なるものの、日本において一般的には”引張強さ”が490MPa(50kgf/)以上の鋼材、つまり”ハイテン鋼”を使用した鋼管のことを示します。

"引張強さ"や"降伏点"が高いため、同じ強度を保ちつつ、鋼管の径を小さくしたり厚みを薄くしたりすることができ、設計自由度の向上や軽量化を実現し、コストダウンや環境負荷削減に貢献します。

ハイテン鋼管の選び方

”ハイテン鋼管”は前述した通り、現時点では540N/㎟より高い強度のJIS規格が存在しないため、各メーカーの独自の基準で製造/販売されています。

そのため、使用するハイテン鋼管を選ぶ場合には、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。

①引張り強度および降伏点

各鋼管メーカーによって、”ハイテン鋼管”の”引張り強度”および”降伏点”の値が異なります。

”ハイテン鋼管”を採用した場合に、自身の設計した製品の”引張り強度”や、置き換える以前の製品の”引張り強度”を満たすかどうかを事前に調べておくことが重要です。

”引張り強度”や”降伏点”は、一般的に高ければ高いほど良いですが、”降伏点”を”引張り強度”で割った"降伏比"が高いほど降伏から破断までの余裕が少なく、急に塑性変形が進み、急激な破損のリスクが高まります。

”降伏比”が設定されている場合には、必要な”降伏点”以上でより”降伏比”が低い”ハイテン鋼管”を選ぶことをオススメします。

②加工性

”ハイテン鋼管”は、汎用的に使用される一般材である”STK290”や”STK400”よりも加工性が劣ります。

具体的には、”降伏点”が高く伸びが小さいため曲げ加工やプレス加工などの塑性変形を行う場合や、マンガンやケイ素など一般材とは化学成分が異なるためメッキ加工を行う場合には、特に注意が必要です。

事前に”ハイテン鋼管”のサンプルが入手可能であれば、サンプルを使って加工テストを実施することをオススメします。

③品質管理基準

試験頻度や管理体制など、JIS規格と同等以上の品質管理が行われているかを調査することも重要です。

納入した”ハイテン鋼管”のミルシートが入手可否は勿論のこと、何か不具合が起きた際にスムーズにサポートを受けたり相談できる業者やメーカーを選ぶことをオススメします。

STXのご紹介

”STX (エスティーエックス)”とは、日本製鉄株式会社と大和鋼管が共同開発をした、従来製品に対しより”しなやか”で”強靭”な特徴を持つ”ハイテン鋼管”、つまり当社の提供する”高張力鋼管”の総称です。

パイプ画像-STX

 

 

鋼管の機械的性質である引張強さ/降伏点や耐力及び設計基準強度は、それぞれ従来材STK400に比べ約2倍以上のレベルに達しています。

種類

機械的性質

設計基準強度
(短期許容応力度)
[N/㎟]

降伏比
[%]

引張強さ
[N/㎟]

降伏点
又は
耐力
[N/㎟]

伸び
[%]

STX(700N)

ハイテン鋼管
厚み2.0mm以上

700以上

570以上

10以上

490

-

STX(700N)建築構造用

ハイテン鋼管
厚み2.0mm以上
700以上   520以上
760以下
10以上  490  90以下

STX(780N)

ハイテン鋼管
厚み1.2、1.6mm

780

-

-

546

-

G3444 STK400

一般構造用炭素鋼鋼管

400

235

23以上

235

-

また、STXは他社のハイテン鋼管と比較して"伸び"が高く、曲げ加工やプレス加工などの塑性変形を行う加工性も優れます。

製品名

引張強さ
[N/㎟]

降伏点
[N/㎟]

伸び
[%]

STX 平均値 845 735 18
最大値 894 776 25
最小値 816 700 16
他社のハイテンパイプ   764 659 14

さらに、一部のサイズに関しては、国土交通大臣指定建築材料(大臣認定)として認定を取得しています。

建築基準法で規定されているハイテン鋼材はSS540 (一般構造用圧延鋼材:引張力540N/㎟)が最大で、それより高強度の700N級鋼管の評価に当たり、当時はこれまでにない厳しい審査が行われました。国土交通大臣指定建築材料として認定を受けているサイズは以下の通りです。

丸形のSTXサイズ一覧[JP][Blog]大臣認定取得サイズ丸

角形のSTXサイズ一覧[JP][Blog]大臣認定取得サイズ角

STXの表面処理は、PZとPPZの2種類

私たちの”STX”の表面処理は、外面全周溶融亜鉛メッキ+内面ミズエコの仕様の"ポストジンク(PZ)"と内外面溶融亜鉛メッキの"パーフェクトポストジンク(PPZ)"の2種類です。

メッキなしの”黒管”の仕様をご希望の場合には、別途お問合せください。

ポストジンクの詳細

[JP]PZ断面図ミズエコ

パーフェクトポストジンクの詳細

PPZ-断面図

まとめ

今回は、JIS規格が存在しない為に判断の難しいハイテン鋼管の選び方についてそのポイントを解説し、私たちのハイテン鋼管”STX”について詳しくご紹介しました。

具体的な”STX”の検討や採用に向けて、加工テスト用サンプルや外観のサンプルが欲しい場合には、以下のお問合せフォームより気軽にご相談ください。新規CTA

最後まで読んでいただき感謝申し上げます。引続き皆さまの"為になるお役立ち"に繋がる情報発信を続けて参りたいと思いますので、今後とも宜しくお願いいたします。ありがとうございました。

執筆者紹介

田中 辰弥
田中 辰弥
大和鋼管工業(株)企画部企画 課長。理工学部で得た知見を応用し、メッキパイプの構造解析に情熱を注ぐエキスパート。NETIS登録申請やハウスの構造診断といった高度な技術分野を担いながら、西日本での豊富な営業経験を活かした現場/顧客視点で、信頼性の高い技術情報を発信。

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