2023.07.05

今後のホットコイルの価格や如何に?!東鉄10ヶ月ぶりの値下げを踏まえた今後の展開について。

インフレ下で高騰した鉄鋼製品を扱う業者さまにとっては、市況の変動を十分に考慮して最適なタイミングで製品を発注しつつ、必要最低限の在庫で着実に利益を確保していく事が理想的だと思います。

そういった中で日本国内の主力電炉メーカーである東京製鉄は、06月19日の月曜日にホットコイル/縞コイル/熱延鋼板/酸洗鋼板/縞鋼板/厚板について、7月契約よりトンあたり1万円の値下げを発表しました。

世間では「先々に鋼材の価格は下がるのではないか?」という見方も出てきていますが、この値下げは安い輸入材を牽制し、市況の底打ちを狙った動きであると私たちは考えています。

そこで今回は、"東京製鉄の値下げ発表"と"輸入材の価格推移"から、今後の鋼板市況の見通しについて私たちの考察をご紹介いたします。

東京製鉄の値下げについて

冒頭でご紹介しましたが、、東京製鉄は06月19日の月曜日に、ホットコイル/縞コイル/熱延鋼板/酸洗鋼板/縞鋼板/厚板について7月契約よりトンあたり1万円、酸洗コイル/酸洗鋼板は1万2千円、溶融亜鉛メッキコイルは7千円、異形棒鋼は5千円のぞれぞれの販売価格の値下げを発表しました。

東京製鉄のホットコイル/縞コイル/熱延鋼板/酸洗鋼板/縞鋼板/厚板の販売価格値下げは、2022年9月契約分以来の実に10ヶ月ぶりの値下げとなっています。

以下は、東京製鉄のホットコイルの販売価格と”H2スクラップ”の相場価格、それらから算出されるメタルスプレッドをグラフにまとめたものです。

[JP]スクラップまとめグラフ

メタルスプレッドは、2022年06月以降トンあたり8万円以上をキープしていましたが、スクラップの値段が下がらなければ、7月の販売価格の値下げを受けて7月にはメタルスプレッドが7万円台に下がる見込みになっています。

輸入鋼板の価格推移

2023年の春先には韓国・台湾の高炉メーカーが、日本向けのホットコイルの輸出価格をトンあたり1万5千円の大幅な値上げを発表していましたが、海外のホットコイルの市況は、世界最大の供給国であり需要国である中国の需要衰退が原因で、価格の安い中国材の輸出量が東南アジアを中心に増えている状況です。

以下は財務省の貿易統計を元に、日本の各港に入着した"熱延帯鋼"、つまりホットコイルの平均価格を算出し東京製鉄の販売価格と比較したグラフです。

[JP]外材輸入コイル価格

2023年に入り、東京製鉄のホットコイルの販売価格と外材輸入コイル価格の差はトンあたり2万円以上が続いていましたが、その背景には日本国内では電気代等の高騰もあり、価格維持が量の確保よりも優先されていたとの認識です。

一方で足元では想定以上に中国の景気回復が遅れ輸入材の価格も未だ低迷しており、更に国内においても建材需要は地方の中小物件を中心に今一歩需要の戻りが遅れています。

そこで東京製鉄は、輸入材との価格差を少しでも埋めて足元で一定の数量を確保すると共に、今後当面はこれ以上の値下げはないとの底打ち感を明示する為に、今回の大幅な値下げに踏み切ったのではないかと私たちは考えています。

今後の見通し

今後の見通しをハッキリと述べる事は難しいのですが、ホットコイル価格は底打ちするシナリオと更に下がるシナリオをそれぞれ考察しましたのでご紹介します。

ホットコイルの価格が底打ちするシナリオ

中国国内で景気刺激策及び中国の鉄鋼メーカーが減産が一定レベルで機能すると共に、国内の電炉メーカー各社もこれから夏の減産期に入るため供給が比較的引き締まり、徐々に国内需要が回復することで、ホットコイルの価格は底打ちし、その後緩やかに上昇基調になっていく可能性があります。

ホットコイルの価格が更に下がるシナリオ

中国の景気刺激策の効果が発揮されず需要衰退が続き、中国の鉄鋼メーカーの減産が徹底されない為に継続して中国から安い価格のホットコイルが輸出され、日本国内に於いても電炉メーカーの値下げや外材輸入コイルの下がりの影響でホットコイルの値下げ基調が継続し、高炉製品に関しても市中の相場価格に影響を与える可能性があります。

まとめ

今回は、"東京製鉄の値下げ発表"と”メタルスプレッドの推移”及び"輸入材の価格推移"を踏まえた、今後の鋼材市況の見通しについて私たちの考察をご紹介しました。

鋼材価格について先行きが不透明な状況が続きますが、上記の2つのシナリオを比べると、鋼板価格が底打ちするシナリオの方が、中国にとっても、中国メーカーにとっても、国内メーカーにとっても合理性の高い内容だと思いますが、それを如何に実現していくかは正に市場の判断という事になると思います。

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