2025.12.17

"熱延コイル"の価格はどうなる?!鉄鉱石・原料炭の価格上昇を踏まえた今後の鉄鋼市況への当社の考察。

2025年12月15日に発表された東京製鐵の来年01月の売り出し価格は、国内の需要の遅延や回復の遅さが見られることを踏まえ、採算回復のため前月の値上げ浸透を優先し、全品種据え置きとなりました。
参考:東京製鐡株式会社_販売情報

一方で、鉄鋼新聞によると、2025年11月末に固まった来年01~03月積みの"鉄鉱石"の価格は、基準となる「鉄分62%粉鉱・本船渡し(FOB)」の価格は、前の期に比べ約7%高の94[ドル/㌧]程度になり、"原料炭"の「一級強粘結炭・本船渡し(FOB)」の10〜12月積み価格も、前期に比べ約6%高の192[ドル/㌧]程度となる見通しで、ともに久しぶりの上昇となることが報道されました。
参考:鉄鋼新聞社_鉄鋼原料の対日四半期価格

この様な状況下で、"高炉"の"主原である"鉄鉱石""原料炭"の値上げが、"熱延コイル (HC)"等の鉄鋼製品の値上げにどのくらいインパクトがあるか、シッカリと把握できていないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか

そこで今回は、私たちの観点で今回の"鉄鉱石""原料炭"の値上げが、如何に今後のHC市況へ影響を与えるかについての我々なりのシュミレーションと考察をご紹介しますので、今後のお取引き・ご商売の参考にしていただければ幸いです。

高炉に於ける鉄の原料とは?

高炉において鉄をつくる際に必要となる原料は、主に以下の"鉄鉱石"と"原料炭"と呼ばれている石炭、そして"石灰石"の3つになり、"鉄鉱石"と"原料炭"の2つは"主原料"、"石灰石"は"副原料"として一般的に認識されています。

そして、高炉の製鉄プロセスに於いて、それぞれの原料の担う役割は、以下のとおりです。

鉄鉱石

"鉄鉱石"は、地球上に豊富に存在する"酸化鉄"を多く含む鉱石であり、"鉄鉱石"に含まれる"鉄"が高炉から生み出される"銑鉄"の源になります。

日本で使用される"鉄鉱石"は、鉄分の含有率が60%前後のものが多く、1[㌧]の"銑鉄"を産み出すためには約1.6[㌧]の"鉄鉱石"が必要であるとされています。

[JP][blog]鉄鉱石

画像引用元:Wikipedia_鉄鉱石

原料炭

"原料炭"は、"鉄鉱石"から酸素を取り除くための"還元剤"として使用されます。

[JP]石炭

画像引用元:Wikipedia_石炭(無煙炭)

しかし、"原料炭"はそのまま使用すると高温で融解軟化し高炉内の還元反応を抑制してしまうため、高温で蒸し焼きにして融解軟化し難い"コークス"に加工して使用されます。

[JP]コークス
画像引用元:wikipedia_コークス

1[㌧]の"銑鉄"を産み出すために必要な"コークス"の量は0.4[㌧]で、0.4[㌧]の"コークス"を産み出すためには約0.6[㌧]の"原料炭"が必要であるとされています。

石灰石

"石灰石"は、"銑鉄"を造りだす"製銑"という工程に於いて、"シリコン"や"硫黄"及び"リン"といった不純物を取り除く"副原料"として使用されます。

1[㌧]の"銑鉄"を産み出すために必要な"石灰石"の量は0.1[㌧]であるとされています。

[JP]石灰石
画像引用元:wikipedia_石灰石

主原料の値上げがHC価格に与える影響は?

今回のブログでは、"主である"鉄鋼石"と"原料炭"の価格推移についてフォーカスし、我々なりにシュミレーションと考察をってみました。

今回分析に使用した各データの引用元は以下のサイトになります。

シュミレーションの方針

2026年01月〜03月のHCの市場価格を推定するために、"主原料"価格と"メタルスプレッド"のこれまでの傾向を分析/統合すると共に、今後のシュミレーションを以下の方針に基づき行ってみました。

  1. 先ず"主原料"である"鉄鉱石"と"原料炭"のそれぞれの価格動向については、貿易統計を参照しデータを公表している"Chematels(ケマテルズ)"、"新電力ネット"が公表している輸入価格(CIF)の調査を行いました。
  2. "Chematels(ケマテルズ)"で公表されていない11月から12月の期間の"鉄鉱石"の輸入価格(CIF)は、10月と同じ価格を使用しました。
  3. 2026年01月から03月の"鉄鉱石"の輸入価格(CIF)は、鉄鋼新聞社が報道している"鉄鉱石"の価格(FOB)の値上がり率と同等に値上がりすると想定しシュミレーションを行いました。
  4. "新電力ネット"で公表されていない11月から12月の期間の"原料炭"の輸入価格(CIF)は、鉄鋼新聞社が報道している"原料炭"の価格(FOB)の値上がり率と同等に値上がり(07月〜09月の平均価格(26,810[円/㌧])に比べ10月〜12月の価格は6%値上がり(28,419[円/㌧]))すると想定し、11月と12月の価格が均等になるように計算しました。
  5. 2026年01月から03月の"原料炭"の輸入価格(CIF)は、計算した2025年12月の価格と同じ価格を使用しました。
  6. 2025年11月までのHCの市場価格の推移と"主原料"価格推移を照らし合わせ、"メタルスプレッド"を算出しました。
  7. 2025年12月から2026年03月の"主原料"価格推移予測と"主原料"価格の値上げ前(2025年09月)の"メタルスプレッド"から、2026年01月〜03月のHCの推定価格を算出しました。

今回のシュミレーションは、飽くまでも我々が試行錯誤の末に辿りついた独自のやり方です。

特に"FOB"と"CIF"といった異なる条件をどのように扱うか等の改善の余地がまだまだあり、より相応しいデータや計算方法があれば、是非率直なご意見やアドバイスをいただければと思いますので、何卒ご支援・ご協力を宜しくお願いいたします。

鉄鉱石の価格推移

2022年01月から2026年03月までの"鉄鉱石"の価格推移をグラフに表してみました。

2022年01月〜2025年10月までの鉄鉱石価格[円/㌧]は、"Chematels(ケマテルズ)"のHP公表されている鉄鉱輸入CIF価格[ドル/㌧]を"日本銀行"のHPで公表されている為替[円/ドル]を使用して"円"に換算しています。

前述のとおり2025年11月〜12月は、鉄鉱輸入CIF価格が公表されていないため、10月と同じ価格であると仮定し、"日本銀行"のHPで公表されている最新の11月の中心相場/月中平均の155.12[円/ドル]の為替を使用して"円"に貨幣換算しました。

2026年01月〜03月は、鉄鉱輸入CIF価格[ドル/㌧]が2025年10月〜12月の平均比で7%上がり99.50[ドル/㌧]になると仮定し、同様に最新の為替を使用して"円"に換算しました。

[JP]鉄鉱石価格推移グラフ(CIF)
"鉄鉱石"の価格は、2024年07月の19,143[円/㌧]をピークに、中国での鉄鋼需要減退と在庫増加が要因となり、これまでは軟調な動きで推移していました。

"鉄鉱石"の価格は、今回の7%の値上げとなった場合でも現状の為替では、ピークの価格に到達しないことがわかります。

原料炭の価格推移

2022年01月から2026年03月までの主要な"原料炭"である"強粘炭"の価格推移をグラフに表しました。

2022年01月〜2025年10月までの強粘炭価格[円/㌧]は、"新電力ネット"のHPで公表されている強粘炭CIF価格[円/㌧]の数値をそのまま採用しています。

繰り返しますが2025年11月〜12月は、強粘炭CIF価格[円/㌧]が公表されていないため、鉄鋼新聞社が報道している"原料炭"の価格(FOB)の値上がり率と同等に値上がると想定し、07月〜09月の平均価格(26,810[円/㌧])に比べ10月〜12月の価格は6%値上がる(28,419[円/㌧])と仮定し、11月と12月の価格が均等になるように計算しました。

更に2026年01月〜03月は、2025年12月の価格が継続すると想定しました。

[JP]強粘炭価格推移グラフ

"強粘炭"の価格も、2024年03月の47,930[円/㌧]をピークに、中国での鉄鋼需要減退と在庫増加が要因となり、これまでは軟調な動きで推移していました。

"強粘炭"の価格も、今回の6%の値上げでもピークの価格には到達しないことがわかります。

"熱延コイル(HC)"の価格推移と予想値

2022年01月から2025年11月までのHCの価格推移と2025年12月から2026年03月までの価格予想値をグラフに表しました。

"主原料"価格は、前述した鉄1[㌧]あたりに使用する原材料の量を反映させています。

価格[円/㌧] = 鉄鉱石価格[円/㌧] x 1.6 + 強粘炭価格[円/㌧] x 0.6

[JP]熱延コイル販売価格推移
HCの価格は、2023年02月の134,000[円/㌧]をピークに、海外から輸入される製品との価格競争が要因となり、軟調な動きで推移していました。

"主原料"価格の値上げ前(2025年09月)の"メタルスプレッド"が固定されると仮定した場合、2026年01月から03月までのHCの価格は、今回の"主原料"の値上げの影響で2025年11月の価格から2,000[円/㌧]値上がりし、約103,000[円/㌧]になるとの結果になりました。

まとめ

今回は、"鉄鉱石"/"原料炭"の値上げがHC価格にどのような影響を与えるか独自にシュミレーションを行った結果、2,000[円/㌧]上昇するとの結果となりました。

更に足元では、物価高騰により労務費や修繕費、物流費が大幅に上昇している背景もあり、高炉メーカーが"メタルスプレッド"をこれまで以上に確保しなければならないと判断した場合には、さらなるHCの値上げが発表される可能性もあると私たちは考えています。

一方でHCの市況は、今回のシュミレーションで一定とした"メタルスプレッド"だけでなく、輸入材の価格動向などからも影響を受けるため、今後はそれらの状況も含めて、市況の変化に注目し、適切な対応をとって参りたいと考えております。

このような状況を踏まえて、先々に見えている物件等への対応は早目に行う事が賢明だと考えられますので、今後メッキパイプを購入される方々は、必要に応じて以下の見積りフォームより気軽に相談ください。

新規CTA

最後まで読んでいただき感謝申し上げます。何かご質問や要望等があれば、何時でもご遠慮なくご連絡ください。引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

執筆者紹介

田中 辰弥
田中 辰弥
大和鋼管工業(株)企画部企画 課長。理工学部で得た知見を応用し、メッキパイプの構造解析に情熱を注ぐエキスパート。NETIS登録申請やハウスの構造診断といった高度な技術分野を担いながら、西日本での豊富な営業経験を活かした現場/顧客視点で、信頼性の高い技術情報を発信。

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