【"鉄"にまつわるトリビア】鉄・鐵・鉃・銕の違いや歴史/由来について。

毎日当たり前に目にしている「鉄」という漢字は、他に「鐵」や「鉃」や「銕」などと、普段では殆ど使われない文字で表記をされる場合があります。

しかし我々は、これらの文字の使い分けの由来や歴史的な背景等に中々触れる機会は少ないので、ふと「一体どうしてなんだろう?」と気になった方もいるのではないでしょうか?

そこで今回は、さまざまな用途で活用されている「鉄」という漢字に関する、チョッとした"トリビア"をまとめてみましたので、是非日々の仕事の合間の息抜きや会話のきっかけとして、楽しんでご活用いただければ幸いです。

尚、本ブログで解説している漢字の起源や成り立ちに関する解釈には何れも諸説ございますので、あくまでもその一説としてお楽しみください。

1. 【鉄】 現代の標準、しかし"金を失う"の一面も?

音読みは"テツ"、訓読みは"くろがね"。現代の常用漢字として最も一般的に使われている文字です。

鉄明朝体

字源・由来

"金属"や"お金"を意味する「金」と、"シツ"や"テツ"という"音"を表す「失」で構成されおり、"意味”を表す部分と"音”や"読み方"を表す部分を組み合わせて作られた"形声文字"です。

"失"は、赤黒い土を意味する"漆(シツ)"に通じ、"鉄"の素材の色に由来するという説があります。

トリビア

文字通り"金を失う"と書くため、鉄鋼・鉄道会社などでは縁起が悪いとして、企業名への使用が避けられている場合もあります。

ちなみに、鉄をなぜ訓読みで"くろがね"と呼ぶかというと、古代の日本では、主要な5つの金属を"かね"と呼び、それぞれの"色"で区別していたことに起因するとされています。それぞれの名称と具体的な金属は、以下のとおりです。

  • 黄金(こがね)     = 金
  • 白金(しろがね) = 銀
  • 赤金(あかがね) = 銅
  • 青金(あおがね) = 鉛・錫
  • 黒金(くろがね) = 鉄

2. 【鐵】 "金属の王"と称される由緒正しき旧字体

"鉄"の旧字体であり、読み方や意味は同じですが、より重厚で力強い印象を与える漢字です。

鐵明朝体

字源・由来

「鉄」を"くろがね"と呼ぶように黒色を意味し、"呈(まっすぐ)"と"戈(切る)"を組み合わせて"鋭利な金属"を表した説が有力だとされています。

トリビア

  • 思想家・三浦梅園の言葉 : "金とは五金 (金・銀・銅・鉛・鉄)の総称なり、五金の内にては「鉄」を至宝とす。如何となれば「鉄」その価・廉にして、その用広し、民生一日も無くんば有るべからず"

江戸時代の思想家・三浦梅園は「鉄」は安価で用途が広く、人々の暮らしに不可欠な至宝である"と記しました。五金とは、上述でも記載した、金・銀鉄とされており、 古くから「鉄」が生活の基盤であったことを示しています。

  • 物理学者・本多光太郎の言葉 : "「鐵」は"金"の"王"なる哉(かな)"

日本の天才物理学者・本多光太郎は、「鐵」という字を分解すると"金・王・哉"になることに着目しました。"金属の王になる"という縁起の良い意味を込め、今も昔も鉄鋼関連の会社が社名に「鐵」の漢字を使っている事例も多くあります。

3. 【鉃】 "金が矢のように入る"鉄道会社の知恵

「鉄」の誤字と思われることもありますが、実は意味を持ってあえて使われている文字です。

鉃明朝体

字源・由来

「鉃」は、元々は"鏃(やじり)"を意味する常用漢字表外の表外漢字です。現在では鉄の代用字"俗字"として扱われています。

トリビア

主に鉄道会社さまなどでは、"金を失う"とよめる「鉄」"の漢字の代わりに、"金が矢のように、どんどん入ってくるように"という商売繁盛の願いを込めて、現在でも「鉃」を社名やそのロゴに採用している会社もあります

4. 【銕】 日本の"たたら製鉄"のルーツに繋がる古字

普段は滅多に見かけることのない「銕」は、「鐵」よりもさらに古い時代に使われていた異体字である古字です。銕明朝体

字源・由来

中国最古の古文にて登場する字体です。"夷"はひもの巻き付いた矢の象形であり、鳥や魚を捕える矢の素材として使用する"てつ"を意味するいう説や、当時優れた製鉄技術を持ちユーラシア大陸各地に居住していたイスラム教の民族であるタタール人を"夷(イ)"と呼んでおり、彼らが造る金属という意味で"金"に"夷"が組み合わされたという説があります

トリビア

一説には、この”タタール人”の"タタール"という言葉が、日本の伝統的な製鉄法である"たたら製鉄"の語源になったともいわれています

まとめ

今回は、私たちの身近な金属である"鉄"という字の異体字についてまとめました。

【常用】 金+失 = 現代の標準

【旧字】 金+王+哉 = 金属の王!!
【表外】 金+矢 = お金がどんどん入る!?
【古字】 金+夷 = たたら製鉄のルーツ?!

現在では最もシンプルな「鉄」の字が一般的に広く使われていますが、歴史や由来を紐解いてみると、旧字体や俗字・古字の一つひとつにはそれぞれ意味があり、その使い方・活用の仕方にも色々な思いが込められていることが実感できました。

前述どおり漢字の起源や成り立ちに関する解釈には諸説ありますが、是非この機会に「鉄」の文字に関する知識を一説として深めることで、皆さんご自身の”鉄”への好奇心の広がりやご家族やお取引先との会話の切っ掛けにご活用いただければ幸いです。

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最後までお読みいただき感謝申し上げます。引き続きよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

執筆者紹介

小原 学
小原 学
"施設園芸技術指導士補"の資格を持つ、勤続15年目の大和鋼管工業(株)企画部企画社員。大阪支店での豊富な営業経験から、農業資材/電線管の業界動向と現場での活用ノウハウに精通。資格に裏付けられた専門知識と顧客視点の融合で、読者の皆さまの業務効率化/製品選定に直結する実用的な情報を提供。

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