2025.09.03

"カーボンニュートラル"へ我々はどう踏み出す?!"GHGプロトコル"と"カーボンフットプリント"について。

日本は国として、2050年までに”温室効果ガス”の排出量が実質ゼロとなる”カーボンニュートラル”の実現を目指しており、2030年度には”温室効果ガス”の排出量を2013年比で46%削減することを目標としています。

そして日本の鉄鋼業は、その規模と生産のプロセスの特性から、国内産業のうちで多く”温室効果ガス”を排出しており、”カーボンニュートラル”の鍵となる産業とされ、日本の環境対策の中核に位置づけられています。

しかし、”温室効果ガス”は、実際に我々の目に見えるモノではなく測定も難しいため、どのように排出量を測定し管理・削減すれば良いか分かり難いことが課題です。

そこで今回は、”カーボンニュートラル”に必要な”温室効果ガス”の排出量を削減する取組で重要なポイントとなる、"GHGプロトコル"と”カーボンフットプリント”について詳しく解説します。

温室効果ガス排出量算定の枠組み

二酸化炭素を含む”温室効果ガス”の排出量は、一般的に世界資源研究所(WRI)と世界経済人会議(WBCSD)が策定した"GHGプロトコル"という国際的なガイドラインに基づいて算定・報告が行われます。

”GHG”とは、"温室効果ガス”の英語表記である”Greenhouse Gas"に基づいて作られた略語で、”プロトコル”とは、規約や手順及び国際儀礼の事で、つまり”GHGプロトコル”とは、”温室効果ガス”に関する国際的に規約・手順を意味しています。

つまり"GHGプロトコル"は、GHG排出量を「Scope1〜3」に分類して考えるアプローチを確立し、事業者が自社の活動のみならず、サプライチェーン全体の排出量を網羅的に把握するための枠組みを提供しています。

[JP]GHGプロトコル

Scope1: 事業体に於ける直接排出

”Scope1”は、事業者自らが所有または管理する排出源から直接発生する”温室効果ガス”の排出です。

各々の事業体が行う活動に直接的に由来している”温室効果ガス”の排出である為、比較的その内容の把握やコントロールがやりやすい内容といえます。

【Scope1の例】

  • 工場や事業所でガス・石油などの燃料を燃焼する際に排出される温室効果ガス
  • 事業体が所有する社用車・トラックなどの車両を使用する際に排出される温室効果ガス
  • 製鉄やセメント等の製造プロセスにおける化学反応で排出される温室効果ガス
  • 事業体の廃棄物処理によって排出される温室効果ガス

Scope2: 事業体に於ける間接排出

"Scope2"は、他社から供給された電気・熱・蒸気・冷熱の使用に伴う間接的な”温室効果ガス”の排出です。

この排出は、実際には発電所などのエネルギーが生産される場所で発生しますが、そのエネルギーを消費する事業者の活動と切り離せないため、対象の事業体の”間接排出”として算定されます。

【Scope2の例】

  • オフィスや工場で使用する電力を生み出す際に排出される温室効果ガス
  • 外部から供給される冷暖房用の熱や蒸気を生み出す際に排出される温室効果ガス

Scope3: サプライチェーンに於ける間接排出

"Scope3"は、事業体のサプライチェーン全体で発生するScope1とScope2以外の全ての”温室効果ガス”の間接排出が対象です。

これは、原材料の調達から製品の廃棄に至るまで、事業活動に深く関わる様々な排出源を含む事を意味しています。

”温室効果ガス”の排出量全体の中では、"Scope3"が最も大きな割合を占めることが多いのでその削減が特に重要視されてていますが、その内容は広範囲で且つ複雑なので、更に15のカテゴリーに細分化されています。

"Scope3"の代表的な内容は以下の例のとおりです。

【Scope3の例】

 上流サプライチェーン
  • 原材料の生産・輸送の際に排出される温室効果ガス
  • 従業員の出張や通勤の際に排出される温室効果ガス
  • 購入した製品・サービスの生産の際に排出される温室効果ガス
 下流サプライチェーン
  • 販売した製品の顧客による使用の際に排出される温室効果ガス
  • 販売した製品の廃棄・リサイクルの際に排出される温室効果ガス
  • フランチャイズ事業から排出される温室効果ガス

カーボンフットプリントとは?

"カーボンフットプリント"とは、直訳すると”炭素の足跡”ですが、商品やサービスに関わる”温室効果ガス”の排出量を”二酸化炭素”の量で表現した値です。英語では”Carbon Footprint of Products”と表記されるので、略して"”CFP”とも呼ばれています。

"カーボンフットプリント"は、”GHGプロトコル”に基づいた計算方法で算出された数値を”ライフサイクルアセスメント (LCA)”という方法を活用して積算されます。

具体的には、商品やサービスの原材料の調達→生産→流通→使用・維持管理→廃棄・リサイクルという、ライフサイクル全体を通して排出される”温室効果ガス”の総量を”二酸化炭素”の量に換算し、製品単位で分かりやすく表示している訳です。

このようにして”カーボンフットプリント”は、”温室効果ガス”の排出量を”二酸化炭素”の量という数値を用いて”見える化”することで、事業体が更なる”温室効果ガス”の削減に向けた取組を推進すると共に、消費者の”温室効果ガス”の排出にも自覚を促す事によって、”低炭素社会”を実現して行く事を目的としています。

カーボンフットプリントの算出方法

”カーボンフットプリント”を算出するためには、まず製品やサービスが生産から廃棄に至るまでの全ライフサイクルをプロセスに分解する必要があります。

以下、当社が製造/販売を行っている"単管パイプ"の全ライフサイクルをプロセスに分解した図をご紹介します。

単管パイプのライフサイクル図

[JP]カーボンフットプリント図

 

"単管パイプ"による”カーボンフットプリント”を計算するためには、製造から流通までのプロセスで排出される二酸化炭素だけでなく、原材料である鉄鉱石や石炭といった資源採掘から、お客さまが単管パイプを使用/保管するプロセス、廃棄やスクラップされるまでのプロセスなどの間接的な二酸化炭素排出量も計算しなければなりません。

”温室効果ガス”排出量を削減する際のポイント

”カーボンフットプリント”を踏まえると、”温室効果ガス”の排出量を削減する際は、省エネなどの自社努力だけでなく製品やサービスが生まれる前から捨てられるまでの「ライフサイクル全体」を把握し、包括的に対策を講じることが重要です。

私たちなりに考えたカーボンフットプリントを踏まえた"原材料の調達"→"製造"→"輸送"の”温室効果ガス”を削減するポイントをご紹介します。

原材料の調達 

  • 再生材、持続可能な方法で生産された素材など、環境負荷の低い素材を選ぶ。
  • サプライヤーと連携し、原材料の生産過程におけるCO₂排出量削減を促す。

製造

  • 性能の高い機械導入するなど、製造プロセスのエネルギー効率を改善する。
  • 再生可能エネルギーの使用量を増やす。

輸送

  • 積載率を高く維持するなど、輸送を効率化する。
  • 鉄道や船舶など、高効率な輸送手段の採用する。

まとめ

今回は、”カーボンニュートラル”の達成に必要な、”温室効果ガス”の削減の重要なポイントとなる、"GHGプロトコル"と”カーボンフットプリント”について詳しく解説してみました。

”カーボンニュートラル”を実現する為の”温室効果ガス”の削減は、我々の小さな一歩の積み重ねから始まります。

まずは"GHGプロトコル"を理解して”カーボンニュートラル”に必要な取組の全体像を把握した上で、我々の事業活動における”カーボンフットプリント”を把握し、”温室効果ガス”の削減に向け、今できることから具体的に行動することが重要だと思います。

”カーボンニュートラル”、"GHGプロトコル"、”カーボンフットプリント”等について更に気になる事があれば、以下のお問合せフォームよりお気軽にご相談ください。

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最後まで読んでいただき感謝申し上げます。引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。


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