”単管パイプ”は、ホームセンターやECサイトで、1mから6mまで1メートル単位の定尺で販売されているので、ニーズにあった寸法で調達し易く、さらにパイプカッターで切断すれば、自ら必要な長さに調整する事も可能です。
しかし、定尺の”単管パイプ”を自身で切断した際には、「切断面をどのように処理したら良いか分からない・・・」や、「ドブメッキの単管パイプは管端を補修しなくても良いの?」といった疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、”単管パイプ”の切断面の耐食性を検証するために実施した、"大気暴露試験"の結果とその考察をご紹介しますので、製品知識の強化やDIYを行う際の参考にしていただければ幸いです。
大気暴露試験とは?
"大気暴露試験"とは、大気中に製品のサンプルを設置し、雨や風、朝夕の寒暖差、日照など自然環境の影響によって生じる化学的および物理的性質の変化を時間の経過とともに観察する方法です。
”大気暴露試験”の方法には、”JIS Z2381”の”大気暴露試験方法通則”で定められた4種類がありますが、今回は”単管パイプ”が野外で使用される事を想定し、実際に"直接暴露試験"を行ってみました。
JIS Z 2381で定められている4種類の大気暴露試験方法
種類 |
内容 |
直接暴露試験 | 日照・雨・雪・風などの自然状態における大気環境下で、試料を直接暴露する試験。 |
ガラス越し暴露試験 | 板ガラスで覆った試験箱内に試料を取り付け、板ガラスを透過した太陽放射光に暴露する試験。”アンダーグラス暴露試験”ともいう。 |
遮蔽(しゃへい)暴露試験 | 遮蔽構造物の下や中及び屋内等に試料を設置して、日照・雨・雪・風などの直接の影響を避けた状態で暴露する試験。 |
ブラックボックス暴露試験 | 内側及び外側の全てを黒色処理した金属製試験箱の上面に、試料を取り付けた状態で暴露する試験。 |
試験方法と手順の詳細
今回はの"直接暴露試験"では、10種類のサンプルを用意し❶ 単管パイプの肉厚、❷ メッキの付着量、❸ ”管端補修”の有無の3点について比較してみました。
各サンプルは何れもチップソーを使用し切断し管端の面取りを行った上で、❸ ”管端補修”の有無を比較する2つのサンプルのみに、防錆用のジンクリッチペイントで塗装を施しました。10種類のサンプルについての概要は以下です。
No. | 種類 | 外径 x肉厚[mm] |
メッキ付着量[g/㎡] |
|
外面 | 内面 | |||
① |
他社製配管向けドブメッキ鋼管 | 48.6 x 3.6 | 369 g/㎡ | 618 g/㎡ |
② |
鋼管杭向けパーフェクトポストシンク |
48.6 x 2.4 | 189 g/㎡ | 240 g/㎡ |
③ | ポストジンク | 48.6 x 2.4 | 154g/㎡ |
19μ |
④ | スーパーライト700 ポストジンク | 48.6 x 1.8 | 121 g/㎡ | 11μ |
⑤ | 他社製軽量単管パイプ | 48.6 x 1.8 | 101 g/㎡ | 42 g/㎡ |
⑥ |
他社製ドブメッキ単管パイプ |
48.6 x 2.4 | 193 g/㎡ | 177 g/㎡ |
⑦ | パーフェクトポストシンク | 48.6 x 2.4 | 217 g/㎡ | 192 g/㎡ |
⑧ | スーパーライト700 パーフェクトポストジンク | 48.6 x 1.8 | 233 g/㎡ | 129 g/㎡ |
⑨ | パーフェクトポストジンク + 管端補修 | 48.6 x 2.4 | 217 g/㎡ | 192 g/㎡ |
⑩ | スーパーライト700 パーフェクトポストジンク + 管端補修 | 48.6 x 1.8 | 233 g/㎡ | 129 g/㎡ |
*ミズエコはポストジンク鋼管の内面に使用されている防錆用の処理剤です。
上記の写真のように10種類のサンプルを並べて"直接暴露試験"を実施し、2024年10月18日から2024年11月18日までの約1ヶ月間での変化を確認しました。
❶ 単管パイプの肉厚での比較
まずは、①〜④のサンプルの比較する事で、"単管パイプの肉厚による違い"について考察します。①〜④サンプルの変化は以下の通りです。
実験開始時(2024/10/18) | 実験終了時(2024/11/18) |
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①〜④すべての切断面に赤錆が発生している事から、鋼管の肉厚に関わらず切断面から赤錆が発生する事が分かります。
❷ メッキの付着量での比較
続いて、⑤〜⑦のサンプルを比較する事で、"メッキ付着量による違い"について考察します。⑤〜⑦のサンプルの変化は以下の通りです。
実験開始時(2024/10/18) | 実験終了時(2024/11/18) |
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⑤〜⑦すべての切断面に赤錆が発生している事から、鋼管自体のメッキ付着量に関わらず、切断面から赤錆が発生する事が分かります。
従ってメッキ付着量の多いドブメッキの単管パイプも、そのままでは亜鉛の犠牲防食効果は不十分で、赤錆が発生する可能性が高いと言えます。
❸ 管端補修の有無での比較
最後に、⑧〜⑩のサンプルを比較する事で、"管端補修の有無による違い"について考察します。⑧〜⑩のサンプルの変化は以下の通りです。
実験開始時(2024/10/18) | 実験終了時(2024/11/18) |
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切断後にジンクリッチペイントで”管端補修”を施した⑨ ⑩は切断面が錆びていない事が分かります。
大気暴露試験を踏まえた切断面ついての考察
これまでの試験結果を踏まえると、単管パイプを切断した場合、肉厚やメッキの付着量に関わらず切断面から赤錆が発生する可能性が高く、赤錆の発生を遅らせるためには、切断後に”管端補修”を行う事が重要であることがわかりました。
当社はお客さまのご指定がない限り、切断面からの赤錆の発生を遅らせる為に、造管したすべての製品の切断面を面取りした上で、ジンクリッチペイントで”管端補修”をしていますのでご安心ください。
まとめ
今回は、”単管パイプ”の切断面の耐食性を検証すべく実施した"大気暴露試験"とその結果・考察をご紹介いたしました。
試験結果を踏まえると、”単管パイプ”の切断面から発生する赤サビを防ぐためには、面取りを実施した上で端面を補修する事が有効です。従って自身で”単管パイプ”を切断した場合にも、”単管パイプ”の種類に関わらず管端補修を行うことをオススメします。
基本仕様ですべての製品に”管端補修”を施してある当社の”単管パイプ”に興味のある方は、以下のフォームよりいつでも気軽にお問い合わせください。
最後まで読んでいただき感謝申し上げます。当社では、メッキパイプについて更に興味を持っていただけるように、今後ともお客さまの為になり役に立つ記事を、積極的に配信してまいります。引き続き宜しくお願い致します。ありがとうございました。
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