様々な鋼管を扱う商社や特約店等の方々は、お客さまの要望する製品を正確に理解して、見積や在庫問合せに対応する事が理想です。
しかし、「"ヨン・パー・ロク"の足場管が欲しい」や「"インチ"のパイプを見積してくれ」、「"ロクブ"や"ナナブ"のパイプは在庫ある?」と聞かれて、咄嗟に「どの品種で、どんな外径と厚みの鋼管を指すのか分からない???」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、今回は鋼管の"品種"や"サイズ"を表す俗称や業界用語についてご紹介します。また"サイズ"を表す俗称についてはその前提となる"チューブ(Tube)"と"パイプ (Pipe)"の違いについても詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
尚、本記事は当社の独自の知見・経験に基づくものなので、取り扱っているサイズや品種及び業種に偏りがある事は予めご了承ください。
鋼管の品種の俗称・業界用語
鋼管の品種や呼称・俗称等の業界用語は、形状や大きさ及び用途等によって実に様々な形で存在しています。
今回は私たちが得意としている"軽仮設資材向け鋼管の俗称・業界用語"を皮切りに、鋼管の品種の俗称・業界用語は鉄鋼業界の業界誌の相場に記載されている品種を中心にまとめてみました。
軽仮設用途の鋼管の俗称・業界用語
足場管・単管パイプ
”足場管”及び”単管パイプ”は仮設足場の資材として使われる鋼管であり、”単管”とも呼ばれます。一般的に直径は48.6mmとなっていますが、厚みは2.4mmと1.8mmの2種類があります。元々の基本的な厚みは2.4mmですが、軽量化された1.8mmの”単管パイプ”も広く普及しています。
軽量単管パイプ
”軽量単管パイプ”とは、”単管パイプ”のうち厚みを2.4mmから1.8mmに軽量化された製品を指し、更に端的に"ライト管"と呼ばれる事もあります。
”軽量単管パイプ”は素材として高張力鋼板を使用する事で、"STK500の単管パイプ"よりも”許容応力度”が高く、厚みを薄くする事で標準重量をおよそ25%軽量化した製品仕様となっています。
バタ丸
”バタ丸”とは、”単管パイプ”のうち、ピンやダボの加工がされていない"単管パイプ"を指しますが、昨今では”バタ丸”ではなく、”単管”や”丸パイプ”と表現される事が多くなったように感じます。
バタ角
”バタ角”とは、建設工事のコンクリート打設の際に型枠仮設補強など、建設工事のコンクリート打設の際に使用される約10cm程の角型のパイプになります。西日本では型枠仮設補強に”バタ角”が多く使用される傾向があります。
建築用途の鋼管の俗称・業界用語
コラム
”コラム”とは、建築用途に使用される大径の角型鋼管です。鉄骨造の柱で最も一般的な鋼材である”冷間成形角形鋼管”の通称ですが、JIS規格の一般構造用角形鋼管”STKR”とは限りません。
BCRとBCP
"BCR"とは英語表記で”Box Column Roll”の略で、"コラム”のうち、連続なフォーミングによりロール成形を行う事で製造される製品を指し、”ロールコラム”とも呼ばれます。
一方でプレスにより成形されるコラムは、英語表記で”Box Column Press”で"BCP"との略称で呼ばれると共に、”プレスコラム”とも呼ばれています。
配管用途の鋼管の俗称・業界用語
ガス管
”ガス管”とは、主に配管用途に使われる鋼管のうち、主に気体を通すことが想定されている鋼管の通称ですが、手摺等の他の用途にも使われています。
黒ガス管
”黒ガス管”とは、”ガス管”のうち、メッキが施されておらず鉄地がそのままの状態である製品を指します。
高炉品
”高炉品”とは、主に”ガス管”のうち、高炉メーカーが製造・販売している製品を指します。一般的には"高炉品"は品質が良いと認知されていて、物件によっては”高炉品”を指定されるケースもあります。
熔協品
”熔協品”とは、主に”ガス管”のうち、熔接鋼管協会に加入している鋼管メーカーが製造・販売している"ガス管"を指します。”熔協品”は、その他の通称として"非高炉品"や"専業品"などと呼ばれる事もあります。
白ガス管
白ガス管は、ガス管のうち、溶融亜鉛メッキが施された"ガス管"を指します。白ガス管も"高炉品"と"溶協品"に分類されます。
チューブとパイプの違い
私たちはメッキパイプのメーカーとして、普段は多くの方が親しみ易い"パイプ"という表現を使用しています。
しかし、この先に記載した"径の俗称・業界用語"を理解するうえで必ず抑えておきたい前提の知識として、鋼管に於いての"チューブとパイプ"、つまり英語表記で”Tube”と”Pipe”の違いがあります。
全て一括りに"鋼管 = パイプ"と表現する人が多いかと思いますが、実は厳密には"鋼管から分類される"構造用鋼管・伝達用鋼管"は英語では”Tube/チューブ”と表記され、"配管用鋼管"は”Pipe/パイプ”として表記され、それぞれ意味が異なります。JIS規格ではこの分類分けがキチンと整理整頓され、英語表記で明確に区別されています。
構造用鋼管・熱伝達用鋼管に属するJIS規格は全て"Tube"と英語表記されています。
Tube (チューブ):構造用鋼管・熱伝達用鋼管
[例]
一般構造用炭素鋼鋼管(Carbon steel tubes for general structure)
機械構造用炭素鋼鋼管(Carbon steel tubes for machine structure)等
一方で、配管用鋼管は英語表記では全て"Pipe"と表現されています。
Pipe (パイプ):配管用鋼管 (液体や気体の流体を流す為の管)
[例]
配管用炭素鋼鋼管(Carbon steel pipes for ordinary piping)
水道用亜鉛めっき鋼管(Galvanized steel pipes for ordinary piping)等
気をつけたい"径の俗称・業界用語"について
"48.6 (ヨン・パー・ロク)"や"インチ"、"六分 (ロクブ)"や"七分 (ナナブ)"とパイプの呼び方は、全て鋼管の”径”の大きさもしくは長さを指しています。
しかし、この径がどこの大きさ/長さを示すのかが、"構造用鋼管・伝達用鋼管"の”チューブ”と"配管用鋼管"の”パイプ”では意味が異なるので注意が必要です。
具体的には、"構造用鋼管・伝達用鋼管"の”チューブ”は外径の大きさ/長さが基準になっていますが、"配管用鋼管"である”パイプ”は内径の大きさ/長さが基準になっているからです。
例を挙げると"インチ”のパイプは、"構造用鋼管・伝達用鋼管"であるチューブの用途では外径がφ25.4mmの鋼管を指しますが、"配管用鋼管"の”パイプ”の用途では外径がφ34.0mmで厚みが3.2mmの鋼管を指します。
以下は"構造用鋼管・伝達用鋼管”である”チューブ"と"配管用鋼管"である”パイプ”のそれぞれの呼び方について、当社が独自でまとめた表になります。
構造用鋼管・伝達用鋼管/チューブの外径と俗称
外径 | 俗称 |
---|---|
19.1 | 六分 (ロクブ) |
22.2 | 七分 (ナナブ) |
25.4 | 吋 (インチ) |
配管用鋼管/パイプの呼称と外径と俗称
A呼称 | B呼称 | 外径 | 俗称 |
---|---|---|---|
6A | 1/8B | 10.5 | 一分 (イチブ) |
8A | 1/4B | 13.8 | 二分 (ニブ) |
10A | 3/8B | 17.3 | 三分 (サンブ) |
15A | 1/2B | 21.7 | 四分 (ヨンブ) |
20A | 3/4B | 27.2 | 六分 (ロクブ) |
25A | 1B | 34 | 吋 (インチ) |
32A | 1-1/4B | 42.7 | 吋二分(インチニブ) |
40A | 1-1/2B | 48.6 | 吋半(インチハン) |
50A | 2B | 60.5 | 二吋(ニインチ) |
まとめ
今回は、さまざまなかたちで使われている鋼管の"品種"や"サイズ"を表す俗称や業界用語についてご紹介しました。
取引を行う当事者が俗称や業界用語を正しく理解していれば意思疎通はスムーズになるので、互いにスレ違いを無くす為にも予め俗称や業界用語を理解し慣れ親しんでおくとともに、実際に見積や注文を行う際には、必ず品種や外径・厚み等を書面でその詳細を確認する事をオススメします。
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