2019年04月に"働き方改革関連法"が施行されて以降、働きやすい環境の実現を目指して様々な取組みを実施していた中、突然、COVID-19の感染が拡大し、私たちも日常生活を変えざるを得ない状況となりました。
そのような環境の変化によって、テレワークやリモート会議等、自分たちの業務に於いても今迄に経験したことの無かった勤務形態や新しいシステムを導入したことにより、急激にデジタル化やいわゆるDXが進んだ企業さまも多くいらっしゃるのではないでしょうか?
当社でも大都市圏内の拠点のみならず、本社の事務職でも積極的に”テレワーク”を導入していましたが、特に栃木県の本社工場の製造現場や物流加工拠点では、現場/現物/現実を踏まえた操業が基本となる為、テレワークは不可能でした。
しかし、パンデミックを機会に以前から取組んでいた”コミュニケーションの円滑化による生産性の向上”の観点からの働きやすい製造現場の環境作りを加速させました。
そこで今回は、製造現場でのコミュニケーション改善による生産性の向上に於ける当社の取組みと、その効果をご紹介させていただきたいと思います。
製造業に於ける”コミュニケーション”の問題/課題とは
製造現場や倉庫管理の作業に於いては、以下のようなコミュニケーションの問題/課題が挙げられます。
製造現場でのコミュニケーションの問題/課題
- 作業者同士の持ち場が離れているので意思疎通がし辛い。
- 機械の騒音や製品等の接触音で着信に気づかなかったり、会話が聞き取れなかったり、意思疎通がし辛い。
- 機械を止めないと電話等に出られないし、電話等に出るには手袋を外す必要もある。
- トラブルが発生した時に、すぐに技術者や上司に連絡が取れない。
- 全関係者への情報共有がスムーズにできない。
倉庫管理でのコミュニケーションの問題/課題
- 一人での作業が多く、他者との意思疎通が不足しがち。
- 個別に作業を行っているので、不本意に取組みが重複することがある。
- 作業者同士の距離が離れている状況が多いので意思疎通がし辛い。
- 機械の騒音や製品等の接触音で着信に気づかなかったり、会話が聞き取れなかったり、意思疎通がし辛い。
- 事務所内で事務作業をしている場合は、現場の状況を把握することが難しい。
- 全関係者への情報共有がスムーズにできない。
当社でのコミュニケーション改善の取組みについて
そのような状況を踏まえて、工場や倉庫でリアルタイムで円滑にコミュニケーションを取れるようにする取組みの一つとして、BONXという次世代のコミュニケーションツールを導入/活用しています。
BONXとは、元々はスノーボーダー向けに開発されたコミュニケーションツール/サービスで、独自のスマートフォンアプリを自社開発し、デバイスもしくは他社が提供するAirPods等のBluetooth®イヤフォンを組み合わせて、距離を問わず様々な環境でグループ/個別通話を行える世界で最も多目的なグループトークソリューションです。
また、最近では通話以外にも喋った内容の”文字起こし”や”トークルーム”の設定、画像共有やチャット及びその読上げ等の機能も追加しており、私たちのような製造メーカーの現場では、議事録や日報などの作成や画像の共有などを行う事が可能になりつつあります。
私たちは、この”BONX”を製造現場と倉庫管理に導入/活用することで、以下のような改善が見られました。
- 耳に直接音が入るのでメッセージにヌケモレなく気付けるようになった。
- 作業を一度中断することが無くなり、スムーズに情報伝達を行えるようになった。
- 事務所でも打合せ中でも、緊急の事柄はリアルタイムで把握できるようになった。
- トラブル等がリアルタイムで全てのメンバーに共有され、協力/支援が得やすくなった。
- メンバーと常時グループ通話を行うことで気軽に会話が生まれ結束力が高まった。
BONX導入による経済的な効果は?
今回は以下の通り実際に倉庫管理作業者の1日の作業歩数をBONXを使用した場合と使用しない場合で、どれほど生産性が変わるのかを比較する検証実験を行いました。
BONX導入前の1日当たりの作業者1名の歩数 (携帯電話アプリでの測定) = 14,616歩/日
BONX導入後の1日当たりの作業者1名の歩数 (携帯電話アプリでの測定) = 13,239歩/日
作業者1名あたりの削減された歩数 = 14,616歩/日 ー 13,239歩/日 = 1,377歩/日 ≒ 9.4%
BONXを使用したことにより、1日あたり全体の約9.4%に相当する約1,377歩移動を減らすことができました。
これを鉄鋼業界で働く従業員をモデルケースとして、1日どの程度時間を削減できるか試算をすると、BONXを使用することで1日あたりの全体の約2.4%に相当する約11.7分時間を減らすことが可能です。
モデルケース(鉄鋼業界の社員)
年 齢:40歳 (鉄鋼業界の平均年齢)
身 長:170cm (40代の平均身長)
歩行速度:82.3m/分(40代の平均歩行速度)
参照元:国民健康・栄養調査14 身長・体重の平均値及び標準偏差 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口
賃金構造基本統計調査|統計表•グラフ表示|政府統計の総合窓口
BONXを使用した場合
([歩幅]170cm-100cm) × [歩数]1,377歩 = [距離]96,390cm = 963.9m
[距離]963.9m ÷ [歩行速度]82.3m/分 ≒ [時間]11.7分/日(1人)
検証結果の通り、コミュニケーションを円滑に取ることで、1日では11.7分ですが1ケ月の所定労働日数を20日とすると、1ヶ月あたり約4時間に相当する234分の作業者の移動に際してのムリ/ムダ/ムラを抑え効率を上げることができました。
これを作業自体の質の向上を勘案せずに、1時間あたりの人件コストの残業代を3,000円/時として換算すると、約12,000円/月 = 約144,000/年になり、作業者一人あたりの経済性を向上できる可能性が確認できました。
更に、タイムリー且つ現場/現物/現実での意思疎通による手戻りの回避や、ついで作業の実施等で作業自体の質が向上を勘案すると、この作業者一人あたりの経済性の向上は、ドンドン膨らませる事が可能だと考えられます。
実際に活用している社員からは「移動する時間が減ったから作業効率が上がった」や「ジェスチャーや大きな声を出す必要がなくなった」、「意思疎通の質があがり、コミュニケーションが取り易くなった」等の声があり、作業の負担軽減のみならず、職場環境の改善や仕事の質の向上に繋がっていることを実感できました。
その他のコミュニケーション改善について
私たちは、働き方改革の一環として仕事の効率/生産性を上げる為に、2014年から社員へiPhoneの支給を開始し、2019年09月には現場社員含む全員が会社支給のiPhoneを持っている環境を実現しています。
社用の携帯電話をiPhoneに統一し、全員に配布したことによって得た効果を、以前ブログ記事でもご紹介しておりますので、よろしければ是非、以下のリンクよりご参考ください。
ブログ記事:なるほど、全員iPhone!! 大和流働き方改革に有効な一手。(^_^)v
そして、今回ご紹介しているBONX以外にも、様々なコミュニケーションツールを積極的に導入/活用し、以下の様な職場環境の改善に取り組んでおります。
- 作業中に何らかの不都合な事態が発生した時にはすぐに電話または”SMS”で連絡を取り、抜け漏れ/重複を避けムリ/ムダ/ムラを無くす意思疎通を心掛けています。
- セキュリティを担保した上で、写真/ビデオの撮影を許可し、必要に応じて共有/活用することで意思疎通の質を向上し効率を上げています。
- 意思疎通の相手が海外や別拠点にいる場合には、iPhoneに入っているビデオ/音声会話ツールの”Face Time”を活用し、意思疎通の質を向上しつつコストを下げてます。
- 同じ部署内や同じプロジェクトの仲間と”SMS”でグループを作り、抜け漏れ/重複を避けムリ/ムダ/ムラを無くす意思疎通に取り組んでいます。
- 以前は紙ベースで共有していた週次の業務予定を、Googleドライブで共有し、セキュリティを担保した上で効率を上げ、環境負荷を下げています。
- 同作業での作業者による効率や仕上がりのバラツキを改善すべく、作業標準書を作成した上でiPhone/iPadで共有し、都度更新していく事で継続的改善を実現しています。
まとめ
今回は、私たちが取り組んでいる”製造業に於けるコミュニケーション改善による生産性の向上”に向けた具体的事例としてのBONXの活用と、その効果及びその他の当社の取組みについてご紹介させていただきました。
現場での”BONX”や”iPhone”等の操作については、当初は消極的なイメージを持っている社員も少なくありませんでしたが、同じ職場で働く仲間が使って結果/成果を上げているから自分も使ってみようと、現在では好意的な意見が多くなっています。
高温多湿な季節となり、現場での作業には負担が増しますが、様々な角度からの効率改善やストレス軽減によってより働きやすい環境をこれからも追求できればと思います。
そして、社員の働きやすい環境作りが生産性の向上のみならず、お客さまへのより良い製品のご提供に繋がるのだと考え、シッカリ取組みを深めて参りたいと思います。
さらに、鋼材価格の値上げのみならず副原料/エネルギーコスト上昇に伴い、物流費/電気代等の諸コスト上昇も懸念される中で、コミュニケーション改善によって直接的/間接的なコスト削減が可能になり、足元の企業収益や先々の企業価値の向上に繋がると私たちは考えております。
今回ご紹介した当社の製造現場でのコミュニケーション改善の取組みにご興味のある方や、ご自身の会社で取り組まれているコミュニケーション改善の方法を紹介したいなど、ご質問やご意見及びご要望等がございましたら、以下のフォームよりお気軽にお問合せください。よろしくお願い申し上げます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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