2022.10.26

インボイス制度って何?!”売り手”として知っておきたいポイントを解説。

”インボイス制度“が始まる令和5年10月01日まで、とうとう1年を切りました。
制度開始日からインボイスを発行するために必要な登録申請期日の令和5年3月31日までは、すでに半年を切っています。

[JP][Blog]インボイス制度キービジュアル

制度に備えてさまざまな検討や対応が必要となる中で、以下のようなお悩みを持つ事業者の方も多いのではないでしょうか。

  • インボイス制度の内容がわからない
  • インボイス制度のメリット・デメリットがわからない
  • 免税事業者だが、適格請求書発行事業者に登録しなければいけないのか迷っている
  • すでに課税事業者だが、何かやるべきことはあるのか知りたい

そこで今回は、商品/サービスを提供する”売手”の方々としての立場で、”インボイス制度”についてわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。

”インボイス制度”とは正確な消費税率及び額を確認するしくみ

”インボイス制度”は通称であり、正式には”適格請求書等保存方式”といいます。
必要事項を記載した請求書等を用いて、取引で発生した消費税の正しい金額や適用税率を明らかにする仕組みです。

個人事業主だけに関係がある制度だと思われている方も多いですが、実際には大企業も含め、さまざまな企業が関係する制度となります。

 参照リンク:国税庁 インボイス制度の概要

”インボイス”とは何か?

”インボイス”の正式名称は”適格請求書等”であり、簡単にいえば、”商品/サービスの売手が、買手に対して正確な消費税がいくらかを伝える書類やデータ”のことです。
請求書だけではなく、領収書やレシート、納品書なども”インボイス”に含まれます。

”インボイス”を発行するには、”適格請求書発行事業者”として税務署長から登録を受ける必要があります。
登録ができるのは、消費税の課税事業者のみです。

”インボイス”に決まった様式はなく、手書きでも問題ありません。
また、交付するにあたっては、書面のほか電子データでもよいことになっています。

なお、不特定多数の顧客と取引する小売業や飲食店業及びタクシー業などの事業者は、"簡易適格請求書"の交付が認められています。

”インボイス制度”の開始日は?

”インボイス制度”は、2023年(令和5年)10月01日から始まります。

制度開始日から”インボイス”を発行するためには、2023年(令和5年)03月31日までに”適格請求書発行事業者”に登録する必要があります。

”インボイス制度”の目的は?

”インボイス制度”は、売手が買手に正確な”消費税”の適用税率や消費税額等を伝えることを目的としています。

制度制定の背景には、”軽減税率制度”と”益税”の存在があります。
消費税率が10%に引き上げられる際に、特定品目に関しては、8%の軽減税率が適用されることになりました。

2つの消費税率が併存する中で、どの商品/サービスにどちらの税率が適用され、実際の消費税額はいくらなのかを正確に算出するために、”インボイス”の発行が求められることになったのです。

また、事業者が消費者から預かった税を納税せずに手元に残す“益税”の問題も、”インボイス制度”によって解消につながることとなります。

消費税のしくみがインボイス制度を理解するポイント

”インボイス制度”の把握には、先に”消費税”のしくみを理解しておく必要がありますので、ここで確認しておきましょう。

“消費税”とは、商品/サービスに広くかけられている税のことです。
”消費税”は消費者が負担しますが、消費者が自分で税務署に行って直接納めるわけではありません。

実際には、商品/サービスの事業者が”納税義務者”となり、取引の際に消費者から税金を預かって、代わりに納付しています。

実際の納付税額は、「売上の消費税額ー仕入税額=納付税額」の計算式で算出されます。
消費税が10%だからといって、売上高の10%を納付するわけではありません。

消費税の動きをイメージ図で見てみよう

”消費税”の動きをイメージしやすくするために、ペンの取引を例に考えてみましょう。
わかりやすくするために、構図は単純化しています。

C.インボイス取引流れ図(ver2).20221020

メーカー、文房具屋、消費者の3者がいるとします。

メーカーはペンを作り、文房具屋に税込110円で卸しました。
メーカーはこの仕入れにあたって、文房具屋から消費税10円を預かります。

文房具屋は仕入れたペンを、消費者に税込330円で売ります。
文房具屋は、消費者から消費税30円を預かります。

消費者は、ペンの代金300円に加えて、30円の消費税を支払ったわけです。

さて、メーカーも文房具店も、それぞれの取引で発生した消費税を税務署に納めることになります。

文房具店は消費者から30円を預かりましたが、仕入れのときに発生した””消費税”として10円をメーカーに預けているので、差し引きで「30円-10円=20円」を税務署に納めます。

この差し引きする仕組みを”仕入税額控除”といいます。
メーカーは文房具店から10円を預かっているので、この10円を税務署に納めます。

結果として、税務署は30円分の”消費税””を受け取ることになります。

消費者が300円のペンを購入するときに支払った消費税30円は、このような流れで納税されるわけです。

課税事業者と免税事業者

事業者の種類についても、簡単に押さえておきましょう。
事業者には、消費税の申告・納付が義務化されている”課税事業者”と、申告・納付が免除されている“免税事業者”の2種類があります。

“課税期間”の”課税売上高”が1,000万円を超えると、”課税事業者”になります。
”課税期間”とは、消費税を計算するための期間のことで、原則は1年間です。
また、課税売上高とはその名のとおり、消費税がかかる売上高を指します。

納税義務が発生するかどうかを判断する期間を”基準期間”といい、原則は2年前です。
2年前の課税売上高が1,000万円を超えていれば”課税事業者”になりますし、もしそれまで”課税事業者”だったとしても、基準期間の課税売上高が1,000万円を下回った場合は、届出をすれば”免税事業者”になるわけです。

現行制度でも、”免税事業者”が自分の意志で”課税事業者”になることはできますが、”消費税”の申告義務はありませんでした。

インボイス発行ができるのは”課税事業者”のみであるため、いま”免税事業者”である場合は、課税事業者になるかどうかを検討する必要があります。

それでは、もし文房具屋が”消費税”としての10円分を控除できないとしたら、どうなるでしょうか。

文房具屋は、”消費税”として30円を税務署に納めなければなりません。
つまり、控除できた場合と比べて、10円多く納税することになるわけです。

このように、”仕入税額控除”ができないと、買手が負担する”消費税”の金額が大きくなります。
そのため、”インボイス制度”が開始された後の取引において、買手の殆どは売手に”インボイス”の交付を求めてくると予想されるわけです。

なお、現場の混乱が発生する可能性を考慮して、令和11年09月30日までは、仕入税額の一定割合を控除できる経過措置が設けられています。

発行事業者に登録するべきか考えるためのポイント

”適格請求書発行事業者”に登録したほうがいいのかどうか、今一度考えるためのポイントをお伝えします。

インボイスの発行が求められる取引があるかどうか?

”インボイス”の発行を求められるケースとは、取引先の買手が”仕入税額控除”を希望している場合です。
”インボイス制度”の開始後は、”仕入税額控除”をするためには”インボイス”が必要となります。

前述したペンの取引例を思い出してみましょう。
文房具屋は消費者から30円の”消費税”を預かったものの、自分もメーカーからペンを仕入れる際の”消費税”である10円を預けているため、”仕入税額控除”として差し引き20円の納税で済みました。

ところが、”インボイス制度”が始まったら、文房具屋はメーカーから”インボイス”をもらわないと、この差し引きができなくなります。
そのため、買手は売手に登録事業者になってもらい、”インボイス”の発行を求めてくることが考えられるのです。

一方で、取引先が消費者や免税事業者である場合は、売手は”インボイス”の発行が不要となります。
同様に、事務負担軽減のため”簡易課税制度”を選択した中小事業者が取引相手の場合にも、”インボイス”の発行は不要です。

もし商品・サービスを売ったり仕入れたりする相手が、すべて”インボイス”不要な事業者に該当しているのであれば、登録しないという選択肢も考えられます。

登録したときのメリット/デメリットを比較

発行事業者になった場合のメリット/デメリットを考えてみましょう。

メリットとして、納税義務者になることから、信用が得られやすくなると考えられます。
また、買手は今までどおり仕入税額控除ができるため、取引を継続できる可能性が高くなります。

デメリットとしては、課税事業者になるため、毎年”消費税”を申告・納付する必要が出てきます。
事務作業も増えるほか、最初の時期は、適格請求書等を作る仕組みを整えるためにフォーマットを用意したり、システムを変更/導入したりといったことも必要になります。

登録しないときのメリット/デメリットを比較

発行事業者にならない場合のメリット/デメリットも考えてみましょう。

メリットは、引き続き免税事業者であるため、”消費税”を申告・納付する必要がないことです。
事務作業も今までと変わりません。

デメリットとしては、”インボイス”が発行できないことから、”仕入税額控除”を求める買手との取引を断られる可能性が出てきます。
また、「あの会社は税を払っていない」と思われてしまう信用面のリスクも考えられます。

まとめ

今回は、売手側の立場から見た”インボイス制度”について解説させていただきました。

制度開始や登録期限が迫るなかで、さまざまな点について確認や準備が必要です。
取引先と相談しながら、今後の事業や取引の在り方についてご検討いただければと思います。

”インボイス制度”に伴い、当社との取引についてご質問等がございましたら、以下のお問い合わせページよりご連絡ください。

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今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。


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