2021.09.08

STXは扱い辛い?!ハイテンパイプの加工性/スプリングバック/施工性について。

普段から農業用ビニールハウスにハイテンパイプを採用しているお客さまから、私たちのハイテンパイプSTXも試してみたいというお問合せが増えています。

そして同時に、私たちの厚み1.6mmと1.2mmのSTXは他社のハイテンパイプ700N級と比べ強度が高いので"曲げ加工が難しいのでは?"と不安な声でご質問をいただくことが多くあります。

そこで今回は、農業用用途のハイテンパイプの比較として、外径31.8mm厚み1.6mmのSTXと他社ハイテンパイプ700N級を同条件で曲げた場合、加工性/スプリングバック/施工性に”どのような差があるか?"をお客さまと一緒に検証しましたので、その結果をご紹介させていただきます。

”スプリングバック”とは?

先ず”加工性”や”施工性”は比較的分かりやすい言葉ですが、”スプリングバック”はあまり聞き慣れない言葉だと思いますので説明させていただきます。

”スプリングバック”とは、鉄パイプ等の鋼材を曲げた時に、曲げた型から外すとある程度復元する現象、または復元しようとする力のことを言います。

鋼材を曲げた時に、外側には引張られる力と内側は圧縮される力が働きます。スプリングバックは、”ニュートラルラインエリア”といわれる中央付近の引張りも圧縮の影響も小さい部分が元の形に戻ろうとする為に起こる現象です。 

[JP][Blog]スプリングバック

この”スプリングバック”は鋼材の種類によって異なる為、STXの様に今迄あまり馴染みのない種類の鋼材を使われた時はそれ迄の経験/知見とは大きく異る事があるので、戸惑われる方も多いと思います。

曲げ加工テストの内容

今回の曲げ加工テストは、ハイテンパイプ用の曲げ加工機を使用し同じ条件で外径31.8mm厚み1.6mmのSTXと他社ハイテンパイプ700N級を曲げた場合の”加工性”と”スプリングバック”の差を検証し、更に曲げたパイプを利用して農業用ビニールハウスの”施工性”についても検証しました。

加工性のテスト
曲げ加工機のパワーを私たちのSTXと他社ハイテンパイプともに同じにし、曲げ加工を実施しました。また、曲げ加工機のパワーを最大値にした場合も検証を行い、折れやワレが発生しないか検証しました。

スプリングバックのテスト
同じ条件で曲げた場合に、私たちのSTXと他社ハイテンパイプの曲げた角度にどれだけ差がでるかを計測し、”スプリングバック”の差を検証しました。

農業用ビニールハウスの”施工性”のテスト
アーチパイプどうしを天井ジョイント(18度)でつなぎ、間口6.0mの農業用ビニールハウスを建てる場合の”施工性”を検証しました。

なお、加工テストのハイテンパイプは、以下2種を使用し曲げ加工を行いました。

種 類 引張り強さN/㎜2  サ イ ズ
当社ハイテンパイプSTX 780

外径31.8㎜×厚み1.6㎜×6,000㎜

他社ハイテンパイプ 700

外径31.8㎜×厚み1.6㎜×6,000㎜

曲げ加工テストの結果と施工性の検証

加工性について
私たちのSTXおよび他社ハイテンパイプともに折れやワレもなく曲げ加工ができました。また、曲げ加工機のパワーを最大値にした場合でも座屈は発生せずに問題なく曲げることができました。
曲げ加工-曲げ部-1スプリングバックについて
同じ条件で曲げ加工を実施した場合のスプリングバックの差は、他社ハイテンパイプは曲がりが深かったのに対しSTXは曲がりが浅く、他社ハイテンパイプと30cmほど角度に差があり、”スプリングバック”についてはSTXの方が強いことがわかりました。

曲げ加工-スプリングバック-1※内側:他社ハイテンパイプ700N級・外側:当社ハイテンパイプSTX

つまりスプリングバックが強いという事は、元に戻ろうとする”復元力”が強いということです。より分かり易い様に当社が以前実施いたしました私たちのSTX31.8㎜×1.6㎜のアーチパイプ破壊試験動画をご用意いたしましたので、下記よりご覧いただければ幸いです。

農業用ビニールハウスの”施工性”について
18度の天井ジョイントを使用したアーチパイプ間口6.0m農業用ビニールハウスを建てる場合の"施工性"は、私たちのSTXはスプリングバックが強いため反発力があり、他社のハイテンパイプと比べると建てにくさがあることがわかりました。

まとめ

今回はお客さまと一緒に、農業用用途のハイテンパイプの比較として、外径31.8mm厚み1.6mmのSTXと他社ハイテンパイプ700N級加工性/スプリングバック/施工性の検証を実施した内容をご紹介しました。

私たちのSTXは他社のハイテンパイプに比べて強度が高い為、自ずとそのスプリングバックは大きくなります。つまりSTXはその復元力の高さ故に扱いがし辛くなり、施工性が課題となる事が分かりました。

対策として使用する天井ジョイントの角度を狭くすることが考えられますが、現時点では詳細な対応ができておらず発展途上ですので、今後シッカリと研究開発を進めて参りたいと思います。

また私たちのSTXに限らずハイテンパイプは従来材に比べて”スプリングバック”が大きいので、農業用ビニールハウスに使用する場合には、”自力施工”ではなく、なるべく専門の施工業者さまに依頼する事が望ましいと思われます。

一方でSTXのその鋼材としての高い性能と可能性を最大限に活かしつつ、更に一人でも多くのお客さまに安全/安心且つ経済的にご活用いただくには、今後とも私たちが更に主体的に様々な検証を現場/現実/現物で進め、その経験/ノウハウを皆さまに共有する事が必要だと考えております。

もしご自身の曲げ加工機でハイテンパイプを曲げた事がなく不安だったり、現状の曲げ加工機ではハイテンパイプがうまく曲げられなかったというお客さまがいらっしゃいましたら、お気軽に下記のご相談フォームよりご連絡をいただければ幸いです。何卒宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。ハイテンパイプ曲げ加工 相談はこちら▷


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