2023年01月下旬、日本列島は10年に1度という大寒波に見舞われました。厳しい寒さや大雪のニュースは記憶に新しいことと思います。
ビニールハウス栽培を行なっている農業従事者の皆様にとっては、今回のような大雪のみならず、近年多発する台風や豪雨といった自然災害のリスクに備えることは重要な課題といえます。
今回はビニールハウスを守る選択肢として、公的な保険制度の1つである"園芸施設共済"についてご紹介いたします。さらに、掛金を安くするためのポイントも併せてお伝えいたしますので、参考にしていただければ幸いです。
"園芸施設共済"の概要
"園芸施設共済"は、農業保険法(昭和22年制定)に基づいた"農業共済"の1つです。
"農業共済"は、自然災害等によって出た損失をカバーする制度で、対象品目ごとに6種類に分けられており、その中の1つである"園芸施設共済"は、ビニールハウスをはじめとする園芸用施設の損害を補償するものです。
掛金の半分を国が負担しているほか、補償対象の幅広さや掛金の割引方法が複数用意されている点が特徴です。以下で詳しく解説いたします。
参照リンク:農林水産省 農業共済
補償の対象となる施設は何か
具体的に施設としては、広く普及しているビニールハウスのほか、ガラス温室や雨除け及び多目的ネットハウス等が補償対象となっています。
この他にも加入者の選択によって、暖房器具や発電設備及び栽培棚等の附帯施設や、損害を受けた施設の撤去費用についても、補償対象に追加することが可能です。
どのような災害で補償されるのか
一方で対象となる災害は、台風や豪雪/ひょう/地震や津波といった自然災害はもちろん、火災や爆発、車両の衝突及び飛行機の落下といった事故や、鳥獣による被害等も幅広く補償されます。
施設の補償額はいくらか
標準コースの場合は、新築時の共済価額を100%として、最大8割までの金額が補償されます。共済価額とは、加入時におけるビニールハウス等の価値を金額で示したもので、施設本体や付帯施設の時価額を合計して算出されます。
補償の割合を意味する”付保割合”をどれくらいにするかは、8割/7割/6割/5割/4割の中から、加入者が自分で選ぶことになります。耐用年数が経過し、施設の価値が年々下がるのに合わせて補償額も減っていきますが、耐用年数の基準を過ぎてしまった古いビニールハウスでも、必ず4割は補償されることになっています。
実際に支払われる共済金は、現地で行われる損害評価の調査結果に基づき、” 支払共済金額(補償額) =損害額 × 付保割合”で計算されます。
注意点として、補償対象となる損害額には基準があります。標準コースでは、損害額が3万円又は共済価額の5%を超える場合に補償されることとなっています。もっと小さい損害額でも補償を受けたい場合は、特約を付けることが必要になってきます。
参照リンク:農林水産省 園芸施設共済の概要(令和3年4月)
掛金の計算方法
農業者様が支払う掛金は、"農業者の負担額=共済掛金-国庫負担額"で計算されます。
"園芸施設共済"では、国が掛金の50%を支払うルールとなっています。そのため、農業者様が負担する掛金は、実際の掛金から国庫負担額、すなわち国が支払った後の残り半分になります。例えば本来の掛金が6万円だったとしたら、農業者様が支払うのは3万円になるということです。
なお実際の掛金は、"共済掛金=共済金額 × 共済掛金率× 共済責任期間/12か月"で計算されています。共済掛金率は施設区分等によって異なり、3年ごとに改定されます。
補償期間はどれくらいか
補償期間を意味する共済責任期間については、掛金を支払った日の翌日から数えて”1年間”となっています。
補償を手厚くする特約とは
更に特約をつけることで、補償内容を手厚くすることが可能です。
例えば、「古いビニールハウスだけれど、受け取れる金額を増やしたい」という場合は、”復旧費用特約”を付ければ、必ず復旧することを条件として、新築時価値の最大8割まで補償されます。
さらに、”復旧費用特約”の付保割合を8割にすると、”付保割合追加特約”を追加できます。最大2割の補償を上乗せできるもので、”復旧費用特約”と組み合わせれば、新築時価値の100%を補償してもらうことも可能です。
また、小さな損害でも共済金を受け取りたい場合は、200円程度を掛金に上乗せすることで、補償される損害額を”3万円を超える場合”から”1万円を超える場合”に引き下げることができます。
保険の掛金を安くする4つの方法
「保険はかけたいけれど、なるべく掛金を安くしたい」という方もいらっしゃるかもしれません。こちらの項では、"園芸施設共済"の掛金の負担を抑えるための4つの方法をご紹介いたします。
1. 共済金の受取額を少なくする
"園芸施設共済"は、共済金の受取額が少ないほど掛金率が年々減っていき、最大で5割引きになる仕組みとなっています。ある程度は自費で対応できるという方は、受け取る共済金を少額にすることも選択肢となります。
2. 大きな損害だけを補償する
損害額が大きい場合だけを補償の対象とすることで、掛金が大幅に割り引かれます。
具体的には、標準コースは”3万円を超える損害”が補償対象となっていますが、この他にコースとして”10万円を超える損害”、”20万円を超える損害”、”50万円を超える損害”、”100万円を超える損害”の4種類が用意されています。10万円の場合は掛金が43%割引、100万円の場合は96%割引となります。
一方でどのコースを選んだ場合でも、ビニールハウスが全損してしまった場合には、標準コースと同じ補償が受けられるようになっています。
3. 生産部会等の集団で加入する
個人ではなく集団で共済に加入すると、掛金が5%割引きになります。集団の例としては、生産者同士の組織である生産部会等が挙げられます。
4. ビニールハウスを強靭化する
31.8㎜以上の太いパイプを使っていたり、筋交や中柱を使って補強したりして強靭化したパイプハウスは、掛金が最大で15%割引きになります。
あらかじめ耐久性の高いパイプを使うことによって、災害に強いビニールハウスになるだけでなく、掛金の負担を減らすことにもつながります。
掛金を安くする強靭なビニールハウスには"STX"がオススメ
自然災害に強いビニールハウスをご希望であれば、"STX"がオススメです。
"STX"とは、日本製鉄株式会社と当社が共同開発した、農業用パイプの用途を主としたハイテンパイプです。強度と復元力が高いため自然災害に強く、防錆性にも優れているため、ビニールハウスの部材に適しています。
"STX"は、"園芸施設共済"で掛金の割引対象となる"太さ31.8㎜以上"をご用意しております。国土交通大臣指定建築材料として認定を受けている"STX"のサイズは、以下の通りです。
※水色でハイライトされているサイズが当社の製造可能サイズです。
肝心のパイプ自体の強度も高く、優れた耐久性を実現しています。
具体的には、従来製品のSTK400に比べて、STXは基準設計強度が約2倍以上となっています。また、引張り強さ/降伏点又は耐力/伸びといった点についても、従来材の性能を上回っています。
当社では、"STX"を農業用ビニールハウスに用いたときのシミュレーションも行っております。
結果としては、ハウスアーチは風速55m/s、積雪42cmまで耐えることが分かり、従来品のSTK400と比べて耐候性の向上が期待できる結果となりました。シミュレーションの詳細については、以下のブログをご覧ください。
ブログ:インフレにも負けない農業用ビニールハウスを!!高抗張力鋼管STXとSTXハウスについて。
また、栃木県の国立大学法人宇都宮大学の協力を得て、実際に"STX"を用いた農業用ビニールハウス”STXハウス”を施工しています。以下の記事で解説しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
ブログ:更に強靭な農業用ビニールハウスを。大和鋼管が皆さまと取組む”STXハウス”というチャレンジ。
まとめ
今回は、公的な保険制度の1つである"園芸施設共済"およびビニールハウスにオススメの当社のパイプ"STX"についてご紹介いたしました。
ビニールハウスは農産物の生産に不可欠な資産です。様々なリスクに備えるために、保険への加入やハウス自体の強化をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
"園芸施設共済"についてさらに詳しく知りたい方は、お住まいの都道府県のNOSAIまでお問い合わせください。
参照リンク:全国のNOSAI団体 その他の関係団体
記事内でご紹介した"STX"についてさらに詳しく知りたい方は、以下の資料DLページをご活用ください。
また、他にも何かご質問やご相談等がございましたら、以下のお問い合わせページより、お気軽にご連絡をいただければ幸いです。
大和鋼管工業では、皆様の"為になるお役立ち"に繋がる情報発信を続けて参りたいと思いますので、今後とも宜しくお願いいたします。最後までお読みいただき感謝申し上げます。ありがとうございました。
- タグ:
- 農業資材