2022.06.01

インフレにも負けない農業用ビニールハウスを!!高抗張力鋼管STXとSTXハウスについて。

温室や農業用ビニールハウスを使用する施設園芸は、路地栽培とは異なり作物の栽培環境をコントロールする事で季節や天候の影響を受けにくく収穫量を安定させることが可能で、より多くの収益を見込むことができます。

しかし、足元の状況は円安や物価上昇により農業資材の価格が上昇しているため、温室や農業用ビニールハウスを新しく建てたり建て直し等の投資し辛く、更にロシア/ウクライナ危機等を背景に起こっているインフレは、石油由来の燃料や副資材及び肥料の高騰に直接的に繋がっており、中々青果物の価格があがらない日本の現状では、施設園芸への参入や事業拡大が極めて困難な環境となっています。

さらに、日本は台風や積雪等の自然災害が多く令和元年房総半島台風ではおよそ35,000棟の農業用ビニールハウスが被害を受ける等、温室や農業用ビニールハウスの耐候性も課題となっています。

過去3年間の自然災害

農業用ビニールハウス 被害件数

令和元年房総半島台風

34,621件

令和元年東日本台風(台風第19号)

8,262件

令和2年台風第10号

3,313件

令和3年豪雪

21,604件

 出所:農林水産省HPのデータから抜粋・集計

今回は、このような施設園芸のコスト削減や強靭化のニーズに対して当社が取り組んでいる高抗張力鋼管STXを活用する際に想定される経済的メリットのシミュレーションと、私たちが挑戦しているSTXハウスの取組みについてご紹介します。

 STXとは

STXは、日本製鉄株式会社と私たち大和鋼管工業株式会社が共同開発した、従来の農業用ビニールハウスに使われる鋼管に比べ、2倍の強度を持つ高抗張力鋼管です。

従来品のSTK400に比べ、かなり高い700N/㎟以上の引張強さを持ち、農業用ビニールハウスの材料として活用した際には、台風/積雪などの自然災害に強い設計が可能になります。

更に、アーチパイプのパイプ自体のコストはアップしますが、ピッチを拡げることにより農業用ビニールハウスに使われる資材の部材数の減少のみならず施工のコストも下げる事が可能になり、更にサイズを調整する事で採光率が高まり青果物の育成効率が上がるので、トータルコストの削減を実現することが可能になります。

 

パイプ画像-STX

 

従来品をSTXに置換えた場合のシミュレーション

 過去に徳島大学と共同で行なった研究では、ハイテン鋼管を用いた間口が6mもしくは7.2m/奥行が10m/アーチピッチが0.5m/軒高(肩高)が1.65m/天高が3mの、下図の様な農業用パイプハウスを対象に、FAP-3という汎用立体フレーム弾性応力解析ソフトを用いて、様々な風荷重ならびに積雪荷重に対するパイプハウス全体の応力度分布/変位等を解析し、各使用鋼種に対する許容荷重を明らかにしました。
[JP][Blog]徳島大学共同研究概略図
ここでは、徳島大学との共同研究結果を用いて、金具や基礎をしっかりして動かないものと仮定し、ハウスアーチのパイプが破壊される強度を私たち独自でシミュレーションを行い、従来品(STK400)を使用した場合とSTXを使用してアーチピッチを50cmから75cmに拡げた場合を比較した結果をご紹介します。
 

製品名

鋼種

パイプサイズ

ハウス
間口

アーチ
ピッチ

ハウスアーチ
強度

ハウスアーチ
コスト

風速[m/s]

積雪
[cm]

パイプ
単価比

アーチパイプ
コスト比

従来品

400N級

Φ31.8mm x 1.6mm

7.2 m

50cm

44

26

1

1

STX

780N級

Φ31.8mm x 1.6mm

7.2 m

75cm

55

42

1.3

0.9

 
先ず強度について比較すると、STXは従来品のSTK400を使用した場合と比べて、対風荷重と対雪荷重の面で優れているため、およそ25%耐候性が向上することが期待できます。
 
続いてコスト面を比較すると、付加価値の高いSTXが従来品の1.3倍の単価であると仮定した場合でも、アーチピッチを拡げることにより使用する本数が減るため、アーチパイプコストはおよそ10%低減することが見込まれます。
 
このように私たちのSTXを採用してアーチピッチ/パイプサイズを調整する事で、従来の農業用ビニールハウスと比較して"低コスト"で"強靭な"農業用ビニールハウスの設計が可能になります。

STXハウスの外部機関認証へ向けて

今私たちは、STX(φ31.8 x 2.0mm 700N級)を使用したアーチパイプで風速50m/s及び積雪50cmの災害に耐えることができる農業用ビニールハウス”STXハウス”の設計に模索しながら挑戦しています。
 
過去の気象データから、日本列島のおよそ50%が最深積雪20cm以上の積雪地であり、さらに日本海側を中心に、その大部分が最深積雪50cm以上の豪雪地に分類されているとされ、積雪50cmに耐えられる構造は広い範囲で求められています。
 
風速50m/sの強風については、自動販売機が移動したり電柱や街灯が倒れるといったレベルの強風で、気象庁のまとめによると、平均風速50m/s以上の観測記録があるのは、静岡県の富士山や高知県の室戸岬及び沖縄県の宮古島など全国9地点になります。
 
つまり、農業用ビニールハウスが風速50m/s及び積雪50cmの災害に耐えることができれば、日本全国という広範囲において施設園芸強靭化を実現できると私たちは考えました。
 
また、一般社団法人 施設園芸協会が作成した"低コスト耐候性鉄骨ハウス施工マニュアル"の風対策でも風速50m/s、雪対策では積雪50cm未満の積雪の単位体積重量を1.0kg/cm・㎡とすると、積雪50cmに相当する新雪50kg/㎡の積雪量が耐候性の目安数値となっています。
 
試行錯誤の結果、既に行なった構造計算では理論上の条件を満たすことができましたが、お客さま一人ひとりへ確かな安全/安心をお届けする為にも、現在外部機関認証を得る準備を進めています。

まとめ

今回は、高抗張力鋼管STXを活用する際に想定される経済的メリットのシミュレーションと、私たちが挑戦しているSTXハウスの設計への取組みについてご紹介させていただきしました。

物価上昇の局面では、積極的な投資を行い難い状況ですが、優れたハイテン鋼管であるSTXを採用し設計を工夫する事で、コストを抑えたまま施設園芸強靭化を実現することが可能です。

今後も当社はハイテンという強みを活かして、更に日本の農業の為になる製品・サービスの企画/開発を行なっていきたいと考えています。

今回ご紹介した高抗張力鋼管STXについてご興味がある方は、以下のフォームよりカタログをダウンロードできますので、お気軽に活用してください。最後まで読んでいただきありがとうございました。引続きよろしくお願い申し上げます。

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