ハイテン鋼管で資材高騰・人手不足を突破?!"STX"の活用方法とコスト削減のメカニズムについて。

先日報じられたトヨタ自動車と日本製鉄の「10月から支給鋼材で1㌧あたり約1万2000円の値上げ」への合意は、自動車業界のみならず鉄鋼関連の取引を行なう他業界でも指標となる"チャンピオン交渉"として認識されており、電機・造船・建設・土木・農業資材など幅広い分野への波及が予測されています。

こうした資材高騰や人手不足が深刻化する今、長年慣れ親しんだ従来材を従来通りの仕様で使い続けることは、必要以上に重く太いパイプにしてしまったり、資材費のみならず輸送費や施工人件費などについても、"無駄なコスト"を支払い続けてしまう可能性があります。

今回のブログでは、皆さまが改めて十分な知識と理解をもって最適な製品選定を行えるよう、大和鋼管の"高張力鋼管"である"STX (エスティーエックス)"の性能と、従来材からの置き換えによって実現しうるコスト削減メカニズムについて、具体的な事例に数値を交えて分かりやすく解説します。

STXカタログ

1. ハイテン鋼管"STX(エスティーエックス)"とは?

"STX"は、日本製鉄株式会社と大和鋼管工業株式会社が共同開発した"高張力鋼管"、いわゆる"ハイテン鋼管"の製品群の総称です。

最大の特徴は、一般的な構造用鋼管である"STK400"と比較して約2倍という圧倒的な強度を備えている点で、機械的性質を数値で比較すると、その違いがよくわかります。

種類

機械的性質

設計基準強度
(短期許容応力度)
[N/㎟]

引張強さ
[N/㎟]

降伏点
又は
耐力
[N/㎟]

伸び
[%]

G3444
"STK400"

一般構造用炭素鋼鋼管

400 235 23以上 235

"STX"(700N)

ハイテン鋼管
厚み2.0mm以上

700

570 10以上 490

"STX"(780N)

ハイテン鋼管
厚み1.2mm、1.6mm

780 - - (546)

※STX (700N)の基準強度(短期許容応力):490N/㎟(国土交通大臣認定 No.MSTL-0197)
※STX (780N)の基準強度(短期許容応力):546N/㎟(引張り強度780N/㎟ x 70% = 546N/㎟)

つまり"STX"は、鋼管として単に硬いだけではなく、"しなやかさ"もしくは"柔軟性"強度と柔軟性が生み出す復元力である"強靭さ"を両立させている商品な訳です。

2. "STX"が活躍する主な用途

現在"STX"は、その優れた強度と復元力を活かし、多様な分野で採用が進んでいます。

道路資材分野

カーブミラー支柱、道路標識柱、防護柵

強風による風圧や突発的な外部衝撃に耐えるため、高い設計基準強度が求められる屋外構造物に最適です。

"STX"の強度(一般材の約2倍)を活かしてパイプを細径・薄肉化(ダウンサイジング)できるため、性能を維持したまま、塗装コストを削減する設計が可能になります。

[JP]標識_止まれ

農材分野

農業用ビニールハウスやパイプハウスのアーチ材/補強パイプ

近年激甚化する台風の暴風や豪雪に耐えうる"強靭なハウス設計"に貢献しています。部材の"軽量化"と"高強度"を両立し、現場における設営・組み立て負荷(人手不足対策)を大幅に低減します。

さらに、高強度化に伴うアーチピッチの拡大や鋼管のサイズダウンにより、ハウス全体のコスト削減を実現。パイプが細くなることでハウス内への遮光を減らし、作物の日照条件 (光合成効率)を改善するという付加価値も生み出します。

[JP]20220209_Blog_STXハウス[東栄産業]

仮設テント分野

学校行事、防災・災害対策、各種イベント会場の仮設組み立てテント

設営・撤去時の"軽量性"と、公共空間に馴染む"意匠性"が同時に重視される分野です。

大和鋼管の独自技術である"ポストジンク製法"で製造された"STX"は、均一な亜鉛めっき層の上に高耐候トップコートを施しているため、優れた防錆(サビ防止)力と美しい銀白の光沢を長期間維持します。

更に軽くて強いため、設営作業の安全性を高めつつ、資材としての耐用年数を延ばし長寿命化 (ライフサイクルコストの削減)を実現します。

テント材

3. 従来材"STK400"と"STX"の比較とコストメリットを数値で検証

"STX"を採用する最大のメリットは、高い強度を活かした"パイプの小径化・薄肉化等の"ダウンサイジング"やピッチ拡大による"施工本数の削減"によってトータルコストを低減できることです。

以下に具体的な事例に数値添えて、その効果をご紹介します。

事例①: 道路資材 (標識柱・カーブミラー支柱等)

従来材"STK400"外径89.1mm x 厚さ4.2mm から"STX"外径76.3mm x 厚さ2.8mm へ変更した場合の物理性能の比較は以下の通りです。
 
項目
従来材 (STK400)
STX (ハイテン鋼管)
効果・改善率
パイプサイズ
89.1mm x 4.2mm
76.3mm x 2.8mm
外径・肉厚のサイズダウン
単位重量
8.79 kg/m
5.08 kg/m
1mあたり3.71kg(約42%)
軽量化
基準強度
235 N/mm²
490 N/mm²
約2.08倍の強度アップ
最大曲げモーメント
534 kN・cm
562 kN・cm
強度が5.24%向上
パイプ表面積
28.0 cm²/m
24.0 cm²/m
表面積が14.3%縮小

得られる経済的・環境的メリット

  • 輸送/施工コストの削減

重量が約42%軽量化され、トラック1台あたりの積載効率が飛躍的に向上し、物流費を抑制できます。

また、現場での搬入や建方作業の負担が軽くなり、作業効率化と人件費削減に繋がります

STX作業効率アップ

  • 塗装費用と環境負荷の削減

パイプの外周表面積が 14.3%小さくなるため、塗装工程で必要な塗料の量を減らすことができます

これにより塗装コストを直接抑えられるだけでなく、塗料から揮発する"VOC(揮発性有機化合物)"の排出削減という環境面での配慮も実現できます。

 

事例②: 農業用ビニールハウス (アーチパイプ等)

従来材 "STK400"外径42.7mm x 厚さ2.3mm から "STX"外径31.8mm x 厚さ2.0mm/1.6mm へ置き換える、あるいはピッチを調整するアプローチです

例えば、"STK400"外径31.8mm x 厚さ1.6mm、ピッチ50cmで設計されたパイプハウスを、高強度の"STX"外径31.8mm x 厚さ1.6mm、ピッチ75cm へ置き換えたシミュレーションでは以下の成果が得られています

得られる経済的・環境的メリット

  • 耐候性(強靭化)の向上

対風荷重・対雪荷重に対する強度が向上し、ハウス全体の耐候性が約25%向上します。

  • 日照条件の改善

ハウス使用部材の本数が少なくなることで、パイプ径が細くなることでハウス内の遮光が減り、作物の光合成や成長促進による収穫量アップも期待できます。

  • 資材コストの削減

"STX"自体の製品単価が従来材より高い場合(仮に1.3倍)でも、アーチピッチを50cmから75cmに広げることで、使用本数を33%削減できるため、アーチパイプ全体の購入コストは約10%低減します。

SXX強度採光性ピッチ

4. STXを使用する際の注意点

優れたコストメリットを持つ"STX"ですが、高張力鋼管ならではの物理的特性に伴う注意点があります。

施工で失敗しない為に、以下の2点をあらかじめ考慮することが重要です。

注意点①:塑性変形(曲げ・プレス加工)に大きな力が必要

"STX"は引張強度および降伏点が高いため、一般的な"STK400"に比べて曲げ加工やプレス加工を行う際に大きな力が必要となります。

加工機械の能力によっては、従来のセッティングのままでは曲げ加工が困難なケースがありますので、自社の既存設備で加工が難しい場合は、適切な能力を持つ加工専門業者の手配や相談をおすすめします。

注意点②:溶接(熱影響)におけるリスクと"乾式接合"の推奨

薄肉化したハイテンパイプに現場で溶接を行うと、熱影響によって鋼材本来の強度特性が低下する懸念があり、また"亜鉛メッキ鋼管"の溶接は"気孔欠陥(ブローホール・ピット)"が発生しやすく、高度な溶接技能が必要とされます。

この課題を解決するため大和鋼管では、ボルト締めや専用金具による接合によって溶接を伴わない"乾式接合"での施工を推奨しています。

"乾式接合"を採用することで、接合部の品質を均一に保てるだけでなく、熟練溶接工の人手不足問題への対応や、"溶融亜鉛めっき"の工程省略による工期短縮・CO₂削減効果を同時に得ることができます。

なお、溶接に関する詳しい解説や技術的な情報については、過去のブログ記事にて詳しくご紹介しております。ぜひ下記のリンクよりあわせてご参照ください。

 ブログ:ハイテンパイプの可能性を更に!!乾式接合の開発について。

 ブログ:メッキ鋼管の溶接をしたいんだけど・・・。その難しさと作業上の注意点について。

まとめ

資材価格の高止まりや人件費・輸送費の上昇が続く現在の産業環境において、従来材をそのまま使い続けることは不要な支出を重ねるリスクを伴います

強度が約2倍のハイテン鋼管"STX"を活用すれば、外径のダウンサイジング、薄肉化による軽量化、施工本数の削減が可能となり、資材費・輸送費・現場施工費を含めたトータルコストの削減と構造物の強靭化を同時に実現できます

自社の設計基準や現場の条件に合わせて、正しく"STX"を選定し活用することが、コスト競争力を高める強力な一手となります。

当社の”STX”の製造実績や"ストック品/オーダー品"及び受注生産の最低ロットをご紹介している記事がございますので、下記リンクよりご参考ください。

 ブログ:STXをどう活用?!そのストック品/オーダー品及び最低ロットについて。

"STX"を活用したコスト削減シミュレーションや、具体的なサイズ選定、製品仕様などメッキパイプに関するご相談/お見積りは、以下のフォームよりお気軽にお問い合わせください。

新規CTA

最後までお読みいただき感謝申し上げます。引き続きよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

執筆者紹介

小原 学
小原 学
"施設園芸技術指導士補"の資格を持つ、勤続15年目の大和鋼管工業(株)企画部企画社員。大阪支店での豊富な営業経験から、農業資材/電線管の業界動向と現場での活用ノウハウに精通。資格に裏付けられた専門知識と顧客視点の融合で、読者の皆さまの業務効率化/製品選定に直結する実用的な情報を提供。

RELATED POST関連記事


RECENT POST「話題/トピックス」の最新記事