2022.05.25

世界的なインフレをどう乗り切る?!製品値上げに関するプレスリリースの背景/経緯について。

私たち大和鋼管は、2022年05月20日に06-07月出荷分からの製品値上に関するプレスリリースをさせていただきました。

鋼材値上げ

足元の鉄鋼製品市況は、海外では世界最大の粗鋼生産量を誇る中国の一部メーカーが、05月に販売価格の引き下げを行った事や、国内では、電炉メーカーが6月の販売価格を据え置く中、国内高炉メーカーは連続月で値上を行う等、国内と海外/高炉と電炉といった地域や業種により差が生じ混沌としている状態です。

今回は、私たちが行った製品価格の値上げに関するプレスリリースの内容と、前述の通り不透明な鉄鋼市況の変化の中で、どうにかお客さまの為になるお役立ちを実現すべく、値上の方針を打ち出した背景/経緯についてご説明させていただきます。

私たちが発表したプレスリリースの内容について

私たちは、2022年06-07月出荷分から単管パイプおよび農業用鋼管電線管などメッキ鋼管の他、主に農業用ハウス向けのカラー鋼管であるスーパーカラーを含みハイテン鋼管を除く全品種について、先ず2022年6月出荷分より亜鉛メッキ目付量の仕様に応じた値上げを実施し、2022年7月出荷分より全品種一律トン当たり2万円以上の値上げを実施し、06-07月の合計は最大で3万5千円の追加値上げを実施する意向です。

一方で、超軽量ハイテン鋼管スーパーライト700及びその他のハイテン鋼管についても同様に、2022年06月出荷分より亜鉛メッキ目付量の仕様に応じた値上げを実施し、2022年07月出荷分より合計でメートル当たり68.5以上を追加値上げし、2020年11月からの累計値上げは259.5以上となります。

具体的に亜鉛メッキ目付量に応じた値上げについては、亜鉛目付量120g/㎡毎にトン当たり5千円を目安とし、ポストジンク鋼管の単管パイプはトン当たり5千円、ドブ付めっき鋼管と同等の性能を誇るパーフェクトポストジンク鋼管の農業資材はトン当たり1万円、鋼管杭はトン当たり15千円値上となる想定です。

背景①亜鉛メッキ目付量に応じた値上げ

以前のブログでもご紹介しましたが、亜鉛地金の建値は2022年04月上旬でトン当たり62万8千円と、約2年前の2倍以上に高騰している状況で、単管パイプ1メートルあたりでは累積で6.83円のコストアップとなっている状況です。

 ブログ:亜鉛の値段はドコまであがる?!コスト状況の背景と製品価格へのインパクトについて。

亜鉛地金の建値や亜鉛メッキに必要な資材やエネルギー価格の上昇を受けて、高炉メーカーや溶協メーカー各社は、ドブメッキ鋼管に関しては外数でトン当たり1万5千円の追加値上げを実施する方針の業者さまも多数いらっしゃいます。

一般的なドブメッキ鋼管の目付量は、片面それぞれ300g/㎡以上である事に対し、当社の製造ラインは独自の造管プロセスにより自由に亜鉛付着量を調整することが可能です。

このような背景を踏まえて私たちは、亜鉛目付量に応じた値上げを実施する事で、亜鉛地金や亜鉛メッキに必要な資材やエネルギーのコストアップを可能な限り抑制しつつ、これからも安定供給の継続を実現していきたいと考えています。

勿論、”ポストジンク”の内面に採用されている”水性亜鉛無機コーティング”のミズエコや、外面を白サビから守るクロムフリーコーティングのトップコート等の副資材の材料価格や、造管に必要なエネルギーコストも高騰していますが、此等への対応にも自助努力で、可能な限りコストを抑制し生産効率の向上に努めて参りたいと思います。

背景②母材の値上分

国内高炉メーカーは、以前のブログでもご紹介させていただいたとおり、主原料や副資材及び電気代/ガス代等のエネルギーコストの高騰や、ゼロカーボンスチール等の環境対応への研究開発コストを捻出すべくメタルスプレッド拡大に取り組んでおり、足元の2022年05月と06月連続で、店売およびリロール/パイプ向け薄板製品を値上げする方針で、同期間での累計値上価格はトン当たり3万円となっています。 

既に私たちは、2022年05月より全品種をトンあたり1万円の値上げを発表し実施させていただいておりますが、今後想定される母材熱延コイルの値上り分のコストアップを、自社努力だけでは到底吸収できないと判断し、2022年07月出荷分より母材値上分の全品種2万円以上の値上を実施させていただく判断をいたしました

背景③国際的な鉄鋼市況について

足元では、世界規模で緩やかな需要増が見込まれていますが、中国では主要都市のロックダウンにより物流が滞り、需要も後退傾向にある様相で、2022年05月上旬頃から中国国内のホットコイル相場は、2月下旬以来トン当たり5千元≒9万5千2百円 (2022年05月20日時点の為替レート: 1元 = 19.04円)を割り込み、中国の鉄鋼市況は下がっている状況です。

中国 熱延コイル相場 グラフ(単位:元) 

(仮)中国市況
 

中国は、世界最大の鉄鋼需要国であるとともに供給国でもあるため、国際相場に与える影響は大きく、国策として目指しているカーボンニュートラルの取組を念頭に、そもそも鉄自体が大幅な増産ができない状況が一貫して続いていますが、主要都市のロックダウンによる需要低迷に加え為替も有利に働いている為、国内の在庫が履けず輸出量が増えている状況です。

特に、東南アジアのホットコイル市況は、ロシア/ウクライナ情勢の影響から、国際的にスラブやビュレット等の半製品の流入が滞った影響で一時高騰傾向が顕著でしたが、現在は中国からの輸入が増加傾向になり、価格も下落基調が強まっています。

これらの現状を踏まえると、中国経済の先行きは見え辛い状況ですが、主要都市でのロックダウンが解除され次第、中国政府の主導でインフラ整備等の公共事業を軸に急速な経済の立て直しが図られ、鉄鋼製品の需要が増し再び鉄鋼製品価格が上昇する可能性も考えられます。

つまり、今後の国際的な鉄鋼需要は、引続き中国のロックダウンの解除及びその後の動向に大きく影響を受ける一方で、ロシア/ウクライナ情勢の長期化如何で、需要/供給の両面で不確定な要素を多く孕んでいると言えますが、世界各国でのカーボンニュートラルへの取組は継続しますので、一定の底堅さがあると思われます。

背景④足元の高炉と電炉の相場感の違い

国内の電炉メーカーは、05-06月の販売価格について慎重な姿勢をとっており、2ヶ月間で販売価格の値上げはトン当たり3千円前後と、高炉メーカーと比べ値上げ幅は小幅となっています。

これは、世界的なインフレにより電炉メーカーの操業に必要なコストは上昇しているのですが、主原料である鉄スクラップの価格が、前述した中国のゼロコロナ政策による物流停滞や、ロシア/ウクライナ情勢の悪化で急騰したスクラップ価格の高値警戒感からの反落といった国際情勢を受けて、国内の足元の鉄スクラップ相場が下がっている為であると考えられます。

しかし、こうした足元の鉄スクラップ相場の下落は、高炉同様にカーボンニュートラルへの取組が継続する事を念頭に置くと、反動による一時的な現象として見られる傾向が強く、「特に関東地区を中心に国内では鉄スクラップの発生状況が変わらずタイトな状況で、国内の鉄スクラップ相場下落は限定的だ」という専門家の意見もあります。

つまり、電炉メーカーの操業に必要なコストが上昇している局面で、主原料である鉄スクラップの価格が高騰した場合には、主原料価格の上昇分以上に販売価格を値上げせざるを得ないため、今後の電炉メーカーの販売価格が下落し続ける可能性は低く、高炉メーカーの後追いで鉄鋼製品の値上げを行う可能性が高いと私たちは考えています。

まとめ

今回のブログでは、私たちが先週行った値上げのプレスリリースの内容と、その背景や経緯及び今後の想定についてご紹介させていただきました。

コロナ禍が完全に治まらぬまま、ロシア/ウクライナ情勢が勃発し、更にここに来て想定以上のインパクトで中国ゼロコロナ対策の副作用が大きく、世界/アジア/日本の鉄鋼市況に影響を与える等、とても混沌とした状況が目の前にあります。

この様な環境下で、私たちがお客さまに為になるお役立ちとして取り組むべきことは、私たちの目線でシッカリと今後の大局を見極めて、その内容を共有させていただくと共に、真摯に自助努力に取組みながら、優れた製品をリーズナブルな価格で着実にお届けする事のみならず、シッカリと新たな取組みでお客さまとWin-Winの取組みを深める事だと考えています。

今後大局として勘案すべき事は、当面は世界的なインフレ傾向が懸念されること、そしてゼロカーボン等の世界的な環境対応の取組が継続していく事だと認識しています。

一方で、日本経済という観点で考えれば少子高齢化が進み需要が徐々に減退する環境下でも、ニーズにあった高付加価値の製品とサービスを実現し、その技術やノウハウを海外にも展開して、世界をより豊かにしていく事だと思います。

企業物価指数が上昇する一方で、消費者物価指数が上がらない日本の現状は、企業が儲からなくなり、給与が上がらなくなり、消費が増えなくなり、需要が減退する負のサイクルの兆候が顕著です。シッカリと価値に見合った価格を実現し企業が収益を得て、給与を上げ、消費を増やす経済の正の循環を実現する事が今の日本には望ましい姿との認識です。

母材熱延コイルや副資材などの価格は、今後も高値圏で推移することが見込まれますが、私たちの製品の安定供給を第一にコスト抑制には勿論引続き懸命に努力する一方で、新たな価値を生み出す事に今迄以上の努力を徹底し、私たちの強味を活かして為になるお役立ちを追求して参りたいと思います。

これまでの値上記事については以下のフォームよりダウンロードできますので、お取引さまへ私たちの製品に関しての値上案内を行う場合等にご利用下さい。

何かご質問やご懸念事項等が御座いましたらご遠慮なくいただければ幸いです。引続き何卒宜しくお願い申し上げます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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