2022.08.03

メッキ鋼管の値段はどうなる?!想定されるこれからの鋼材市況について。

変化し続ける市況に於いても可能な限り先々の需要を見極め、必要なモノを最適なタイミングで購入することによって収益を確保することが経済活動を行う上では理想です。

しかし漸く円安には歯止めの兆候がみえてきましたが、米国ではインフレを抑えるべく中央銀行FRBによる急速な利上げが行われており、未だ日本での物価上昇をの価格への反映は道半ばです。

特に鉄鋼に於いては需給共に世界最大の規模を誇る中国の影響を受け既に世界の鋼材市況はピークアウトが明確になっており、欧米に比して高炉の市場影響力が大きい日本では内外格差及び電炉との製品価格の格差が広がり、流通業者を中心に価格下落や在庫リスクが大きくなっています。

今回は読者の方々に最適なメッキ鋼管の購入を判断していただく参考のために、これまでに私たちが発表した値上げの経緯を整理整頓し、市中価格の予想と秋口以降の製品価格の見通しについて、私たちの見解をご紹介させていただきます。

これまでに実施してきた値上げについて

今迄の経緯をより詳らかにご理解いただけるように、以下に2020年の秋頃からこれ迄に私たちが実施した値上げについてその経緯をまとめました。当時のブログと併せてご紹介いたします。

大和鋼管工業の累積値上げ幅 [円/t]
B.値上げ幅2022.07.28

①2020年11月販売分からメッキ鋼管および単管パイプ(足場管)全品種について一律でトン5,000円以上値上げを実施 
 リンク:2020/11/11_メッキ鋼管の値上げの理由/背景について

②2021年2月より単管パイプおよびメッキ鋼管、スーパーカラーなど全品種をトンあたり1.5万円値上げ
 
③2021年5月より単管パイプおよびメッキ鋼管、スーパーカラーなど全品種をトンあたり1万円値上げ
 
④2021年6月より単管パイプ等のメッキ鋼管及びカラー鋼管を含む全品種に対しトン当たり1万円相当の追加値上げ
 
⑤2021年7月より単管パイプおよびメッキ鋼管、スーパーカラーなど全品種をトンあたり1万円値上げ
 
⑥2021年10月より単管パイプおよびメッキ鋼管、スーパーカラーなど全品種をトンあたり1万円値上げ
 
⑦2022年5月より単管パイプおよびメッキ鋼管、スーパーカラーなど全品種をトンあたり1万円値上げ
 リンク値上げのプレスリリースに関する説明と今後の方針及び現状を打破する為のご提案について。
 
⑧2022年06-07月出荷分から単管パイプおよびメッキ鋼管、スーパーカラーなど全品種をトンあたり最大で3.5万円値上げ
 
資料ダウンロードはこちら

秋口までの国内に於ける鋼管市況について

国内トップの鋼管製造/販売メーカーである丸一鋼管は、2022年07月14日に農業用鋼管と電線管を除きカラーを含む全鋼管製品について08月01日出荷分からトン1万円値上げを実施する事を発表しました。同社の値上げ累計は2020年10月から同9万円となります。

私たちの値上げのペースと比較すると、2020年10月からの累計値上げ幅9万円に達するペースに約1ヶ月の差が生じていましたが、出荷される製品の値上げ幅はほぼ同じで、遅くとも8月出荷分からは累計9万円となっています。

しかし足元では鋼管類は価格高騰による買い控えや猛暑及び人手不足等の影響で需要は弱く、市中在庫は過剰気味になっており、値上がりがタイムリーに反映されない可能性が高い状況です。

製造/販売メーカーの値上げ幅と市中価格の値上げ幅を比較する為に、私たち大和鋼管が発表した母材熱延コイル分の値上げ幅と一般構造用鋼管(STK400・黒・48.6x2.3)の市中価格値上げ幅を算出し、以下のグラフで表してみました。

製造/販売メーカーの値上げ幅と市中価格の値上げ幅比較[円]B.市中在庫

このグラフをみると私たちが値上げ発表を行ってから市中価格に価格が反映されるまでの期間は2021年の始めは約1ヶ月でしたが、去年の7月の段階では約2.0ヶ月弱に、その後は需給が逼迫した影響もあり市中価格が先行する傾向が2022年の春先まで続きましたが、05月からは再び当社の値上げが市中価格に対し一時的に先行し、6月でまた追いついている状態です。

そして今から私たち鋼管の製造/販売メーカーからは遅くとも8月出荷分よりトン当たり累計9万円の値上げが実施されている訳ですが、昨年に比して市中在庫のレベルが高く需要が弱い現状を踏まえると、市中価格にトン当たり累計9万円の値上が反映される状況になるまでは、少なくとも2ヶ月程度のタイムラグが発生し、10〜11月頃になりそうです。

秋口以降の鋼材市況の見通しについて

様々な要素が複雑に絡み合い先行きが見通し難い状況ですが、秋口以降で鋼材価格が”急速に下がる”シナリオと”更に上がる”シナリオの2つに分けて私たちなりに考察してみましたのでご紹介させていただきます。

鋼材価格が急速に下がるシナリオ

成熟している日本の鉄鋼市場の現状では、大手国内メーカーは需要に併せて供給面の調整を積極的に行う可能性が高く、鋼材の価格が直ちに値下がりする可能性は低いと考えられます。
 
もちろん未だ値上げ前の比較的低い価格の在庫がある場合や、先々の価格が下落する可能性がある場合は、価格が下がることは想定されますが、どのメーカー/商社/特約店が価格を下げても継続的に収益が拡大/維持できる経済環境ではないので、その動きは比較的マイルドになると想定されます。
 
また中国の主要都市での感染が更に拡大した場合は、ゼロコロナ政策により再度ロックダウンを行う可能性もあり、短期的ですが物流の混乱や大幅に需要が減退し、一時的に鉄鋼製品の国際相場が下がることで、国内相場に影響を与える事が考えられますが、中国材の流入がすくない日本市場ではその影響も上記同様に限定的であると想定されます。

鋼材価格が更に上がるシナリオ

経済回復や半導体不足の解消等から自動車等を中心に鋼材の需要が旺盛になった場合は、供給不足が顕在化して更なる値上げの可能性もありますが、此方も世界経済がインフレの影響から景気後退を懸念されている状況では、比較的緩やかな動きになる事が想定されます。
 
高炉の主原料の一つである"原料炭"の価格については、足元で鉄鋼製品の需要が少なく価格が抑えられたままですが、一般的に"原料炭"よりも価格が安く火力発電用の燃料等に用いられる"一般炭"の値段が、直近では価格が上回る事態が起きており、一般炭の価格高騰を踏まえて原料炭を発電用に一部転用する動きも出てきています。
 
もちろん鉄鋼製品の需要が急速に回復すれば"原料炭"の価格が反発し、急激に高くなる事が考えられますが、現状はロシア/ウクライナ情勢や中国経済の不透明な先行きに加え、急速なインフレ抑制に走る欧米の経済が少なくとも一時的に景気後退を起こす可能性が高く、このシナリオも限定的であると想定されます。
 
つまりこの2つの考察を踏まえると今後の鋼材市況は何れも急速な変化は起こり難い事が想定され、現状の閉塞感が暫く継続しながら価格動向の方向性が固まってくる可能性が高そうです。
 
従って急激な変化を需要減退や価格下落を想定し怯えたり、奇をてらって相場を張るのではなく、シッカリと経済状況の変化に応じてバリューチェーンの各階層で着実に収益を積上げて行く努力を続けることが鉄鋼業界全体として賢明な判断になると思われます。
 

まとめ

今回は、これまでに私たちが発表した値上げの経緯を整理し、市中価格の予想と秋口以降の製品価格の見通しについて、私たちの見解をご紹介させていただきました。

私たち鋼管の製造/販売メーカーが実施した鋼管の価格の値上げが市中に浸透する秋口迄は市中の価格が上がる可能性が高いですが、その先は未だ不透明な状態であり、如何に需要見合いの対応をキメ細やかに行って収益を積上げる事かが、持続可能な鉄鋼市場を形成する上で肝心であると再確認しました。

中々難しい市況ではありますが、私たちも可能な限りお客さまの為になるお役立ちを実現できる様に、創意工夫で様々な取組を進めて参りたいと考えております。具体的にご購入を検討されている案件や必要な見積もり対応等がありましたら、以下のフォームよりお問合せください。以上、宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。
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